映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「午後の遺言状」

2010-08-08 17:06:05 | 手持ちの映画ビデオ・DVD
1995年、日本作品
監督:新藤兼人
出演:杉村春子、音羽信子、朝霧鏡子、観世栄夫、他(永島敏行、倍賞美津子、津川雅彦)

~Amazonの紹介より~
毎年、夏になると蓼科の別荘を訪れる新劇のベテラン女優・森本蓉子(杉村春子)と、もう30年以上も別荘を管理している農婦のとよ子(乙羽信子)。今年の夏もその別荘でさまざまな出来事が起きていく。そしてとよ子は、蓉子に向かってある重大な秘密を打ち明けた…。
名匠・新藤兼人監督が、老いと死というすべての人間が避けられない問題に真っ向きって取り組んだヒューマン映画。とはいえ、そこには肩肘張った姿勢など微塵もなく、老いを嘆くでもなく、また特権として振りかざすでもない、あくまでも静かにユーモラスなゆとりも忘れない平常心をもってつづられていく。キネマ旬報ベスト・テン第1位および主演女優(杉村)、助演女優賞(乙羽)受賞など、その年の映画賞を独占した名作。

 今年の夏休みは軽井沢へ避暑に行ってきました。酷暑の北関東より約5℃は気温が低く、快適でした。
 そうそう、避暑関係の映画があったなあ・・・と思い出してこの映画を探しだしました。

 しかし、テーマは爽やかではなく重い。
 一言で云うと「死に場所を求めてさまよう日本人」でしょうか。
 「死」を身近に感じるようになった高齢の登場人物達。
 いろんな過去を背負って生きてきました。
 でも不思議なことに、観終わって暗い気持ちにはなりませんでした。
 喜びも憎しみも過ぎ去った歳月が希釈して流してくれる、という描かれ方をしているからでしょう。

 有名女優の杉村春子の夫と別荘の地元管理人である音羽信子が不倫の果てに子どもを生み、その子が結婚する際に秘密を打ち明ける場面があります。
 一旦は動揺し怒りに震える杉村ですが、終盤には「同じ男を愛した二人の女」的な和やかさまで感じました。

 人間の一生、平均寿命くらい生きる価値があるのかなあ。
 あと20年くらいしないと、この映画の本意を自分のこととして受け止められそうにありません。

☆ 5点満点で3.5点。
 杉村春子は小津映画の常連、音羽信子は監督の新藤氏の妻。二人とも大女優です。