映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「狩人と犬、最後の旅」(2004年、フランス カナダ ドイツ スイス イタリア共同製作)

2015-10-03 21:12:38 | TV放映
監督 ニコラス・ヴァニエ



<ストーリー>
 ノーマン・ウィンター(本人)は半世紀にわたってロッキー山脈で罠猟を続けてきた「最後の狩人」。しかし、森林の伐採によって年々動物たちは減少し、ノーマンは今年限りで猟を辞める決心をした。そんな折、犬ぞりのリーダーであるシベリアン・ハスキーのナヌークが命を落としてしまう。それはノーマンにとって大きな痛手だった。ノーマンは雑貨屋の店主からシベリアン・ハスキーの子犬を貰い受ける。しかしその子犬がナヌークの代わりになるとはとても思えなかった。アパッシュと名づけられたそのメス犬は、元々レース用に育てられたためか他の犬とも馴染まず猟に出ても足手まといになるばかりだ。そんなある日、薄氷地帯にそりが入り込んだことから氷が割れ、ノーマンは凍てつく湖水の中にはまり込んでしまう。パニックに陥る犬たちの中でノーマンの呼びかけに応えたのはアパッシュだけだった。アパッシュが他の犬を引き連れてきたお陰で九死に一生を得たノーマン。アパッシュにリーダー犬の素質を認めたノーマンはその教育に力を注いだ……。やがて春。ノーマンはアパッシュとの絆に明るい希望を見出し、今年もまた「最後の狩人」として生きることを心に決めるのだった。


 失われつつある自然とそこに暮らす猟師の物語です。
 猟師は動物を殺して生活をしている人達。
 しかし、金儲けのみを目的とした無駄な殺傷はしません。
 動物の数を間引くことにより、弱肉強食の生態系をコントロールしてその維持に役立つことを自負している誇り高き職人です。

 開発という社会現象に追い立てられるように消えていく猟師という職業をノスタルジックに描いた秀作。
 主人公は、なんと実在の猟師であることを知って驚きました。
 

「そして父になる」(2013年、日本映画)

2015-10-03 21:10:45 | TV放映
<スタッフ>
監督:是枝裕和
製作:亀山千広、畠中達郎、依田巽
エグゼクティブプロデューサー:小川泰

<キャスト>
福山雅治:野々宮良多
尾野真千子:野々宮みどり
真木よう子:斎木ゆかり
リリー・フランキー:斎木雄大
二宮慶多:野々宮慶多

<解説>(映画.comより)
 是枝裕和監督が福山雅治を主演に迎え、息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親が抱く苦悩や葛藤を描いたドラマ。大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多は、人生の勝ち組で誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。そんなある日、病院からの電話で、6歳になる息子が出生時に取り違えられた他人の子どもだと判明する。妻のみどりや取り違えの起こった相手方の斎木夫妻は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しむが、どうせなら早い方がいいという良多の意見で、互いの子どもを“交換”することになるが……。
 2013年・第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員を受賞した。良多を演じる福山は自身初の父親役。妻みどりに尾野真千子、斎木夫妻にリリー・フランキー、真木よう子が扮する。


 福山雅治演じる主人公野々宮に感情移入してしまいました。
 私の深層心理を掘り起こしてしまったようです。
 
 両親の離婚、父親の再婚。
 子どもは邪魔、と存在を否定されがちな環境。
 他人に認められるためには、実力をつけるしかない。
 勉強をして、よい大学に入り卒業して一流企業に就職して活躍すること。
 頑張って頑張って頑張って・・・やっと手に入れた社会的地位と家族。

 その幸せが根底から覆される出来事が起こる。
 それは子どもの取り違え事件。
 それは看護師のねたみから行われた犯罪であることを知る。

 リリー・フランキー演じる相手の斎木夫妻の夫は、おそらく大家族で兄弟にもまれながら伸び伸びと育ったのだろう。
 家族に囲まれた幸せな生活。
 身を削るような努力することをしなくても、失敗しても、負けても責められることはないし、居場所がなくなることもない。

 野々宮が「子どもを二人とも引き取りたい」と提案したとき、
 斎木は「勝ち続けた人間はとんでもないことを考える」と吐き捨てるように言い非難した。 

 そうかもしれない。

 でも、おまえは知っているのか?
 勝ち続けるためにどれだけ努力をしてきたのか、おまえは知っているのか?
 勝ち続けなければ存在を否定され居場所がなくなる恐怖を、おまえは知っているのか?
 負けても居場所があるおまえには一生わからないだろう。

 世間一般に「エリート」とされる人達の一部はこんなトラウマを背負って生きている。

 「子どもと一緒に居る時間が短すぎるんじゃないか、関わりが薄いんじゃないか」
 と斎木が言うと、野々宮は、
 「子どもとキャッチボールをするような親じゃなかったので・・・」
 と言葉を濁す。
 育てられたようにしか、育てられない。
 どうしたらいいのか、わからないんだ。

 そして時々嫌な夢を見る。
 居場所がない、帰るところがないと子どものように泣きじゃくる悪夢を。