2012年、日本映画
監督:降旗康男
原作:妹尾河童「少年H」(講談社文庫刊)
出演:水谷豊, 伊藤 蘭, 吉岡竜輝, 花田優里音, 小栗 旬
~「Yahoo! 映画」より~
<解説>
1997年に発表されベストセラーを記録した、妹尾河童の自伝的小説を実写化したヒューマン・ドラマ。戦前から戦後までの神戸を舞台に、軍国化や戦争という暗い時代の影をはねつけながら生きる家族の姿を見つめていく。実際に夫婦でもある水谷豊と伊藤蘭が、テレビドラマ「事件記者チャボ!」以来となる共演を果たし、少年Hの父母を演じる。メガホンを取るのは、『鉄道員(ぽっぽや)』などの名匠・降旗康男。感動にあふれた物語もさることながら、当時の神戸の街並みを再現したオープンセットも見どころだ。
<あらすじ>
昭和初期の神戸。洋服仕立て職人の父・盛夫(水谷豊)とキリスト教徒の母・敏子(伊藤蘭)の間に生まれた肇(吉岡竜輝)は、胸にイニシャル「H」が入ったセーターを着ていることからエッチというあだ名が付いていた。好奇心旺盛で曲がったことが嫌いな肇だったが、オペラ音楽について指南してくれた近所の青年が特別高等警察に逮捕されるなど、第2次世界大戦の開戦を機にその生活は暗い影を帯びていく。やがて、彼は盛夫に対するスパイ容疑、学校で行われる軍事教練、妹の疎開といった出来事に直面し……。
子どもの目を通してみた“戦争”を描いた作品です。
原作者の少年時代の姿「少年H」は“ひと言多い”キャラクター。
おかしいと思ったことは「おかしい!」とつい口にしてしまうのです。
戦時中という時代背景からいろんな不条理が彼の前に立ちはだかり、「そんなことおかしいやろ?」とつぶやくとトラブルが発生しがち;
・クリスチャンであることを責められる。
・帰国したアメリカ人宣教師から絵はがきをもらったことだけで「スパイ容疑」をかけられ父親が拷問のような尋問を受ける。
・可愛がってくれたうどん屋の兄ちゃんが「アカ」として警察に連行される。
・田舎芝居の女形俳優に召集令状が来て彼は自殺してしまう。
・中学校ではささいな理由で教官に殴られる。
・新聞やラジオでは「日本は戦争に勝ち続けている」と言うが、街には戦死者が遺骨としてたくさん帰ってくる。
・避難所でコメを炊くと他人に分けてざるを得ない。
・いつも正しかった父親が何を聞いても答えてくれなくなった。
等々。
私が一番印象的だったのは、水谷豊演ずる父親が、終戦後“ふぬけ”になってしまった場面です。
各人さまざまな形で戦後を迎えた日本人。
彼は洋服店を営んでいましたが、神戸空襲の際、焼夷弾の飛び交う炎の中、母子が運び出してくれたミシンは使い物にならず為す術無し。
何をしてよいのか途方に暮れ、家族の前でも父親の威厳を保てなくなります。
・・・「熱中時代」や「相棒」のテンポとは異なる水谷豊の演技が新鮮でした。
「少年H」は弱くなった父親の姿をみるのがつらくてもどかしくもあり、ついつい当たってしまうのでした。
中年期はいろんな要素が絡み合い、虚無感に陥りやすい年代でもあります。
自分の人生を振り返り、立ち止まり、また歩き出す年代。
フッと、自分の経験が重なりました。
映画の中では、父親はミシンを直して仕事を再開し、「少年H」は15歳にして家族の元を離れ「絵」の世界へ飛び込んでいきます。
★ 5点満点で4点。
・第35回モスクワ国際映画祭特別作品賞受賞! 日本実写映画史上初の快挙を達成! !
・興収15億円突破! "今だからこそ"見たい映画として、シニアを中心に大ヒット! !
・累計340万部を誇る妹尾河童の国民的ベストセラーが、遂に映画化!
・水谷豊×伊藤蘭 奇跡の“夫婦役"初共演! !