興味を惹く記事が目にとまりました。
■ 喘息診療の4つの未解決課題
石塚全Dr.(メディカルトリビューン、2020.12.25)
石塚Dr.は以下の4つを問題点としてあげています;
1.慢性咳嗽患者の鑑別・治療
2.軽症喘息患者の治療に対する指針
3.吸入療法の簡便化や指導
4.抗体製剤にかかる医療費
これらを順を追って要約してみます;
1.慢性咳嗽患者の鑑別・治療
・呼気一酸化窒素(FeNO)は喘息診断の指標となるとされているが、診断指標をFeNO≧38ppbとした場合、大学生を対象にしたアンケート結果からカットオフ値未満でありながら夜間の咳発作を自覚している女性が7割存在したという報告がある。
→ FeNOでは喘息を拾いきれないという趣旨。しかしFeNOはアレルギー性鼻炎などでも上昇するため、それだけでは喘息の診断はできませんが。
・呼吸器専門医が喘息と診断し治療している患者において、昼間や夜間・早朝の咳症状を訴える患者が3割存在する。
→ これは「治療不足」という視点と、「他の疾患の可能性」という視点を含んでいると思います。
2.軽症喘息患者の治療に対する指針
・日本と世界のガイドラインで発作時の治療が異なる。国際的なガイドラインであるGINA(Globgal Initiative for Asthma)では「吸入ステロイド+長時間作用性気管支拡張薬(ホルモテロール)の併用」を推奨しているが、日本のガイドライン『喘息予防・管理ガイドライン2018』では、ふだんからこの吸入薬を定期使用している場合のみ臨時使用を認めている。日本でも欧米に習うべきではないか。
→ 現在の日本で喘息患者に使用されている吸入剤のうち、ステロイド単独とステロイド+気管支拡張薬の合剤の比率は知りませんが、今後増えていきそうですね。私の外来では半分以上合剤を処方しています。
3.吸入療法の簡便化や指導
・患者の半数以上が正しく吸入できていない。良好な症状コントロールを維持し、嗄声や発生障害といった副作用を軽減するには、吸入指導を導入する必要がある。
→ これはずっと以前から指摘されてきたことです。当院では5年ほど前からマニュアルを作って看護師スタッフが吸入指導を担当しています。指導後、吸入手技チェックをして、満点になるまで繰り返してもらいます。看護師の中にPAE(小児アレルギーエデュケーター)有資格者がいますので、信頼して任せられます。
4.抗体製剤にかかる医療費
・近年、難治性喘息に対し抗体医薬や気管支熱形成術(サーモプラスティ)という選択肢が登場したが、高コストであり、費用対効果を検証しなければならない。
→ 患者さんの経済的負担に留まらず、高額医療となれば補助金を申請できますが、補助金は税金から捻出されますので、際限なく行うには社会的認知・容認が必要ですね。