フジテレビのドキュメンタリー番組 NONFIX で2014.2.20に再放送されたものを視聴しました(内容はこちら)。
薬剤師という職種に興味があり、また近年薬学部が4年制から6年制へ移行したことも気になっていたので。
番組は接待を受ける薬学部の学生達の姿で始まりました。
「就職率100%」の業界では今まさにバブル状態で、学生の皆さんは就職に対して全く不安を持っていない様子。
しかし、この「薬剤師バブル」は数年後にははじけることが番組後半で暴露されました。
一方で、薬剤師の地位に不満を持つ薬学部の学生もクローズアップされました。
彼は病院内では薬剤師がチーム医療に溶け込めず、薬剤師は医師に見下されていると不満を感じ、それをなくすために将来薬剤師会の会長になると豪語する人物です。
見学・実習で病院、MR、ドラッグストア、特老などを巡り、そこで活動する薬剤師を目の当たりにして感受性豊かに語る彼の姿は“若武者”という印象で輝いていました。
彼の悩み「薬剤師の地位が低い」の根っこは何だろう、と考えてみました。
現在の医療システムは、薬を決めて処方するのは医師の仕事です。
服薬指導をする薬剤師は医師と患者の間に介在する立場です。
薬の専門家ではありますが、選択権や決定権はありません。
つまり、そこに「責任が存在しないこと」が肝なのでしょう。
患者さんに薬の副作用が出て医療が必要になったとき、責任を問われるのは医師であり薬剤師ではありません。
その職種の地位は、負うべき責任の大きさに比例するのが社会の常識です。
彼が不満を感じるのなら、薬剤師が病院の中で活動を広げ、責任を伴う仕事を獲得していくことが必要ではないか。
その動きが厚労省をも動かす大きさになって初めて薬剤師の地位が向上するのではないか、と考えます。
24時間患者さんに寄り添ってチーム医療に参加すること、複数の病院で処方された薬の飲み合わせの管理や、生活保護者が薬を横流しして収入を得るような社会問題に切り込む勇気も必要です。
そこまでやれば、社会的インパクトは大きく、薬剤師を見る市民の視線も変わってくることでしょう。
それにしても「薬学部6年制」の意義は、番組の解説では?でした。
バブルがはじけた後、雨後の竹の子のように増えた薬学部はどうするんだろう?
<追記>
次期薬剤師会会長立候補者の発言記事が目にとまりましたので、引用させていただきます;
■ 薬剤師に対する課題「10年前から同じ」、薬局や薬剤師の現状を指摘
(薬局新聞 2014年6月25日)
日本薬剤師会の会長候補である東京都薬剤師会・山本信夫会長は、「医薬分業の効果については、実は10年くらい前から指摘があり、生活者・患者に十分に認識されないまま時間が経過した」と指摘し、旧来から言及されていた課題を改めて突きつけられていると述べた。
□ 医薬分業効果などは依然として認知度低く
山本会長は平成14、15年に実施された健保連「医薬分業による薬剤給付の合理性に関する調査研究事業」において、10年前から患者は利便性のみを重視しており、かかりつけ薬局を持つことの意味を理解されていない傾向が示されていることに触れ、「今回の改定においては薬剤師は調剤の業務を正しく行っているのか、手帳はどのようになっているのかなどを問われている。つまり、10年前から状況が変わってない」と語り、甚だ情けない状況にあるとの感想を述べた。
また旧来から分業を行うことにより余分な薬剤を削減することができ医療費の抑制にも繋がる可能性が述べられてきたものの、数値のうえでは反映されていない現状については、「薬や医療費が減るかどうかの見通しについては言いたいことはあるが、減らす努力をしないで処方せんどおりに調剤することしかできないことへの意見であれば、それは正しいと思う」と述べた。ただ、この10年間で高額で先進的な医薬品が院外でも使用されることになったことも調剤費が高騰した要因としてあげられることを考慮しなくてはならないと付け加えた。
その一方で、薬局・薬剤師業務に対する不要論に近い強烈なバッシングについて、「院内より院外のほうが患者負担が高い状況が示されており、この点について、次回改定の論点とされている。この考えが仲間内から言及されているのは衝撃的で、過去と比較してもここまで言われたことは記憶にない」と語った反面、「世界各国を見渡しても分業を行ってない国は存在せず、仕組み上できない国はあっても自ら放棄する国はどこにもない」ことを強調。薬剤師の仕事に足りない部分があることを指摘する場合と、制度そのものをけしからんとする議論を混合して行われることへの不満を口にした。
個別項目のうち薬剤服用歴管理指導料については、「これまで97%の割合で算定されている。お薬手帳が不要な場合は34点を算定することになったが、仮に半数が34点を算定するようになってしまうと次に考えられることとしては『これまでの半数は正しく算定できていたのか』ということになる。調剤報酬が出来高払いである以上、今はただの7点の差かもしれないが、次は0になる可能性がある。調剤報酬は冷酷であり、患者さんが『いらない』ということに簡単に納得しないで、必要性を伝えて欲しい」と呼びかけた。
また山本会長は槍玉にあげられている大型チェーン薬局については「形態だけで良いのか悪いのかという議論を行うつもりは全くない」と一蹴し、地域医療における貢献度などを課題としていくべきであるとの考え方を示した。
薬剤師という職種に興味があり、また近年薬学部が4年制から6年制へ移行したことも気になっていたので。
番組は接待を受ける薬学部の学生達の姿で始まりました。
「就職率100%」の業界では今まさにバブル状態で、学生の皆さんは就職に対して全く不安を持っていない様子。
しかし、この「薬剤師バブル」は数年後にははじけることが番組後半で暴露されました。
一方で、薬剤師の地位に不満を持つ薬学部の学生もクローズアップされました。
彼は病院内では薬剤師がチーム医療に溶け込めず、薬剤師は医師に見下されていると不満を感じ、それをなくすために将来薬剤師会の会長になると豪語する人物です。
見学・実習で病院、MR、ドラッグストア、特老などを巡り、そこで活動する薬剤師を目の当たりにして感受性豊かに語る彼の姿は“若武者”という印象で輝いていました。
彼の悩み「薬剤師の地位が低い」の根っこは何だろう、と考えてみました。
現在の医療システムは、薬を決めて処方するのは医師の仕事です。
服薬指導をする薬剤師は医師と患者の間に介在する立場です。
薬の専門家ではありますが、選択権や決定権はありません。
つまり、そこに「責任が存在しないこと」が肝なのでしょう。
患者さんに薬の副作用が出て医療が必要になったとき、責任を問われるのは医師であり薬剤師ではありません。
その職種の地位は、負うべき責任の大きさに比例するのが社会の常識です。
彼が不満を感じるのなら、薬剤師が病院の中で活動を広げ、責任を伴う仕事を獲得していくことが必要ではないか。
その動きが厚労省をも動かす大きさになって初めて薬剤師の地位が向上するのではないか、と考えます。
24時間患者さんに寄り添ってチーム医療に参加すること、複数の病院で処方された薬の飲み合わせの管理や、生活保護者が薬を横流しして収入を得るような社会問題に切り込む勇気も必要です。
そこまでやれば、社会的インパクトは大きく、薬剤師を見る市民の視線も変わってくることでしょう。
それにしても「薬学部6年制」の意義は、番組の解説では?でした。
バブルがはじけた後、雨後の竹の子のように増えた薬学部はどうするんだろう?
<追記>
次期薬剤師会会長立候補者の発言記事が目にとまりましたので、引用させていただきます;
■ 薬剤師に対する課題「10年前から同じ」、薬局や薬剤師の現状を指摘
(薬局新聞 2014年6月25日)
日本薬剤師会の会長候補である東京都薬剤師会・山本信夫会長は、「医薬分業の効果については、実は10年くらい前から指摘があり、生活者・患者に十分に認識されないまま時間が経過した」と指摘し、旧来から言及されていた課題を改めて突きつけられていると述べた。
□ 医薬分業効果などは依然として認知度低く
山本会長は平成14、15年に実施された健保連「医薬分業による薬剤給付の合理性に関する調査研究事業」において、10年前から患者は利便性のみを重視しており、かかりつけ薬局を持つことの意味を理解されていない傾向が示されていることに触れ、「今回の改定においては薬剤師は調剤の業務を正しく行っているのか、手帳はどのようになっているのかなどを問われている。つまり、10年前から状況が変わってない」と語り、甚だ情けない状況にあるとの感想を述べた。
また旧来から分業を行うことにより余分な薬剤を削減することができ医療費の抑制にも繋がる可能性が述べられてきたものの、数値のうえでは反映されていない現状については、「薬や医療費が減るかどうかの見通しについては言いたいことはあるが、減らす努力をしないで処方せんどおりに調剤することしかできないことへの意見であれば、それは正しいと思う」と述べた。ただ、この10年間で高額で先進的な医薬品が院外でも使用されることになったことも調剤費が高騰した要因としてあげられることを考慮しなくてはならないと付け加えた。
その一方で、薬局・薬剤師業務に対する不要論に近い強烈なバッシングについて、「院内より院外のほうが患者負担が高い状況が示されており、この点について、次回改定の論点とされている。この考えが仲間内から言及されているのは衝撃的で、過去と比較してもここまで言われたことは記憶にない」と語った反面、「世界各国を見渡しても分業を行ってない国は存在せず、仕組み上できない国はあっても自ら放棄する国はどこにもない」ことを強調。薬剤師の仕事に足りない部分があることを指摘する場合と、制度そのものをけしからんとする議論を混合して行われることへの不満を口にした。
個別項目のうち薬剤服用歴管理指導料については、「これまで97%の割合で算定されている。お薬手帳が不要な場合は34点を算定することになったが、仮に半数が34点を算定するようになってしまうと次に考えられることとしては『これまでの半数は正しく算定できていたのか』ということになる。調剤報酬が出来高払いである以上、今はただの7点の差かもしれないが、次は0になる可能性がある。調剤報酬は冷酷であり、患者さんが『いらない』ということに簡単に納得しないで、必要性を伝えて欲しい」と呼びかけた。
また山本会長は槍玉にあげられている大型チェーン薬局については「形態だけで良いのか悪いのかという議論を行うつもりは全くない」と一蹴し、地域医療における貢献度などを課題としていくべきであるとの考え方を示した。