小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

不要な抗菌薬処方削減に教育的指導(イギリス)

2016年03月09日 07時03分56秒 | 医療問題
 抗生物質乱用が指摘され久しいですが、当地域は小児科専門医以外の小児科標榜医が「かぜ薬ー抗生物質」という感覚で処方されているのが現状です。
 風邪の原因の9割はウイルス、1割は細菌類(代表的なのが溶連菌、肺炎球菌など)であり、抗生物質が効くのは細菌類ですから、抗生物質が必要な風邪は10人に1人。
 その精度をいかに挙げるかが、臨床医のセンスと私は考えています。

 この状況は世界各国共通な様子で、しびれを切らした医学界が教育的指導を行ったという報告を紹介します;

■ 処方率上位を伝えるレター、不要な抗菌薬処方削減に効果/Lancet
ケアネット:2016/03/09
 英国一般医(GP)の不要な抗菌薬処方を減らす方法として、処方率の高い上位20%のGPに対し、英国主席医務官(England's Chief Medical Officer)名で、上位に位置していることを知らせるレター送付が有効であることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMichael Hallsworth氏らが、プラグマティックな試験を行い報告した。著者は、「低コストで全国規模の抗菌薬処方の削減が可能であり、抗菌薬管理プログラムに追加する価値があるものだ」と結論している。Lancet誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。

◇ 抗菌薬処方率が高い上位20%のGP診療所を対象に介入 vs.非介入試験
 試験は、2×2要因デザインを用いた無作為化比較試験で、一般公開されているデータベースを用いて、抗菌薬処方率が、所属するNHS Local Area Teamで上位20%に位置するGP診療所を同定して行われた。適格診療を、フィードバック介入群と非介入(対照)群にコンピュータで無作為に割り付け、NHS Local Area Teamによる層別化も行った。割り付けについて参加者は知らされなかったが、研究者には知らされた。
 2014年9月29日に、フィードバック介入群の全GPに対し、英国主席医務官からレターと、患者への抗菌薬使用に関するリーフレットが送付された。レターには、「所属するNHS Local Area Teamで、抗菌薬処方率が上位20%に属する診療である」旨が書かれていた。一方、対照群のGPには一切の連絡がされなかった。
 その後、試験対象者は再無作為化を受け、14年12月に、一方の群には抗菌薬使用の減少を推奨する患者中心の情報が送られ、もう一方には一切の連絡がされなかった。
 主要評価項目は、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬で、過去の処方について調整し評価。解析はintention-to-treatにて行われた。

◇ レター送付群で抗菌薬処方が有意に減少
 2014年9月8日~26日の間に、1,581のGP診療所が、フィードバック介入群(791ヵ所)または対照群(790ヵ所)に割り付けられた。
 レターは、介入群791ヵ所の3,227人のGPに送られた。レター送付費用は4,335ポンドであった。
 2014年10月~15年3月の、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬は、フィードバック介入群126.98(95%信頼区間[CI]:125.68~128.27)、対照群131.25(130.33~132.16)で、差は4.27(相対差:3.3%;群間差の発生率比[IRR]:0.967、95%CI:0.957~0.977、p<0.0001)であった。これは推定で、処方抗菌薬が7万3,406個減少したことを示す。
 GP診療所は再び14年12月に、患者中心介入群(777ヵ所)、対照群(804ヵ所)に割り付けられた。結果、14年12月~15年3月の間の主要評価項目に有意な影響はみられなかった。1,000加重人口当たり処方抗菌薬は、患者中心介入群135.00(95%CI:133.77~136.22)、対照群133.98(133.06~134.90)で、群間差のIRRは1.01(95%CI:1.00~1.02、p=0.105)であった。

<原著論文>
Hallsworth M, et al. Lancet. 2016 Feb 18.


 日本でもそろそろ同様の取り組みが必要な時期かもしれませんね。
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