小児アレルギー科医の視線

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食物アレルギーとアトピー性皮膚炎、どっちが先?

2016年03月15日 06時17分12秒 | 食物アレルギー
 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎はどちらが先に発症するのかという議論が盛んです。
 従来は胎盤・母乳による食物感作後にアトピー性皮膚炎が発症するとされてきましたが、近年、「経皮感作」という概念が注目され、いや、アトピー性皮膚炎が先なのではないか、と言われるようになりました。
 その関連論文です;

■ アトピーが食物アレルギーの要因にも?
ケアネット:2016/03/15
 アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは、因果関係が示唆されているものの完全には明らかになっていない。このことが予防と治療に重大な影響を及ぼしている。英国のキングス・カレッジ・ロンドンのTeresa Tsakok氏らは、システマティックレビューの結果、アトピー性皮膚炎、食物感作および食物アレルギーとの間には強くかつ用量依存的な関連があることを確認したという。著者は、「重症度および慢性度が高いアトピー性皮膚炎は、とくに食物アレルギーと関連しており、アトピー性皮膚炎が食物感作および食物アレルギーの発現に先行するエビデンスもある」と述べている。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2016年2月18日号の掲載報告。
 研究グループは、アトピー性皮膚炎の重症度・慢性度・発症年齢に対する食物アレルギーの影響、および両者の時間的関係について調べる検討を行った。MEDLINEおよびEmbaseを用い、2014年11月までに発表されたアトピー性皮膚炎と食物アレルギーに関する研究論文を検索し、調査した。
 主な結果は以下のとおり。

・66件の研究をレビューに組み込んだ。
・住民ベース研究が18件、高リスクコホートが用いられた研究は8件で、残りはアトピー性皮膚炎または食物アレルギーと診断された患者を対象としていた。
・住民ベース研究の分析の結果、生後3ヵ月時の食物感作の可能性が、健常児に比べアトピー性皮膚炎患児で6倍高かった(オッズ比:6.18、95%信頼区間:2.94~12.98、p<0.001)。
・また、他の住民ベース研究を分析した結果、アトピー性皮膚炎を有する参加者の53%が食物に感作しており、最大で15%が負荷試験において食物アレルギーの徴候を示したことが報告されていた。
・アトピー性皮膚炎確定患者を対象とした研究の分析では、食物感作の割合は66%に達し、負荷試験で食物アレルギーを呈した患者の割合は81%にものぼった。
・16件の研究が、食物アレルギーは重症アトピー性皮膚炎と関連していることを示唆した。
・6件の研究は、早期発症または持続性のアトピー性皮膚炎が、とくに食物アレルギーと関連していることを示した。
・1件の研究は、アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症に先行したことを明らかにした。

<原著論文>
Tsakok T, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016 Feb 18.


 最後の一文、「アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症に先行したことを明らかにした」の論文を読んでみたい・・・。
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