チョット古い話だが、2010年に、「学校給食で思い出に残っているメニューは何ですか?」という質問をアサヒグループホールディングスが全国20歳以上の男女(1,691人)に対し調査を実施し、「思い出に残っている給食メニュー」総合ベスト10が発表されていた。
予想通りといえばいいのか、総合No.1はくじら料理! 50代以降の年代にダントツNo.1で、個人的には「鯨の竜田揚げ」よりも「角煮」がおいしかったという思い出がある。
【鯨の角煮】
歴史を振り返ると、鯨肉は、戦後の食糧難だった時代に、たんぱく質が摂取できる食料のひとつで、人々の胃袋を満たしていたのだが、1950年初めのころになると臭みがあった鯨肉は供給過多となり、大量に消費できる学校給食で消費されるようになったといわれている。
その後、1987年の南極海における商業捕鯨中止により激減してしまった。
給食で見られなくなった鯨肉なのだが、「食文化の継承」という意味を込めて、最近はまた復活しており、日本捕鯨協会では4年前にこんな動画を発表していた。
食料問題解決の手段としての水産資源の活用。 調査捕鯨はそのための重要な役割を果たします。 調査から見えてきたクジラを取り巻く問題を取り上げ、 捕食と鯨食についての提言をしています。 |
【それでもあなたは、クジラを食べることに反対ですか?】
この頃から自民党の捕鯨議員連盟も水面下で商業捕鯨再開のための運動を行ってきた。
当時の「霞が関で次々『鯨料理』がメニュー化される理由」という記事ではこう書かれていた。
国際社会から捕鯨への反対圧力が高まる中、そんなことは意に介さず、霞が関の各省の食堂で「鯨肉料理」を提供するよう駆け回る議員がいる。日本の古式捕鯨発祥の地といわれる和歌山県選出の二階俊博・自民党総務会長だ。9月の自民党本部を皮切りに、外務省、経済産業省の各食堂で立て続けに鯨肉料理をメニュー化。今年度内には防衛省、財務省、さらには学校給食での提供拡大を図るため、文部科学省を照準に定める。首相も恐れる“こわもて”のクジラ伝道師の行動力に、全省がひれ伏すのも間近か!? ・・・中略・・・ 全省で鯨肉料理を提供しようと躍起になる二階氏だが、まずは「日本が調査捕鯨を続けるため、国内外を納得させる論理と政策の再構築を急ぐべきだ」(政府高官)との意見も出ている。 |
そして遂に、「『国連脱退とは異なる』商業捕鯨の再開、強調した外務省」という事態に発展してきた。
【朝日新聞DIGITALより】
当時の自民党総務会が幹事長となり、今回のIWCからの脱退の影にはやはり二階俊博幹事長が暗躍していた。
脱退せず、商業捕鯨でなく小規模の伝統捕鯨を守る方法も探れたはず。二階氏は国策を自分の選挙に利用。地元以外には「国連脱退もどきの勇ましい日本」をアピールしてみせた。乗せられた安倍信者。孤立へ一直線の日本。
— 紫苑(Mariko Sakurai) (@purple_aster) 2018年12月26日
「国連脱退とは異なる」商業捕鯨の再開、強調した外務省 https://t.co/xBqVrrKuAp
日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)側に脱退通告したことについて、日本は脱退に伴い加盟が条件となっている南極海での調査捕鯨ができなくなるため、「反捕鯨団『「勝利』宣言 日本の南極海撤退で」ということになってしまった。
この調査捕鯨という行為は、将来的に商業捕鯨をするために、科学的調査という名目の捕鯨であり、1988年から南極海域で毎年 300頭のミンククジラ (コイワシクジラ ) を捕獲しており、「有効利用」という名目で鯨肉が国内で処理・販売されている。
それにしても今回のIWC脱退通告は、国際舞台でこれまで日本が堅持してきた国際協調主義や国際ルールの順守といった基本方針との整合性に疑義が生じる懸念をはらんでおり、政府は対外的な説明に努めようとしているが、今後の外交交渉に影響する恐れもある。
<IWC脱退表明 これで捕鯨を守れるか> 2018年12月27日 東京新聞 「IWCよ、さらば」-。自国の主張が入れられなければ席を蹴る。まるで戦前か、トランプ流。脱退は、捕鯨にとって、消費者にとって、日本と日本の外交にとって、メリットがあるのだろうか。 これは本当に、捕鯨の持続可能性を守るための判断なのか。 国際捕鯨委員会(IWC)は国際捕鯨取締条約に基づいて、1948年に設立された。 クジラを保護し、捕鯨産業の秩序ある発展を図るのが目的で、日本は51年に加盟した。 もともとは、商業捕鯨を維持するための団体だったと言えるだろう。それが次第に、欧米を中心とする動物愛護の視点から、クジラの保護に重点が置かれるようになり、82年、商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決めた(ただし、イルカ類を含む小型鯨類は、IWCの管轄外)。 このため、資源量や生態を調べる調査捕鯨の名目で、南極海と太平洋で年間約630頭のクジラを捕っている。鯨肉が市場に出回っているのは、そのためだ。 今年9月、ブラジルで開かれたIWCの総会で、商業捕鯨の一部再開を求める日本の提案が否決され、代表団から脱退を示唆する声が上がっていた。商業捕鯨を求める自民党議員連盟が、その背中を強く押しての脱退表明だ。 いずれにしても、IWCからの脱退で、捕鯨産業の未来に光明が差すのだろうか。むしろ逆ではないのだろうか。 国際海洋条約は、クジラの管理をIWCに委ねている。IWCを脱退すれば、たとえ公海であっても南極海や太平洋での調査捕鯨はできなくなる。 さらに、反捕鯨国の批判は強まって、たとえ自国の排他的経済水域(EEZ)内でも、IWCが規制対象とするミンククジラなどの捕獲に対して法的措置をとられるリスクは高まるだろう。伝統的イルカ漁への風当たりも激しくなるに違いない。クジラの年間摂取量は一人当たり数十グラムという。タンパク源としての需要は低く、消費者の支持が高まるとも思えない。 それより何より、日本がこれまで堅持してきた国際協調主義に大きな傷がつく。“トランプ流孤立主義”との批判も出始めている。 野生生物の保護は国際的な潮流だ。これまで通り内側に踏みとどまって、「伝統的食文化の重要性」を粘り強く、柔軟に訴える-。捕鯨の持続可能性を維持する道は、今のところ、それしかない。 |
牛肉どころか豚肉も容易に食べることが困難な時代では鯨肉は貴重なタンパク質源であった。
その後は日本人の鯨肉離れは加速度的に低下しており、一部の愛好家くらいが支えているのかも知れない。
そもそも今回のIWCからの脱退に関しては、政府は脱退を25日に閣議決定しながら、その事実を伏せ、26日に公表した。
政府側からIWC脱退の方針を聞いた議連顧問の二階俊博幹事長は「我々は鯨を捕って生活することを糧としてやってきている。このままで引き下がるつもりはない」と言っているのだが、地元にいい顔をしたい政治家が外務省に圧力をかけてが内向きな理由だけで決まったということだろう、とオジサンは思う。