カラス

カラスと共に生き物の世界を覗き見る

飛べるという事4

2006-07-28 21:38:03 | 行動

 先日、知人から「片羽のカラスがいます。見に行ってあげて下さい」といった内容のメールが届いた。私は昨年の「飛べるという事」の「片羽ブト」を思い出した。飛ぶ事が出来ないというハンディを背負いながらも一生懸命生きていた姿が私の脳裏に蘇った。懐かしくもあり、悲しくもあり・・・・・。どうやら今回カラスは体の一部が灰色掛かっているらしいのだ。部分白化なのか??

 そのカラスがいるという場所は冬季塒に通じている公園だ。ここには常時カラスが生息しており、以前は「白いカラス」も住んでいた。現在は繁殖していない若い個体が夏塒として集まっている。年間を通して実に賑やかな場所である。もちろんここを縄張りにしている番もいて巣立った雛の可愛い姿も見る事が出来る。

 公園に着いてすぐにこのカラスが目に入ってきた。そう、片羽ブトである。メールにあった通りマガモの家族で賑わう池の周辺にいてどうやら水を飲もうとしていたらしい。

 この向きで見ると右の翼が下がっているのがお分かりになると思う。これでは恐らく飛ぶ事が出来ないだろう。しかし水浴びをしている姿を見ていると下がっている翼もちゃんと動いているではないか??もしかして飛べるの??

 知人が言っていたように、確かに体の一部が灰色だ。しかし良く見てみると部分白化というよりは何と言ったら良いのか、羽毛が擦れてしまい表面が剥げてしまっているような感じに見えた。首との段差がお分かりになるだろうか?

 更に部分的に剥げているようである。通常鳥は羽は生えていない場所があるのだが、これはその部分の他に明らかに剥げているようである。足を覆っている羽もなく丸見え状態だった。何か病気に罹っているのだろうか?心配である。

 ちょうどその時にパンを持った人が現れた。片羽ブトは解かっているかのようにその人の様子を眺めていた。そしてその人が池の反対側へ行きパンを撒き出した。すると何と片羽ブトは自分の翼でちゃんと池の反対側まで飛んで行ったではないか!!そう、片羽ブトは高い所からだったらちゃんと飛ぶ事が出来るのだ。地面から飛び上がる事は出来ないようだが、枝伝いに樹上に移動する際に困っている様子はなかった。パンを頬張っている時に口の中が見えたのだが赤みはほとんど見られなかった。奥まで見えた訳ではないのではっきりと断言は出来ないのだが、少なくても1歳以上になっているのだろう。

 一先ずは何とか生きて行けるようだったので安心していたのもつかの間だった。私の目の前にまたまた体が剥げてしまっているブトがトコトコとやって来たのである。このブトは尾羽のほとんどが抜けてしまっているようである。画像では確認し難いのだが、左の翼が少し下がっていた。しかしこのブトはちゃんと飛ぶ事が出来ていたのだが、かなり痩せているようだ。胸の辺りがくぼんでおり骨がはっきりと見えている。大丈夫だろうか?

 実はこの2羽の他にも片羽だったり、尾羽がなかったりと体に障害を持つカラスが数羽いたのである。原因は分からない。争いの結果こうなってしまったのか?それとも考えたくはないのだが、人による虐待なのか?今となっては真相は闇の中だ。しかしこうして一生懸命生きている姿を間近で見ていると「負けないで頑張るんだぞ!!」とエールを送りたい気持ちにさせられる。

 嫌われ者として世間から冷たい視線で見られがちなカラスだが、こうしてハンディを背負いながら一日一日を大切に生き抜こうとしている彼らがいるという事を分かって欲しい。カラスも人もみな命の尊さに違いはないのである。

コメント (6)
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