カラス

カラスと共に生き物の世界を覗き見る

成長2

2006-07-15 21:11:34 | 行動

 巣立ちをした瞬間から独り立ちを迎える為にカラスの雛は日々成長を始める。人とは違いカラスの場合それが手に取るように判る時がある。雛だけではなく賢明に子育てをしている親にも同じ事が言える。カラスは巣立ちをして個体差はあるものの3ヶ月程家族で過ごし、親・兄弟と戯れながら社会のルールを学び取って行く。最近の人間社会より遥かに厳しくちょっとした油断が命取りに繋がりかねない。決して気を許してはいけないのである。現代の子供達は常に誰かに見守られる生活が当たり前になり、人間本来が持っていた筈の「自己防衛本能」が消えつつあるのではないか?と心配になってしまう。カラスの子育てを見て自己防衛本能とは何か?を学び取って欲しいと思いつつある今日この頃である。

 今年は昨年同様カラスの世界も少子化だった。雛数が一番多かったのはブトの3羽だった。今までこの公園のブトは子沢山で4羽・5羽という番も珍しくなかった。もしかしたら3羽程度の雛の方が親の目も行き届くので親の負担やストレスも軽減されていたのかも知れない。

 この3羽の雛達の成長を見ていると本当に面白く、同じ兄弟でも好奇心旺盛な個体や用心深い個体など性格の違いがはっきりと見えてくる。ある日この雛達の行動を時間の許す限り観察してみる事にした。私はこの日この一家にとってストーカーのような存在だったに違いない。それと同時に人の反応も見る事が出来たので一石二丁だった。雛の行動も面白いのだが、人の反応も実に面白いのである。

 この雛達はかなりしっかりとしてから巣立ってくれたので弱々しい状態で地面に下りる事はなかった。彼らが地面に下りて来たのは巣立ち後10日程経ってからの事だった。地面に下りた時の雛の表情がなんとも言えず可愛いのだ!!今まで巣や枝の上にいたので地面という環境が珍しいのか首を傾げて辺りを見回していた。

 兄弟の1羽が何の変哲もない枯葉をくわえたら、それが気になるのか兄弟で奪い合いを始めた。枯葉は他にもたくさんあるのだが、今くわえている枯葉が良いのだろう。やっとの思いで奪い取ったのだが、その時点でこの枯葉への興味は薄れてしまったのだろう。

 親は雛の行動を見つめながらも決して見張りを怠る事はない。ある男性が雛の横を通り過ぎようとした瞬間に親は威嚇鳴きをした、その瞬間雛達は枝へと移動して行った。親は引き続き男性に退散するように促していた。しかしこの男性はそんな事には全く気が付かずに、事もあろうに雛の真下へ行き用を足そうと支度を始めていた。ブトの親は一向に退散しない男性に向かって激しく威嚇鳴きをしていたのだが効果はなし。すると今度は低空飛行へと移行、この時点で男性はやっと気が付いたようだ。しかし時すでに遅し・・・・・生理現象は止める事が出来ない・・・・・男性は低空飛行に耐えながらやっとの思いで用を済ませた。男性は上を見上げると仁王立ちしているブトの姿を見て恐くなったのだろうか?枝の一本でも投げ付けても良さそうな状態だったにも関わらず、足早にその場を立ち去った。立ち去る瞬間に事の一部始終を見ていた私の存在にも気が付いたのだろう。何事になかったかのようにいなくなってしまったのである。

 私は笑いが止まらなかったし、その時の男性の焦っていた顔付きが目に焼き付いている。この男性はきっと暫くはこの場所で用を足そうとはしないだろう。そもそも少し移動をしたらトイレがある。ブトに低空飛行をされたのは非常識な行動をした罰だと思い反省して欲しいものである。私としては極めて珍しい光景を目にする事が出来て良かったと思うのである。

ハシブトガラス雛

コメント (4)
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