op's weblog

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いまさら映画批評シリーズ:瞳の奥の秘密 と川越スカラ座

2011年02月07日 22時53分39秒 | Weblog
テニスに行くとき時々近くを通るものの、一度も入ったことがなかった川越スカラ座、ちょっと興味のある作品が月曜日は1000円で観られるというので行ってみた。

市役所の近くの路地にあり、駐車場も見あたらなかったので、バイクをギリギリまで壁に寄せて停め、ヘルメットは持って入る(クルマで来る場合は市役所の駐車場を借りることになるらしい)。内部はサイズ的にロビーより待合室と呼びたい場所に漫画雑誌も置かれた本棚、年季が入っているが手入れが行き届いた長椅子があり、トイレも新しくはないが、全体的にどこも非常に清潔で明るく、質素ながら細かな配慮が見られる。廊下には個人的にちょっとツボの映画のポスターが張ってあったりする。

劇場に入るとまさしく昔ながらの映画館で、まず天井が高い。仕方の無い部分もあるが、所謂シネコンや都内の最近の映画館で苦痛なのが、天井が低くまるでカラオケボックスかホームシアターのような狭さ、もしくは過剰なまでに画面を“無理やり観させられる”レイアウトによる圧迫感。これが無いことでリラックス度がはっきり増した。空調が後ろに一つやや大きな音で動いているだけなので寒いかなと思ったが、バイクで来た服装のせいか気にならなかった。これについては、無料で膝掛けの貸し出しがされており、使い捨てカイロも売られている。とにかくのどかな感じである。

座席にはドリンクホルダーがないが、古びた感じやヘタリもない。映画が始まると、クラシックな音響も画面(満足できる大きさ)の映り具合も僕には気持ちのいい距離感で、とにかく息苦しさがない。


さて、米国アカデミー賞の最優秀外国語映画賞を取った『瞳の中の秘密』、映画紹介サイトの情報から受けた印象とちょっと違い、眉に皺を寄せて観るような複雑さはなく、エンタテインメントと呼べる範疇の作品である。まあ、『おくりびと』と同じ賞取って、本国でもロングランヒットしたぐらいだから推して知るべしと。

もっときつい表現、撮り方、脚本の掘り下げのし方で、ずっと強い印象を残す映画にもできたはずだが、退屈にはならないまでも全てにおいて抑制を効かせたつくりになっている。これは監督/共同脚本/編集まで行ったファン・ホセ・カンパネラ氏が米国のTVドラマを手がけてきた経歴によるものと、アルゼンチンというお国柄の両方のせいだろう。正直、前者はそつないものの、特に最後のクライマックスの映し方や演技指導にやや“ぬるさ”を感じさせ、後者は奥ゆかしさよりも体面を気にする文化によるもどかしさを感じさせるネガもある。

ただ、秘めた情熱の表現というのはお国柄というだけでなく、この映画の主題でもあり、だからこのようなつくりになっており、その結果たくさんの共感を呼んだことは想像に難くない。さらに、僕は観た記念ではなく、作品を理解するためのヒントがどうしても必要な時だけパンフレットを買うのだが、この映画の、とても“使える”パンフレットにある監督のコメントが実は全てを語ってしまっている。つまり、それでも、人生の新たなステージに進むために、対決しておかなければならない過去もあるということ。


それにしても映画の最後の場面は、情熱を、解放できるためなのかそれとも精算ができるという意味での微笑みなのか、本質は未だにガキである僕はどうしても知りたかったので、確実にこの映画を観ていると思われる売店の女の子に聞いてみようと思ったのだが、パンフレットを買う人が他にも待っていたので諦めました。
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