
大雲取越の行路(田辺市熊野ツーリズムビューローの古道地図を引用)
もう20年前の話。知人の紀伊民報記社さんの設定で、古老ガイドによる熊野古道大辺路は富田坂を歩いた事があった。この時のガイドさんは、当地にあったとされる「姥捨て山」探索をライフワークに手がけていたり、霊感はあったりと、とてもユニークな人であったのであるが、この人からとても興味深い話を聞かされた。熊野古道の中でも難所の一つとされる「大雲取越」を夜中に一人で歩いていた時に、ザッザッと音を立てた落ち武者の行進に出会ったそうである。同行した友人はその話にたいそう関心を示し、その後、しきりに夜中の「大雲取越」敢行を所望されていたのであるが、残念ながら彼が存命中にはその実現は叶わなかった。
数日前、帰省中の娘がどこか歩きたいというので、「大雲取越」のさわりをコースに選んだ。「大雲取越」は熊野本宮大社から熊野那智大社を結ぶ山深い参詣道で、「小雲取越」を含めると30kmにも及ぶ熊野古道屈指の難関である。ここを一度に完歩するのは体力的に無理であるので、那智大社寄り1/10に当たる高原公園-色川辻(約3km)往復をコースとし、帰りは車道を歩いた。ただし、ただ歩いただけではない。上述した古老ガイドが落ち武者の亡霊に出会ったと思われる地点「亡者の出会い」をコース内に含めた。
高原公園に車を止め、通常の参詣ルートとは逆向きにハイキングを開始、90分ほどかけて展望台のある舟見峠に到着、ここで昼食を取り、「亡者の出会い」を通過し、出発から150分で色川辻に到達した。
さて懸案の地点である「亡者の出会い」。解説付きの看板が立ててあったのでそれと分かったが、他とあまり変わりない尾根中にある。解説を読むと、当地は古より亡くなった親族や友人に出会う場所であるらしい。幸いにも亡き友人の姿や声は感じなかった。

石畳の道が続くよく整備された古道である



ちゃんと看板と解説があり、とてもうれしい。

途中に出会ったギンリョウソウ。幽霊のような花。


ウンゼンツツジ:小型で可憐なツツジ。今が最盛期。ウンゼンと名が付くものの、雲仙には分布しない。和歌山県ではウンゼンツツジとは呼ばず、コメツツジと呼ぶ。