たゆたふこころ

こころのゆらめき 記憶のかけら 日々に織りなす タピスリー

経年変化

2010-09-22 12:38:33 | 日記
トイレから出てくると、丁度、下から階段を上がってくるお客様御一行と出くわした。
真ん中のお一人と目が合うと、その方は身を乗り出すようにして前に出てきた。
そして、「あぁ、久し振り」と仰った。

『久し振り?…って誰?』

顔と顔とを突き合わせるような形で、正面に立たれたそのご尊顔に繋がる記憶は蘇らず、
瞬時に決して短くはない人生を振り返り、あちこちを駆け巡る。

おお。なんとなく思い出す。
朧気な輪郭だが、恐らく間違いないだろう。

「お久し振りです」
私も返す。

以前いた会社の外注の社長。
もう、10年以上経つだろうか。
辞める際に、少々お世話になった方だ。
勿論、その存在を忘れてはいないし、時々話題にも上っていた。
それなのに、分からなかったのは、外見の印象が変わっていたからだ。

「何してるの?」(何故ここにいるの?という意味だろう)という質問に
『何してるの?と言われても…』と、ただ笑顔だけを返すと
「え?何してるの?」を二、三度繰り返した後、ようやく気づいたようで
「あ、ここにいるの?」(ここで働いているの?の意)と仰るので、
「はい」と答える。

お客様を案内した女の子が「知り合い?」と聞く。
「そうなの」
まあ、そんなことがあって、懐かしかったし、笑ったし、少し驚いたりもした。

帰り際、その社長は、以前私と同じ会社にいた人を見つけ、「あれ?」と顔を覗き込んだ。
挨拶のつもりだろう。
同じ会社にいたその人は、パソコンから顔を上げたが、無反応。
後にいた私が、声を出して笑ったが、それでも言葉を発しなかった。
そういう人ではないので、あれ?どうしたの?と思っていたが、
社長は致し方なく、それ以上声を掛けることもなく、そのまま帰られた。

しばらくすると、同じ会社にいたその人が振り返り、こう言った。
「さっきの人、誰?」

ぷぷぷー。
吹き出してしまった。
やはり、理解していなかったのだ。

経年変化の著しい人、少ない人に分けるなら、私は後者に入れて貰えるのだろうか…





コメント
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