トイレから出てくると、丁度、下から階段を上がってくるお客様御一行と出くわした。
真ん中のお一人と目が合うと、その方は身を乗り出すようにして前に出てきた。
そして、「あぁ、久し振り」と仰った。
『久し振り?…って誰?』
顔と顔とを突き合わせるような形で、正面に立たれたそのご尊顔に繋がる記憶は蘇らず、
瞬時に決して短くはない人生を振り返り、あちこちを駆け巡る。
おお。なんとなく思い出す。
朧気な輪郭だが、恐らく間違いないだろう。
「お久し振りです」
私も返す。
以前いた会社の外注の社長。
もう、10年以上経つだろうか。
辞める際に、少々お世話になった方だ。
勿論、その存在を忘れてはいないし、時々話題にも上っていた。
それなのに、分からなかったのは、外見の印象が変わっていたからだ。
「何してるの?」(何故ここにいるの?という意味だろう)という質問に
『何してるの?と言われても…』と、ただ笑顔だけを返すと
「え?何してるの?」を二、三度繰り返した後、ようやく気づいたようで
「あ、ここにいるの?」(ここで働いているの?の意)と仰るので、
「はい」と答える。
お客様を案内した女の子が「知り合い?」と聞く。
「そうなの」
まあ、そんなことがあって、懐かしかったし、笑ったし、少し驚いたりもした。
帰り際、その社長は、以前私と同じ会社にいた人を見つけ、「あれ?」と顔を覗き込んだ。
挨拶のつもりだろう。
同じ会社にいたその人は、パソコンから顔を上げたが、無反応。
後にいた私が、声を出して笑ったが、それでも言葉を発しなかった。
そういう人ではないので、あれ?どうしたの?と思っていたが、
社長は致し方なく、それ以上声を掛けることもなく、そのまま帰られた。
しばらくすると、同じ会社にいたその人が振り返り、こう言った。
「さっきの人、誰?」
ぷぷぷー。
吹き出してしまった。
やはり、理解していなかったのだ。
経年変化の著しい人、少ない人に分けるなら、私は後者に入れて貰えるのだろうか…
真ん中のお一人と目が合うと、その方は身を乗り出すようにして前に出てきた。
そして、「あぁ、久し振り」と仰った。
『久し振り?…って誰?』
顔と顔とを突き合わせるような形で、正面に立たれたそのご尊顔に繋がる記憶は蘇らず、
瞬時に決して短くはない人生を振り返り、あちこちを駆け巡る。
おお。なんとなく思い出す。
朧気な輪郭だが、恐らく間違いないだろう。
「お久し振りです」
私も返す。
以前いた会社の外注の社長。
もう、10年以上経つだろうか。
辞める際に、少々お世話になった方だ。
勿論、その存在を忘れてはいないし、時々話題にも上っていた。
それなのに、分からなかったのは、外見の印象が変わっていたからだ。
「何してるの?」(何故ここにいるの?という意味だろう)という質問に
『何してるの?と言われても…』と、ただ笑顔だけを返すと
「え?何してるの?」を二、三度繰り返した後、ようやく気づいたようで
「あ、ここにいるの?」(ここで働いているの?の意)と仰るので、
「はい」と答える。
お客様を案内した女の子が「知り合い?」と聞く。
「そうなの」
まあ、そんなことがあって、懐かしかったし、笑ったし、少し驚いたりもした。
帰り際、その社長は、以前私と同じ会社にいた人を見つけ、「あれ?」と顔を覗き込んだ。
挨拶のつもりだろう。
同じ会社にいたその人は、パソコンから顔を上げたが、無反応。
後にいた私が、声を出して笑ったが、それでも言葉を発しなかった。
そういう人ではないので、あれ?どうしたの?と思っていたが、
社長は致し方なく、それ以上声を掛けることもなく、そのまま帰られた。
しばらくすると、同じ会社にいたその人が振り返り、こう言った。
「さっきの人、誰?」
ぷぷぷー。
吹き出してしまった。
やはり、理解していなかったのだ。
経年変化の著しい人、少ない人に分けるなら、私は後者に入れて貰えるのだろうか…