弱い文明

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「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメント

2012年07月07日 | 原発 3.11 フクシマ
 今日、内閣府で募集しているパブリック・コメント(「エネルギー・環境に関する選択肢」)にwebフォームから応募しておいた。政府のエネルギー・環境会議でまとまった原発依存に関する選択肢、「0% 15% 20-25%」についての意見募集である。
 エネルギー・環境会議のこの「選択肢」については、政府報告案がまとまった6月初旬の段階に至るまで、ビデオニュース・ドットコムで何度も取り上げられていた。僕が参考にしたのは、たとえば以下のニュース・コメンタリーである。
 http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002429.php

 そんなこんなを参考にして自分はこんなふうに書き送ってみた。もう当ブログでは何度も何度も書いてきた内容の焼き直しだけれど、読者の人のご参考になればと思い、掲載する。別に参考にしなくても、もっといいのを皆さん書いてほしいけど。


概要
・「0% 15% 20-25%」という選択肢の提示はそれ自体が「おためごかし」であること
・日本は自然エネルギーの推進に適した国であり、それを推進することは国内的にも国際的にも重要であること

そもそもが福島事故後、菅内閣の末期に、脱原発の方向が国の方針として一度は打ち出されたはず。有識者会議なども、それを前提に「いかに原発依存から脱するか」を目的に話し合われるべきものだったのに、野田内閣誕生後に揺れ戻しが進んで、原発を含めた「ミックス」を話し合う場にすり替わってしまった。この認識からすれば、「0% 15% 20-25%」などというエネルギー・環境会議の言う「選択肢」は、国民を馬鹿にしたおためごかし(※)に過ぎない。「20-25%」も「15%」も、すでに0%を経験した2012年現在から見れば、事故をなかったことのように振舞う「現状維持」であるどころか、死に体の原子力に無理やりカンフル剤を打ち込む「推進強行」策に等しい。

福島事故は青天の霹靂だったわけではない。原発は福島の事故以前から、ほかの発電方法では起こりえないような事故や原因不明の故障を延々と起こし続けてきた。これからも起こし続けるだろう。
一度につき13ヶ月以上という定期検査をしてさえ、これほど事故が多発するというのは、そもそも技術として未熟過ぎると考えるのがまともな人間の発想だ。まして地震国であるこの日本において、その未熟さを「危険」と感じないほどに感性が鈍い人間が、原発を推進してきたのである。
しかも、事故が起きなくてさえ、ウランの採掘から放射性廃物の処理・管理に至るまで被曝がつきまとう。これについても、抜本的な解決法などいまだに世界のどこにも存在しない。
それら技術的に無理のある事柄を、無理を隠して表面的に無難に遂行するために、ほかの発電とはケタ違いの予算を投入しなければならない。しかし投入してきてさえ、結局無理は隠せず、今回のように国土の一部を失うという事態に至った。

唯一のメリットと言えるのは核兵器の材料が手に入るということだが、それによって周辺諸国との軍事緊張を煽るのなら、政治的にはメリットとは呼べない。
結局、巨額の予算をつぎ込んだ事業に群がる人間たちが既得権益を守りたい、そのためだけに発想されたのが「0% 15% 20-25%」という「選択肢」だろう。そして図体がでかく、小回りのきかない一極集中型の原発は、地域社会を補助金依存症に陥らせ、国全体の経済構造もまた大企業優先の硬直的なものにしていく。日本の没落はここから始まっている、とさえ言える。

しかも、福島事故はまだ収束に程遠い。原発関連の予算や技術開発は、今後何十年も続くこの事故の処理につぎ込まなければならないのが現実だろう。それと平行して、福島以外の各原発の廃炉作業にも追々取り組まなければならない。あらためて原発を「動かす」ことなど考える余裕が、いったいどこにあるのか。

日本は石油やウラン、鉄鉱石などの資源に恵まれていない一方で、地熱や風力、四方を囲む海の潮力など、自然エネルギーの資源にはむしろ恵まれているほうの国だ。
産業としての未来のない原子力を「選択肢」に組み込んだ時点で、もう「ベストミックス」の要件からはずれている。原発抜きのエネルギー政策を推進しなくてはならない。それは単に電力を生み出す方法としての選択であるだけでなく、独占企業を退けて社会の風通しを良くし、雇用を生みだし経済を活性化するという意味で、国内諸問題の解決策の一環でもある。また、自然と調和した発展を追求する世界の技術潮流に加わり、その思想を広めることこそ、我々が目指すべき国際貢献の道である。
頭の中の古い部品を取り替えて、新しい発想で日本を再建することは、国際的にも果たさなければならない責任である。それをやって初めて、「日本は原発事故から復興した」と(自分で言い張るだけに終わらず)世界の人たちから認められるだろう。

福島事故を真に反省し、責任者を処罰できない「国」には望むべくもないのかも知れないが、「0% 15% 20-25%」などというあり得ない「選択肢」を提示・容認した関係者はおのれを恥じ、反省してもらいたい。それは国家レベルの詐欺行為だという自覚がないような人たちが、いまだに原子力関連の役職のトップに就いている。それ自体がスキャンダルである。
私たちは未来に進まなければいけないのである。過去に生きたい人たちは、黙って役職から外れてもらいたい(そのうちの何人かは収監し、裁判にかけねばならない。法治国家の基本だ)。


※「おためごかし」・・・人のためにするようにみせて実は自分の利益をはかること(岩波国語辞典より)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お説は正しい (おじさん)
2012-07-16 22:48:06
するどい視点でのブログ、感心しています。
ここで追加してほしいのは、ウラン鉱の有限性です。
化石燃料より短いのにまだそれにすがりつくのは滑稽でもあります。
それに、省エネです。
おじさんちは南関東ですが、10年以上前に、二重窓にしました。
メーカーから、南関東での設置は稀ですが、いいのですか?と聞かれた。
住宅の二重窓(二重ガラス)だと、30%の省電(省エネ)は簡単です。
ぜひ、お説に追加してくださいね。
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>お説は正しい (レイランダー)
2012-08-19 14:29:20
表示&レスが遅れて大変失礼しました。

ありがとうございます。二重窓の件は面白いですね。僕も部屋の窓にプチプチのビニールシートを貼ってまして、それだけでほんのわずかですが、同じ効果があるようです。

お説はぜひ、御自分のパブコメに活かして、政府に送ってください(もうしましたかね?)。
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