弱い文明

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パレスチナの<ユダヤ化>─メロン・ベンヴェニスティ来日講演のお知らせ

2010年02月23日 | パレスチナ/イスラエル
 イスラエルの著名な政治学者、メロン・ベンヴェニスティ氏がUTCP(東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」)の招聘により、3月中ごろ来日する。滞在中、都内の大学その他で計4回の講演を行なうことが決定している。
 著名な、といっても現地での話で、日本語に訳された書籍もないから、こちらではあまり知られてはいない。僕もうっすら名前を聞いたことがあるくらいで、どんな人なのかはまったく知らなかった。しかしプロフィールを伝え聞く限り、非常にユニークなポジションにいる人物らしい。

 イスラエル建国以前のエルサレムの生まれ育ち。つまり本来なら──イスラエルという国家ができなかったなら──「イスラエル人」というより「アラブのユダヤ教徒」と定義される人のはず(あるいは民族どうこうではない、エルサレムという土地に帰属する“エルサレムっ子”みたいな?)。
 父親がこれまた著名な地理学者で、シオニズムに共鳴する立場からイスラエル建国に始まるパレスチナの「ユダヤ化」の一翼を担った重要人物である。しかし息子である氏は、エルサレム市の副市長を務めるなど「体制側」で地歩を固めていたにもかかわらず、徐々にシオニズムから距離を置き始め、齢70を越えた今では「もう私はシオニストではない」と公言するところまで来ている(それによって最近になるほど、執筆活動への圧力も高まっていると聞く)。
 それでいていわゆる反体制派、いわゆる親アラブ的な立場に鞍替えなどという、安直な図式にもはまらない。二民族共存の未来を支持しているが、それは氏の立場を象徴する言葉どおり、「Intimate Enemies(親密なる敵)」同士としての共存、だという。「親密なる敵」とは何か?──氏の長年の観察と分析に基づく論述は、パレスチナ/イスラエルに限らず、支配民族による歴史の改変、さらにその治癒に至る道筋というテーマに関心を持つ人にとって、示唆するところの大きいものだという予感がする.。

 UTCPのwebサイトより、招聘を控えての早尾貴紀さんによるベンヴェニスティ氏会見報告のページは以下。
 http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2010/01/post-313/
 同サイトより、講演会の情宣ページは以下。 
 パレスチナの〈破壊の歴史〉と〈共生の未来〉を語る

 特にここでは、最も一般の市民向けの内容が予定されているミーダーン<パレスチナ・対話のための広場>主催の講演会を紹介する。以下はミーダーンからの案内文の転載。


=======(転載・転送歓迎)========

メロン・ベンヴェニスティ講演
パレスチナの〈ユダヤ化〉――破壊と収奪の歴史を透視する


[日時]2010年3月13日(土)
開場・受付開始/13時30分
開始/14時
講演“Tortured landscape: Settlement and dispossession in the Holy Land”
(虐げられた風景:聖地における入植と収奪)
(日本語逐次通訳あり、終了予定17時)

[参加費]1,000円

[場所] 東京麻布台セミナーハウス大会議室
東京都港区麻布台1-11-5
大阪経済法科大学東京麻布台セミナーハウス

[アクセス]
東京メトロ日比谷線「神谷町」駅から:1番出口から東京タワー方向に上り坂を直進、徒歩5分
http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/access.html
都営大江戸線「赤羽橋」駅から:徒歩8分
都営三田線「御成門」駅から:徒歩10分
http://kenshu.e-joho.com/azabudai/map.html

■一瞬で破壊される家屋、根こそぎなぎ倒されてゆくオリーブの樹。何度私たちは、こうした映像を目にしてきたことでしょう。

それはその家や土地の持ち主の長年の蓄積や未来への展望を一瞬にして打ち砕く暴力であるばかりでなく、パレスチナの文化や歴史全体の破壊に向けたプロジェクトの表現でもあります。イスラエルのブルドーザーは、個々の家屋やオリーブの樹を破壊し根こそぎにすることによってパレスチナの風景全体を破壊し、同時に人びとの記憶やアイデンティティを奪い続けてきました。風景とは、パレスチナの地で人びとが農作業を行ない、踊り、食べ、祈り続けてきた生活のいとなみのすべてによって作られたものだからです。すさまじい破壊の後、ある土地は囲い込まれ朽ちるままにされ、ある土地には全く異質な建造物が建てられ、そこにヘブライ語の名前が一方的に与えられました。パレスチナの歴史に思いをはせようとする人びとにとっても、それぞれの入植地やバイパス道路の下に眠るかつての光景をありありと思い浮かべることは、もはや困難になっています。

このたび私たちミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉は、イスラエル建国前のパレスチナの丘や木立を原風景として育ち、シオニストの地理学者であった父の仕事を批判的に継承してきた政治学者、メロン・ベンヴェニスティ氏を迎えることになりました。パレスチナの〈ユダヤ化〉政策の内側を長年にわたり目撃しつつ、次第に批判を強め鋭く対峙するようになった同氏の証言は、徹底的にパレスチナを破壊し収奪してきた現在のイスラエル国家の地図の向こうに、パレスチナの原風景を垣間見せてくれるのではないでしょうか。それは、現在なお続く〈ユダヤ化〉をくい止め、別の未来への可能性が確かにあると考えるための一歩にほかなりません。

 その一歩をともに踏み出したいと考える方々に、参加を呼びかけたいと思います。

■メロン・ベンヴェニスティ(Meron Benvenisti)
1934年エルサレム生まれ。政治学者。ヘブライ大学を卒業し、ハーヴァード大学で博士号取得。1971年から78年までエルサレム副市長を務め、東エルサレムを管轄した。父ダヴィド・ベンヴェニスティはイスラエル建国当時の高名な地理学者であり、シオニズムの立場からの「愛郷教育」の基盤を作り上げた一人。1982年に「西岸地区データベース・プロジェクト」を立ち上げ、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ社会におけるイスラエルの入植のインパクトを、人口・経済状況・土地所有などの観点から大規模に調査。また2000年に刊行された主著“Sacred Landscape”において、父親世代の地理学者らの功罪を批判的に検証する作業を行なう。現在は明確に反シオニズムの立場に立ち、二民族一国家を支持する立場から、「ハアレツ」紙上で論陣を張る。書著は他に、“Intimate Enemies: Jews and Arabs in a Shared Land”(1995年)、“City of Stone: The Hidden History of Jerusalem”(1998年)など多数。


[主催]ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉
[共催]東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)
[連絡先] 〒162-0823 東京都新宿区神楽河岸1?1
東京ボランティア・市民活動センター メールボックスNo.114
ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉
[TEL]090-6498-6448 [URL]http://midan.exblog.jp/
[メールアドレス]midan_filastine@excite.co.jp
[郵便振替口座]00160-9-353912(口座名義:ミーダーン)

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