弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

忘れられない年

2011年12月17日 | 原発 3.11 フクシマ
 これまでの人生で何度となく出席した「忘年会」だが、今年ほどそれが似つかわしくない年にめぐり合わせたことはない、と感じる。だって、今年こそは「忘れてはならない年」ではないか──今年だけが、とは言えないにしても。
 例年なら、「嫌なこともいろいろあったけど、気分をリセットして新しい年を迎えよう」という物の言い方に、多少おもねっても罰は当たらない気がしていた。もちろん、実際に忘年会で飲み食いしたからといって、その年のことをさらっと「忘れられる」ような、器用な人間がいるわけではないのだけど。
 ただ今年に限っては、それが形式上の、ただの言い方の一つに過ぎないとしても、「忘れて先に行きましょう」的なことを臆面もなく言うのは、物忘れの早い日本人の習性を共有している僕でさえ、さすがに「不謹慎」だと感じてしまう。
 そして、同じように薄々はそれを自覚している世間は、「つらいことがあった一年だけど、力を合わせて頑張ろう」の盛大な合唱をフィナーレの紅白歌合戦あたりに向けて演出しようとしているのだろう。美辞麗句で醜い現実をごまかすのが好きな、日本人のもう一つの習性に従って。死ななきゃ治らないとはこのことだなと、こちらは思うばかりだけど。

 12月16日、首相の野田とかいうやつが、福島原発の「冷温停止」を宣言したそうだ。これをもって、第二工程(笑わせる)だかのしめくくりだそうだ。これもまた、いやなことは年内に片付いたことにしちゃいましょうという発想からの、政治パフォーマンスであろう。原子炉燃料が圧力容器を貫いて「メルトダウン」したということは「冷温停止」が永久に不可能になったことを意味するという、原子力技術の常識を打ち破る、ファンタジーの勝利でもあろう。おめでとう。

 そして今日17日、年内最後のデモに行ってきた。ツィッター有志の呼びかけによるデモで、4月以来ほぼ毎月渋谷~原宿で行なわれてきたデモの、年内総集編。
 人数は千人ほどだったか。僕が予想していたよりは多かったけど、もちろん一万人単位の大型デモに比べると見るからにこじんまりしている。だが、内容はとても良かった。
 警察のほうの警備動員も少なく、変な挑発を受けることもなく、それも精神的によかったのかもしれない。また人数が少ないので、分断されることもなく、ほぼひとかたまりで進めた。それが本来普通の(国際基準の)デモの姿であって、いかに春から夏にかけての大型デモに対する分断・挑発・弾圧が異常だったか、逆にしみじみ思い出してしまった。

 サウンド・カーなどは出ないから、全体の音量は控え目。といって元気がないわけでなく、結構今年のデモで経験を積んだ若い人達を中心に、あまりお祭り騒ぎのハイ・テンションに傾くことなく、いい意味での余裕をもって進められたように感じる。
 日本一おしゃれな街のど真ん中を突っ切って行くデモは、逮捕者を出した5月の素人の乱主催デモの時以来だったが、その街の空気も、どことなくデモ参加者に対して打ち解けた感じが見えるようになった。毎月のようにこのコースでデモをこなしてきた主催者・参加者の努力のたまものだろうか。歩道から手を振る人がいたり(デモ隊側のサクラではない)、対向車線で信号待ちしていた車が、たった一台のことではあるけれど、「原・発・反・対」のコールに対して、「プッ・プッ・プッ・プッ」とクラクションで合いの手を入れてくる場面もあったり。
 ゴール地点のケヤキ並木(NHKの真ん前──だがもちろんNHKは報じてはくれない)での打楽器アンサンブル+ラップも盛り上がった。何も新機軸はないけれど、はじけた人がインパクトのある絵面を提供することもないけれど、必要なことを必要なだけ、本当に普通の人たちが持ち寄って作り上げたアクション。人前で話すのが苦手そうな、若い呼びかけ人の男性の控え目な締めの挨拶──そのなかで、「忘れられない年になりました」とか、そんな言葉が聞こえた──には、ちょっとウルッとしてしまった。
 行って良かったと、心から思えるデモだった。やっぱりデモは人数じゃない。

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2 コメント

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共感します (ねこ)
2011-12-18 03:38:54
本当に忘れられない1年でした。前半にものすごく共感します。私にとっては80年(光州虐殺)とか95年(阪神大震災)とかにならぶかんじです(それにしても、あの「冷温停止」宣言、世界の笑いものになるだけ、被災者を余計追い込むだけ。ひどい!)。

後半のデモですが、関西ではもっと小さなデモもけっこうやってます。この前の「怒濤のドラムデモ」は250人くらいかな。私は行けなかったけど、「女子デモ、なんデモ?」も同じ位だったらしいです。いいですよ、こんな規模でも。ちょこちょこ、いろんな毛色、経路?でやるのは。私は終わった後の路上(つーか、河川敷)での交流会などもとても楽しみました。炊き出しとかしたりね。けっこう遠くから来ている人に話を聞いてみたりして。小さいけど、いろんな結び目が作られていくというイメージを持ちました。
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>共感します (レイランダー)
2011-12-20 16:31:11
関西のデモ、お疲れ様です。京都は河川敷の集会が、いつもイイ感じですよね。
一般に、東北・関東に比べて関西は(福島事故の)危機感が薄いみたいに言われてますけど、必ずしもそうではないと思うようになりました。加えて、この先どんどん被曝の影響が露呈してくるから、否が応にも意識は高まるでしょうしね。
来年も頑張りましょう。
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