遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

敗戦特集。5.コンクリート梵鐘

2019年08月17日 | 敗戦特集

資源の少ない日本では、戦争を継続するために、民間から強制的に金属類を供出させました。昭和16年公布の金属類回収令です。寺の鐘も例外ではなく、大半の寺院の鐘は供出されました。戦争末期には、大晦日、お寺の鐘がならない異常な事態に至ったのです。

 

それから80年近く経った今、お寺の鐘は?

というわけで、お盆明けの昨日15日、岐阜県垂井町の2つのお寺を訪れました。


まず、垂井宿の中心にある本龍寺。

とても立派な鐘楼に、梵鐘が吊り下がています。

 

お寺の庭の隅に目をやると

コンクリート造りの梵鐘です。高さ1m。

戦時中、鐘を供出した後、このコンクリート鐘を鐘楼に吊っていたのです。

鐘がなくては殺風景だからという理由ではなく、鐘が吊ってないと鐘楼が不安定になるからです。

当然、音は出ません。

 

もう一か所行きました。

山手にある祥光寺です。

ここにも立派な鐘楼と鐘が・・・

 

 

少しスリムな鐘のようですが・・・

 

 

近寄って見てみると・・・

ドラム缶です。

ドラム缶に、石とコンクリートを詰めた鐘です。

80年近くも、この鐘楼に吊られているのです。

 

ドラム缶の鐘と向き合うように、明治の濃尾大震災の慰霊碑が立っています。

死者7000人余の濃尾震災犠牲者を弔っています。


鐘楼のドラム缶鐘は、300万人を超える戦争犠牲者を弔い続けているのでしょうか。

 

戦争中の供出で、寺の鐘は音の出ないコンクリート塊に変りました。

戦後、70余年、今、町中では、音がうるさいと苦情が来るので、鐘を鳴らさないお寺が増えているそうです。

コメント (6)
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