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遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

青磁陽刻草紋鉢

2021年08月22日 | 古陶磁ー高麗・李朝

高麗青磁の鉢です。

径16.5-17.2 ㎝、高台径 5.6㎝、高 4.2㎝。高麗時代。

発掘品です。青磁は、黄茶がかった酸化色です。

高麗時代の日用品でしょう。

大きく歪んでいます。

内側はまあまあですが、外側はひどくカセています。

まだ、取りきれていない土錆が残っています。

高台外に、釉はずしの部分がありますが、土中時の釉剥がれもあって、何が何だかわからない状態です。

このように、あまり取り柄のない品ですが、どうして購入したかというと・・・・

微かにそれと認められる陽刻です。

草紋でしょうか。

朝鮮半島の陶磁器では陽刻は少ないです。

一部の高級品を除いて、陶磁器装飾の基本は、陰刻なのです。高麗青磁の白黒象嵌や李朝の粉青沙器の白釉掻き落とし(例として、日本でいう三島模様)など、高麗、李朝を代表する陶磁器は、皆、陰刻を基にしています。

で、そんなことから、例の天邪気の虫が頭をもたげて、誰も注目しないような品が手許にやってきた次第です(^.^)

 

 

 


李朝染付辰砂鶴紋細首瓶

2021年08月19日 | 古陶磁ー高麗・李朝

李朝の鶴紋細首瓶です。

最大径 25.7㎝、口径 5.7㎝、底径 11.5㎝。高 36.2㎝。重 2.75㎏。李朝中ー後期。

 

鶴は、3匹描かれています。

 

主に、足の位置が違います。最初の鶴の脚が前向きなのに対して、

足が後ろ上向きです。

3匹目の鶴は、

下後ろ方向に足があります。

 

鶴と鶴の間には、雲気紋と草花紋が描かれています。

 

下部には、ぐるりと渦巻き模様。うまの目?(^^;

 

焼成時にくっ付きを防ぐために撒かれた砂が付着しています。

 

器体表面にはびっしりとジカンが見られます。

先日紹介した李朝染付草紋大徳利と器形は非常によく似ています(今回の品が一回り大きい)が、ずいぶん趣きが違います。もちろん、悪質な補修もなされていません(^^;

今回の品の一番の見所は、鶴のひょうきんな表情、特に、辰砂でポツンと表された鶴の頭の赤い部分でしょう。地味な器肌に、ひかえめに打たれた銅の赤が効果的です。

本当は、もっと後ろの頭頂付近が赤いのですが、これじゃあ、赤鼻のツルさん(^^;  でも、この際、硬いことは言わずに・・大らか李朝(^.^)


李朝鉄絵染付草花紋大壷

2021年08月18日 | 古陶磁ー高麗・李朝

李朝の大壷です。

肩に2本の圏線が廻り、鉄釉と染付で草花(菊?)が描かれています。

これも菊の枝?

最大径 35.7㎝、口径 20.9㎝、底径 13.7㎝。高 40.6㎝。重 6.0㎏。李朝後期。

 

反対側にも菊の様な模様が描かれています。

こちらは、鉄釉ではなく、染付で菊模様。

花は、写真では墨絵のように黒っぽいですが、実際は、呉須の青色です。

こちらの写真が実物に近いです。

申し訳ありませんが、他の写真も同様に、各自、頭の中で、色補正をお願いします(^^;

こんな具合です(^.^)

 

壷には、ニュウがいくつかあります。

 

高台は、大きくて重い本体を支えるため、ガッチリとした造りです。

砂を撒いて焼かれたようです。

 

内部には轆轤目が規則正しく見られます。

底には、大きな凸凹が数多くあります。どうやらこれは、指で強く抑えて、高台を念入りに接合した跡だと思われます。

 

胴には、雨漏りのようなものがいくつか見えます。

その部分の内側を見ると、疵跡のようなものがあります。右側の大きなものは、おそらく素焼きの時にあいた穴を釉薬で塞いだものでしょう。左側の穴は釉薬がはじけています。両方とも、内側が疵になっていて、そこから浸みこんで表に現れたシミが雨漏りなのですね(^^;

例によって、おまけの見立てです。

「雪おんな(左)とウサギさん(右)」

 


李朝鉄絵蕨図花瓶

2021年08月17日 | 古陶磁ー高麗・李朝

李朝の鉄絵花瓶です。

蕨のような模様が、鉄釉で描かれています。

最大径 17.4㎝、口径 11.8㎝、底径 11.4㎝。高 26.8㎝。重1.92㎏。李朝時代。

 

少し鉄分が含まれた土です。

 

内側には轆轤目が見られます。全面施釉されています。

外側の表面には、横へ引いたような跡がたくさんあります。

表面を整える時に、含まれた小石で跡がついたのでしょうか。それに対して、内側の表面は滑らかです。

この品は、元々、物を入れる容器だったのでしょうが、前所有者により、銅の落しが作ってありました。

ですから、やはり、花瓶として使ってやるのが良いと思います。

 


李朝染付大徳利の悪巧みを暴く

2021年08月16日 | 古陶磁ー高麗・李朝

先回、李朝の染付大徳利を紹介しましたが、どうも腑に落ちない品でした。

それが、これ。

疑念が疑念をよび、そういえばここがおかしい、あそこも怪しいとなって、全面的に見直すことにしました。

まずは、はっきりとした箇所から。

胴に大きなニュウがあります。写真では見難いですが、ニュウの両側、釉薬が剥がれたようになっています。ナイフでつついたら、ボロボロと剥がれてくるではありませんか。

厚めに塗料がぬってあったのですね。さらに、ニュウから離れるにしたがい、薄塗りになっています。芸が細かい。でも、時間がたつにつれ、厚塗りの部分から少しずつ自然に剥がれてきたようです。化粧みたいなものですね(^^;

周辺の薄塗り部もふくめて、一皮むけば、これこの通り。本当の顔が表れました。やはり、この方が素直です。釉薬の自然な光沢が戻りました。

次に疑ったのは首です。胴のニュウのようには、はっきりしていませんが、妙にのっぺりとした質感です。そして、質感が違う所がグルッとあります。これは怪しい。継ぎ目では?

ナイフで削ると、上側の方が柔らかく、削れてきます。そして、継ぎ目表れました。

下は陶磁器なのですが、首(10㎝ほど)の部分は、石膏。その上に、塗料が塗ってありました。やはり、継ぎ目部分には厚く、周辺になるにつれて薄く、全面的にぬってありました。しかも、まっすぐに継いでない。首が曲がっています。これなんかも、以前の段階では、少し傾いだ様子が味わいだ、となっていました。しかし、その実態は、あばたもえくぼではなく、あばたはあばた(^^;

 

石膏で作ったのですから、首の部分がのっぺりしているはずです。当然、内側に轆轤目もありません(^^;

一方、大きな疵のない胴の部分には、ボヤッとした染付で草紋が描かれていますが・・・・

少し研磨剤で擦ってみると、一皮剥けます(左側半分弱)。

力を入れて全面的に磨けば・・・

塗料がとれて、本来の染付草紋が表れました。

反対側の染付草紋も同様に綺麗になりました。

 

結局、この大徳利のぼやっとした感じは、

李朝の素朴な造りによるものではなく、

大疵、大欠けを補修し、灰色がかった塗料で器全体を糊塗した結果の産物だったのです(^^;

今回の品は、たとえ完品であっても、ワーワーいうような代物ではありません。いわば、駄品。ま、こんなのが一個あってもいいかな、ぐらいのつもりで入手した物です。

しかし、そこに落とし穴が😢

こんな品に、手間暇、金をかけてまで、人を引っ掛けるような細工をするはずがない、という駄品バイアスがかかっていたのですね😢