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遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

青磁象嵌雲鶴紋梅瓶

2021年08月28日 | 古陶磁ー高麗・李朝

青磁象嵌雲鶴紋梅瓶です。

最大径 23.4㎝、口径 7.0㎝、底径 8.9㎝、高 40.6㎝。時代不詳。

大きな青磁の壷です。青磁釉は透明で、ビッシリと貫入があります。

胴には黒丸の内外に多くの鶴が、その間には雲が配置されています。

肩と裾には連弁紋、鶴の間を雲が配置されています。

この種の壷は、高麗青磁の定番の一つで、現在でも盛んに造られています。

黒丸の中の鶴は40匹、丸の外側には24匹の鶴がいます。

丸の中の鶴は空へ、外の鶴は下向きに飛んでいます。

奇妙な事に気が付きました。丸の中央(鶴の腹)には、必ず小さな穴が開いているのです。外側の鶴には穴は開いてません。これは一体どうしてでしょうか。丸く削る時に、コンパスのような道具を用いたのでしょうか。穴くらい、埋めておいてほしい(^.^)

もう一つ、不思議があります。

よく見ると、鶴の腹部が凹んでいます。丸の内側の鶴も、外側の鶴も、同じように腹部が凹んでいるのです。ツルの腹部を指でグッと押さえたように思えます。

一体、何のために?

よーく見ると、凹んだ部分は、外の部分よりも青磁釉が厚くなっているので、少し青色が濃いです。丸の内の鶴、外の鶴、いずれも青味が他よりも少し増しています。

こうやって鶴を強調しようとする試みだったのでしょうか。

 

下部の連弁紋です。

よく見ると、弁の中央に、◯が縦にならんでいます。これは本来、真中に黒点がある白の◯なのです。

本歌の青磁象嵌雲鶴紋瓶(『世界陶磁全集18  高麗』)が本に載っています。

本歌と較べてみるとわかります。

この品は、削った所に、白、黒の土を入れるのを忘れているのです(^^;

 

そして、底部。

巧妙な直しがあります。0時、2時、6時、9時の辺りに共色直しが施されています。窯の中で底がくっつくの防ぐために、土を置いて焼成したのですが、焼成後、取り出す時に、数カ所、大きな疵が出来たのだと思います。その部分を補修したのですね。

この品、いくつか不思議な点があります。試作品、よく言えば、新たな試みに挑戦した品?いずれにしても、立派なコピー品を作ろうとしたとはとても思えません。普通なら、物原行きの品ですね(^^;

解せないのは、そんな品に、立派な(^^;)直しを施したことです。以前の李朝染付草紋大徳利のように、駄品に直し?

フシギの品です(^.^)

 

 

 

 

 


青磁象嵌草花紋花瓶 ~土産の虫にも五分の魂~

2021年08月27日 | 古陶磁ー高麗・李朝

今回は、青磁象嵌草花紋花瓶です。

最大径 11.5㎝、口径 9.9㎝、底径 9.6㎝、高 17.7㎝。近年作。

どこから見ても新しい品です。

それもそのはず、これは韓国土産でもらった物です。当然いい加減な扱い。通り一遍のお礼を言った後は、しっかり見たこともありませんでした(^^;

妙に整っていて綺麗、しかし全体に力がない。

これは、悪意があるかないかにかかわらず、コピー品がもっている特徴です。

肩の連弁紋も、ひょろひょろした線。

これは象嵌ではなく、筆で描いたに違いない ・・・・

と思いきや、拡大してみると ・・・・・

白線に沿って、貫入が入っています。

 

草花の黒い茎にも・・・・

貫入が入っています。

象嵌で地を削ると、模様に沿ってひずみが生じるので、焼成した後、上釉に貫入が入るのです。

下部の連弁紋内の黒丸の中には・・・・

上釉がはじけて、黒土がのぞいています。

これまで、土産物の青磁ではね、と思っていたのですが、真面目に造られているのですね。

しかし、こうなってくると逆に、高麗、李朝物に対する見方が、ますますわからなくなってきました。

ふっと底を覗くと・・・

上側の造りとは不似合いな底造り。

製作者も息が抜けてしまったらしい(^.^)


青磁白黒象嵌魚紋梅瓶

2021年08月25日 | 古陶磁ー高麗・李朝

今回は、白黒象嵌が施された青磁梅瓶です。

最大径17.6㎝、口径4.6㎝、底径10.7㎝、高27.2㎝。李朝?

これまで紹介した青磁象嵌は、白象嵌でした。実際は、白土だけでなく、黒土を組み合わせた製品も多くあります。今回は、その一つです。

魚模様が特徴的な品です。

反対側にも、ほとんど同じ魚がいます。

魚釣りに凝っていた頃の名残りの品です(^^;

肩と、

下部には、連弁紋。

全体に青磁釉と思われる釉薬が掛かっていますが、発色は悪く、濁っています。

釉薬の掛け方もぞんざいで、下の方はムラが多い。

畳付には、白泥のようなものがぬられています。

今回の品、あまりすっきりとした青磁象嵌ではありません。時代も不確か。いまいちパッとしません。

これはひょっとして一杯喰わされたか?

軽妙な魚も、こちらをバカにしているようです(^^;

疑われるのは、偽物象嵌。

よくあるのは、手間のかかる象嵌のかわりに、白や黒の色釉で絵を描いて済ました物です。

この品は、描線が1㎜ほどと細く、筆で描いた魚のようにも見えます ・・・・・・・・が・・・

魚の腹側の線に沿って、ヒビが入っています。

おお、これはまさしく、象嵌削りの溝です。

象嵌では、まず、器胎表面を削って溝をつくり、そこへ白土や黒土を埋め込んで、表面全体をざっと削った後、青磁釉を掛けて焼成します。この時、象嵌によって、器体にひずみがかかっているので、象嵌模様に沿ってヒビが生じやすいのです。また、釉薬にも象嵌部部には特有のジカンが現れることが多いです。

今回の品には、大きなヒビが見られ、魚の模様は、描画ではなく、象嵌によって表されていることがわかります。

もう一度、冷静に品物を見てみると、右上から左下に向かって、小カンナで削ったような跡が幾筋もあるのがわかります。これは、象嵌した後、表面を削って、余分な白土、黒土を取り去り、同時に、象嵌部の輪郭をはっきりさせるための処理です。

魚の一番後ろの腹びれを拡大してみると、

非常に細い白象嵌で、腹びれが鋭く表されていることがわかります。高度な象嵌技法ですね。

この壷、時代はさておき、象嵌青磁として、最低限の条件はクリアーしているようです。

どうやら、パッとしない最大の理由は、にぶい青磁(かどうかもわからない)釉にあるようです(^.^)

 

 


李朝三島象嵌大徳利

2021年08月24日 | 古陶磁ー高麗・李朝

今回の品は、三島象嵌大徳利です。

最大径 17.2㎝、口径 7.5㎝、底径 8.5㎝、高 29.2㎝。李朝時代?

様式からすると李朝時代の品ですが、正確な時代は不明です。

口縁は補修されています。

口縁内部にも、細かな模様が刻まれています。

 

口縁外側には模様がありません。

全体に少し濁った釉薬が掛けられていて、もはや青磁とは言い難いです。赤味をおびた地肌が現れています。

 

細かな三島模様の中にいくつかピンホールがあり、ぼやっとしたシミが現れて、景色を添えています。

 

高台の外側は、白泥を刷毛で塗っています。そこをにぐるッと陰刻圏線をめぐらし、アクセントをつけています。

この品の見どころは、もちろん、細かな白いドットで表された縄目模様です。簡略化された三島(^^;

この様な象嵌模様をどうやって作るのでしょうか。

飛鉋の技法で表面を削るなら、もっとリズミカルな模様になるはずです。

印花のように、小さな凸型を押していく場合は、小紋のように同じ小模様が連続することになります。

今回の品は、いずれの技法も当てはまらないようです。

ということは、一個一個穴を開けていった?・・・それほどの手間をかけたとはとても考えられません。

胴の模様を眺めてみると、白いドットは横へ広がっていることがわかります。おそらく、小凸がたくさんついた器具を横へ転がして、あるいはシートを押し当てて、小穴を開けたのではないかと思われます。

もう一度、胴を詳細に点検してみると、明治印判皿のように、模様が不連続な部分(ズレ)が見られます(上の写真のまん中から下部へかけて、縦のズレ)。ピッタリと合わせるのは非常に難しいのですね(^^;

さらに拡大してみると、

白い象嵌模様はぼやっとしています。先回の象嵌青磁縄目紋(三島)小皿のような白泥と地の間のシャープな線は全く見られません。模様の輪郭がはっきりしていないのです。

象嵌青磁では、削った部分へ白泥を入れた後、表面全体を削ってから釉薬をかけるので、境目がクリアーになります。それに対し、今回の品は、器表に多数の穴を開けた後、白泥を刷毛で塗り、表面をざっと拭きとった後、上釉を掛けて焼成したものと思われます。

時代が下がると、手抜きが増えるのは、どこでも一緒ですね(^.^)


高麗青磁象嵌縄目紋(三島手)小皿(5客)

2021年08月23日 | 古陶磁ー高麗・李朝

高麗象嵌青磁の小皿、5枚です。

径 10.7㎝、高台径 4.0㎝、高 2.4㎝。高麗時代。

他の4枚の写真を以下に示します。大きさ、形はそれぞれ多少の違いはありますが、基本的には最初の皿と同じです。

2枚目:

3枚目:

4枚目:

5枚目:

この小皿たちに出会ったのは、25年前、大阪老松の骨董屋です。

いつものガラクタ類よりはかなり高額でしたが、高麗青磁の小皿は少ない、しかも同手が5枚揃うことは稀だ、と耳の奥でささやく声に負けました(^^;

5枚とも、かなりぞんざいな造りです。こういうのは、陶磁器生産の創生期、あるいは末期に見られます。私としては、創生期の品であって欲しい(^.^)

アバウトな造りではありますが、よく見ると無疵、しかも使用痕が全くありません。もちろん、発掘品ではなく、窯から出てきた物をそっくりそのまま持ってきたかのようです。高級品ならいざしらず、数百年前の朝鮮半島の日用品がこのような状態で日本にあるのが不思議です。

 

皿の表と裏に重ね焼き時の大きな目跡があります。小皿なのでずいぶん目立ちます。

青磁は、盛期の翡翠色ではなく、透明な薄青色。所々に赤茶けた地肌がのぞいています。鉄分の多い土を使っています。

 

裏側には、圏線が2-3本彫られていますが、削った陰刻線のままの皿もあります。

別の皿では、

陰刻線の中に、白泥が入っています。

それに対して、表側は、どの小皿にも細かな白模様がビッシリと施されています。

器体表面を細く削り、そこへ白泥を入れ、釉薬をかけて焼成した象嵌青磁です。

特に、細かな模様が連続している物を、日本では三島手とよんで愛好されてきました。呼称の由来には諸説ありますが、有力なのは、細かな象眼模様が三島神社で出されていた三島暦に似ているところから三島手(三島暦手)と呼ばれるようになったらしい。

三島暦は、仮名文字で書かれた暦で、日本で一番古い暦だそうです。確かにこの暦は、細い仮名文字がリズミカルに縦書きされていて、少し離れると、縄のような模様に見えます。

箱には、「縄目鶯(?)皿 五」と書かれているではありませんか。

おお、これは、縄目模様なのです。それがズラッと並んでいます。まさに三島暦。

すると、ぞんざいな造りのこの小皿たちは、元祖「三島手」か!?

三韓高麗現開城府ニテ製陶セシモノ
ニシテ今ヨリ凡六百年ヲ経過セリ。吾朝応
応神帝ノ頃ニ当ル。此品古来ノ渡来
ラシク保存充分タリシト見ユ。
          昭和十二年九月誌

箱書きの主は誰かわかりませんが、昭和12年といえば、朝鮮半島の陶磁器がまだ一般にはほとんど知られていない時期です。しかも、箱自体は箱書きよりもずっと古く、明治以前の物のようです。「此品古来ノ渡来ラシク・・」とあるように、この小皿たちはずいぶん昔に日本へきたのですね。

このぞんざいな造りの高麗象嵌小皿は、茶道具の一つだったのでしょうか。