覚えておこう！

ウチの娘（小学３年）は
エラく緊張するタイプなのです。
全体像が理解できないと
不安になるようです。
まぁ大人も同じですけどね。

３年前のこと。
運動会で「旗とり」がありました。
旗とり、ご存じですかね？
小学校に入学予定の子どもたちが
参加できるプログラムです。
小学５～６年の
お兄ちゃんとお姉ちゃんが
１０ｍくらい前に並んでいて、
旗と記念品（お菓子や文房具）を手に持っています。
逆の側には入学前の子が並んでいます。
それぞれが歩み寄り
中央で旗を受け取り
元の場所に戻る、という内容です。

アナウンスが流れます。
「さぁ、ようこそ ○○小学校へ～♪」
ＢＧＭもスタート！
みんなが中央で受け取り、
元の場所に戻ります。

ウチの娘は動けず、
その場で泣き始めます。

賑やかだった中央には、
ひとりのお兄ちゃんがポツリ。
ウチの娘に旗を渡す相手です。
そこへアナウンス。
「さぁ、ガンバレ、ガンバレ～！」
軽快なＢＧＭ。
会場全体の視線は娘に集中。
余計に泣き出します。

見届ける私。
いてもたってもいられなくてグラウンドに駆け出す妻。

妻は会場全体に
「すみません、すみません」と
頭を下げながら、
娘を抱え、中央へ行き、旗を受け取ります。

娘は、
うまくできなかったことを
悔やんでいました。
私と妻は娘を抱きしめました。

そういう緊張しがちな娘なのです。
ただ、
元来、頑張り屋さんなので、
なんとか乗り越えようと努力や工夫をします。
なので
自分なりに全体を把握できると
緊張も少ないらしく
同級生よりも覚えや成長が速かったりします。
そしてそれを楽しめる力もあります。
なので
乗り越えた時はこう言います。

「よく頑張ったなぁ！　
　今の感じ覚えておけよ！」

特に、
自分で決めて、
自分で立ち上がって、
自分で結果を出したときは、
全力でそのように言います。

今、プールに通っているのですが、
そこでも
新しいプログラムが始まると
なんだか不安になるようで、
いろいろと理由を付けて
泣きながら行かないときがあります。

ある昇級検定の日も
泣き始めました。
このまま行かないのだろうか、
と思っていたら
スッと立ち上がり、
「行くわ…」
と。

で、
難関の検定を合格し、
また級が上がりました。

５級と書いてある
ピカピカのワッペンを手に、
娘は空を見上げて
つぶやきます。

「よし、この感じ覚えておこ」

小さい声だったので
「なに？　なんて言った？(笑)」と、
からかうと、
ニヤニヤしながら、
「うるさい！　聞くな(笑)」と

小３ながら、
何かを掴んだのでしょう。
そうだ、
何かを掴むことだ！
それが人生だ！

グラウンドの中央の娘も、
空を見上げる娘も、
私たちの娘。


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