オレはもうすっかり老いぼれてしまった。
この家で過ごせた16年間は実に幸せな日々だった。感謝している。
ただ、一つだけ赦せないことがある。
それを伝えようとして、この話を書いてきたのではないか。
オレにはほんとにかわいい彼女がいたのだ。
この家に連れてきたこともある。茶色い毛の娘だ。
お父さんもしろみさんも、トムの彼女だと言ってご飯を出して
くれた。
それなのに、
この家に来る「台風一家」のために死んだのだ。
あの「台風一家」はよくこの家にやってきた。
突然例のごとく車5台で乗り付けて来る。
夜中でも早朝でもやって来ていた。これからもあるだろう。
オレたちは最大13匹いたころでさえ、一家がやってくると
恐れをなして皆で山などへ逃げた。
だが、彼女は一家への対処を知らない娘だったから、オレの
居ないときに訪ねてきたのか、一家が去ったあとに傷ついて
倒れていたのだ。
「一家」の中のだれかが彼女に花火を投げたらしい。
災いをもたらす一家だ。だから台風なのである。
死ぬまでに赦せないことがあるというのは辛いことだ。
「ファントム」でも「台風」にはお手上げだ。
オレの名はファントム・ジ・オピラなのに。
この家で過ごせた16年間は実に幸せな日々だった。感謝している。
ただ、一つだけ赦せないことがある。
それを伝えようとして、この話を書いてきたのではないか。
オレにはほんとにかわいい彼女がいたのだ。

この家に連れてきたこともある。茶色い毛の娘だ。

お父さんもしろみさんも、トムの彼女だと言ってご飯を出して
くれた。
それなのに、
この家に来る「台風一家」のために死んだのだ。

あの「台風一家」はよくこの家にやってきた。
突然例のごとく車5台で乗り付けて来る。
夜中でも早朝でもやって来ていた。これからもあるだろう。
オレたちは最大13匹いたころでさえ、一家がやってくると
恐れをなして皆で山などへ逃げた。


居ないときに訪ねてきたのか、一家が去ったあとに傷ついて
倒れていたのだ。
「一家」の中のだれかが彼女に花火を投げたらしい。
災いをもたらす一家だ。だから台風なのである。
死ぬまでに赦せないことがあるというのは辛いことだ。

「ファントム」でも「台風」にはお手上げだ。
オレの名はファントム・ジ・オピラなのに。