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家族の応援歌

相談活動・短歌・シャンソン

ブログ書き下ろし小説 オレはトムだ  −17

2016-06-29 21:21:56 | 作品
今年のプラムはたくさん実った。

なんだかオレの3回忌などと言ってくれてこそばゆい。
オレをまだ覚えていてくれているんだなあ。

オレは5月にこのプラムの木の下に埋めてもらった。
去年はこっちの世界に慣れるのに忙しく、プラムにエネルギー
を使えなかった。

今年はたくさん実をつけたぞ。オレも面目保てた。

おとうさん しろみさんいっぱい食べてね。

つんこは元気かな。まるつぶのごはんばかりねだって魚を食べず
おうちのひとを困らせているのではないかな。

ブログ書き下ろし小説 オレはトムだ  -16

2016-05-21 23:55:46 | 作品
何しろ、お察しの通り、この話はブログの性質上、

終わりから書いているので、書きにくくてやっかい

なのだ。

あとへ行けば行くほど始めになるようにしている

ので、今日はマイナス16回ということ。

あ、オレはトムである。正式な名はファントム・ジ
オピラだ。(と、毎回言わなければならない)

オレの妹とその家族の話をしよう。

妹は母の毛並みと似て灰色だったので、しろみさんが
モカと呼んでいた。賢い妹だった。

身体の弱い母がオレを追い出したあと早くに亡くな
ったので妹がこの家の領地をもらったのだった。

この妹が母になった。真っ黒い姪子が生まれた。

身体も黒だが、尻尾も黒雲のように広がりふさふさ
している。モカの娘でモクとなったが、しっぽがモク
モクしているからに違いない。それで充分だ。

父親は外国から来た雄のようだ。そういえば、この
へんでは今まで見たこともない雄が最近闊歩していた。

妹はあんな奴に惹かれたのかと不思議だった。

そのへんの事情はともかくとして、そういうわけで、
どうも気心のよく知れない姪子だ。

お父さんがご飯をくれても、しろみさんがご飯を出し
てもどのお椀にも顔をつっこむのでお手上げだ。

身内として、恥ずかしい!

モクは早々と子を産んだが、産んだ子のめんどうもろく
にみない。
オレが時々訪ねては遊んでやっているのだ。

モクは、子のお椀にまで顔をつっこむ。

「おまえの茶碗は、こっち!」と、年中しろみさんに
頭を動かされている。

けれど、モカは娘を追い出すでもなかった。オレは母に
追われたのに。

そのうち、モクは図に乗って親に牙を見せるようにさえ
なったのだ。逆じゃないか。

いつの間にか親のモカが出て行ったよ。オレは顛末を、
山の上から見ていた。

妹は立派な雌猫だったから、馬鹿な娘に領地を譲ってや
ったのだなあ。自分ならまだ新地を開拓できると思った
のさ。さすがのモカだ。

オレは丈夫な方だが、妹は母に似て少し身体が弱いとこ
ろがあったのでオレは心配した。山でも見かけなかった
なあ。あれきり会ってないのだ。























オレはトムだ  -15

2016-05-17 22:09:46 | 作品
オレはトムだ。正式な名はファントム・ジ・オピラだ。

母がつけてくれた名ではなく、しろみさんがつけてくれた。

母はオレのことを#*”*#と呼んだ。なつかしいなあ。

これは猫語だから人間にはわかるまい。

とっても甘く甘くやさしく呼んでくれたのだ。

オレは母の寝床で兄弟・姉妹とぬくぬく育ったのだ。

それなのに、ある日突然 母が歯をむき出しオレを追い払っ
たのだ。

確かにオレは充分、男に育っていた。

この5月のすみれの季節になると思い出すのだ。

しろみさんはすみれのお母さんは自分の周りに子どもを育て
守ってすばらしいなどと、以前ブログとかに書いていた
             

この小さい子たちはどう育つのだろうかだと?


とんでもない!育つはずがないではないか。

すみれのおかあさんの正体は恐ろしいのだ。

母ちゃんの葉はこれからぐんぐん伸びるのだ。

オレは毎年見て知っている。だいたい、すみれのはびこる所
とオレの昼寝の場所が一緒なのだ。

つまり、初夏に欲しくなる涼しい木陰だ。

そこで見るすみれのお母さんは、自分の周りに芽生えた子供
たちは全て自分の肥やしにしてしまう。

あっという間に1本残らず子供は親の葉の影で枯れ尽くし土
になってしまうのだ。
          


オレたちはそういうことで理解する。

母ちゃんの下にいてはいけないのだ。

すみれの芽も母ちゃんが思い切り首を伸ばして種を飛ばしたやつ
だけ生きられるのだ。

オレはすごすごと?いや、胸を張って家を出た。






オレはトムだ   -14

2016-02-15 19:37:10 | 作品
オレの棲家にはよくイノシシがきた。

ここの「お姫様」が元気なころ、よく
イノシシをかわいがっていたのだ。

イノシシは田畑を荒らし、芋も完食し
山の筍も食ってしまう。

だから、村人はイノシシにはうんざりだ。

イノの方ではそんなことにはおかまいなく

夕暮れともなると畦道を人間と一緒に歩い
たりしてくるのだ。

今は寝たきりの、ここの「お姫様」は、昔
イノをかわいがり、山から下りてくるのに
餌を置いていたとか。

オレたち猫族はそのイノの後裔に悩まされ
続けているというわけ。

誰もイノを受け入れられるわけじゃない。
姫様の気まぐれ溺愛の結果のイノが今だに
山を下りて庭に来るようでは、おちおち
寝てもいられない。

しろみさんが可愛がっていた黒猫2匹。
ジャックという名とサンマという名だった。

まだ、子どもだった。特にジャックは頭が
よく、すぐに自分の名を覚えて、しろみさん
の手からおいしいものをもらっていた。

ある日、イノシシ狩りの猟犬が2匹、山から
裏庭へ下りてきて、あっと言う間に黒チビ
2匹の喉を噛み裂いた。

そんな哀しい事件もあったなあ。

お父さんは2匹をプラムの木の下に葬った。


しろみさんはこの家に来るとジャックの成長
を楽しみにしていたので、がっかりした。

しろみさんはどの猫にも名をくれたので、自分
の名をすぐ覚える賢いやつが好きだった。

オレもすぐ、覚えた。
オレの本当の名はファントム・ジ・オピラだ。











オレはトムだ-13

2016-02-06 23:09:03 | 作品
砂糖とかでできたスズメとやらで、人間はかわいいかわいいと

飾ったりしているようだが、オレたち猫はだまされやしない。

「気配」が違うのだ。

白猫つんこは鳥の気配を感じると、全く別人いや別猫になり、
戦闘体勢に入る。

オレはあまり狩りは得意ではない。

ただ、スズメがこんなふうに長閑(のどか)でいる風景が好きだ。

茶毛の彼女が遊びに来て一緒に眺めてなんかいられたら最高だ。

そんな長閑なこの家を乱すのが「台風一家」だ。

この家のお父さんには弟たちがいる。それが車5台でやってくる。

お父さんが「お姫様」の世話をしているところへ、突然嵐のように
遊びにやってきて、日がな家の中を駆け回り、去っていく。

まるでロバの群れだ。

だから、オレたちは一斉に「避難」し、夕方まで帰らない。

自分の家なのに、時として落ち落ちいられんのが困りものだ。にゃん。