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家族の応援歌

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ブログ書き下ろし小説 オレはトムだ  ー22

2016-09-17 22:26:09 | 作品
オレはトムだ。フルネームはファントム・ジ・オピラ。

オレが産まれたころ、しろみさんが家へ来て

チャララララーン チャララララーン♪ ♪と
歌っていた。

なにやら四季のファントム・ジ・オピラが始まったとか。
オレが似ていたらしい。 

妹は薄灰色の毛並みで「モカ」。妹の名もいい名だな。

オレはここで生まれ、ここで育ち、最期はここで終わる
ことになった。

ふつう、雄猫は家を出て外へ行くのだが、オレは珍しく
いずれ、この家へ戻ってくる運命になった。

まあ、そんな奴も一匹くらいはいていいだろう。

そんなわけで、オレの家族や、この家の人間模様などを
語りたいなどと思うようになったのである。

ブログなので、この回が始まり始まり。全22回のスタ
ートにあたるから、マイナス22回なのである。

オレをモデルに小説を終わりから書くとは、しろみさん
も難儀なことであった。

全22回が終わっているので、今から読んでくれる人は
順にたどって読んでくれれば、最後はオレの最期で終わ
っているので、よろしくたのむ。

今日で、一応完結となる。みんな読んでくれてありがと
う。

このあとは、書き足りなかったところを入れて、
『嬢ちゃん』と同じように形にしてくれるらしい。オレ
はうれしい。生きた甲斐があった。この家に生まれて
よかった。ニャーン。

オレは今日かあちゃんに連れられてごはんの場所に行って
名をもらった。

「みてみて!!仔猫2匹連れて来た!!かわいい!!
 名前あげよう!!わあ、おまえはファントム・ジ・オピ
 ラだよ」

 



 

ブログ書き下ろし小説 オレはトムだ  -21

2016-08-28 00:01:15 | 作品
オレの母は素晴らしい母だった。

体があまり丈夫な方ではなかったが、オレたちを

一生懸命育ててくれた。

オレはまだ少年の頃は家にいられた。

母はオレの妹たちを産んで育てていた。

母の姿が見えなくなったと思いきや、お産をして
いたんだな。

時々ご飯を食べに来てはすぐどこかへ行ってしまう。

乳をやりに行っていたんだな。

もう、オレや一緒に産まれた妹もかまってはもらえ
なかった。

そんなある日、母はそれはそれは小さいやつらを引
き連れて、ご飯を食べにきた。

というより、初めてご飯を食べさせに来たんだな。

オレたち大きい兄弟は飛び上がった。

なぜなら、母の厳しい顔を見たからだ。

オレたちは後ずさった。お預けだ。

猫の世界では、一番小さい者にご飯の場所を譲るとい
うことを学んだ。


チビたちがご飯を食べるのを、母はじっと座って見守
った。

そうして、そのあとで自分もささっと食べて引き連れ
て行った。

やれやれ、オレたちの番だ。

この順番の掟を破ってはならぬ。母はオレたちのこと
もこうやって守って育ててくれたにちがいない。

あのチビたちにも、近々しろみさんが名前をつけてくれ
るだろう。オレにいい名をつけてくれたように。

オレはファントム・ジ・オピラだ。










ブログ書き下ろし小説『オレはトムだ』  -20

2016-07-17 21:39:55 | 作品

この写真はビーちゃんだ。

この家で産まれた仔ではない。

オレがこの家に戻って来て独り猫でいたとき、
どこからかやって来たのがつんことビーちゃんだ。

それこそ野良猫だったから、鋭い目をしているだ
ろう?


つんこだって最初はこんな目をしていた。

お父さんとしろみさんがご飯を出してくれて、
だんだん馴れてきたんだ。

つんこは今や、しっかりじゃれて、そんなときは
軽く噛んだりできるんだ。

ビーちゃんは可愛がってくれるのがわからず、鋭
い爪をサッと出すときがある。

まだまだ子供だからな。

しろみさんはよく手を切られていた。人間は手を
退いてしまうからキズが深くなってしまうんだ。

ビーちゃん、いいかげんにわからないとだめだよ。

本気で爪出したり、噛んだりしちゃだめなんだ。

いつまでもわからんと、お馬鹿だと思われたりす
るぞ。

そして、ビーちゃんなんていう名前になったりする
んだ。

AKB48とか流行ってたりしたからかなあ、

君のこと、しろみさんは

BAKA14とか呼んでたぞ。14年にうちに来
たまではいいのだけれど・・・

オレたちは利口でないと生きていけないのだ。
車という怖いものも避けないといけない。

ビーちゃんはいつのまにか姿を消したなあ。


ブログ書き下ろし小説 『オレはトムだ』  -19

2016-07-17 00:37:46 | 作品


つんこ、おうちに入れてもらえないからって
うらむじゃないよ。

ビーちゃんと二匹でいつまでも網戸の外で待
っていてもだめだよ。藁の寝床へ行こう。

このおうちには昔、年寄るまでおうちの中で
飼われていた先輩がいたんだってよ。

お父さんがまだ子どもの頃、お産のめんどう
みてくれたり、いっしょに寝床に入れてくれ
たりしていたらしいよ。

しろみさんだって子どもの頃、黒猫と一緒に寝
ていたらしいよ。

だから、お家に入れないには事情があるんだ。

おうちが夜、真っ暗な日が必ず何日かあるだろ
う?おうちにいたら出られないじゃないか。

つんこは狩りがうまいから、お父さんが留守の
ときは自分で生きていけばいいんだ。

お父さんは必ず帰ってきてくれる。

オレもすっかり信じられるようになったのだ。

お父さんが留守の間はオレがこの家の周りを歩
いて守っているのだ。

なんといってもオレはここで生まれたのだから。

オレの名はファントム・ジ・オピラだ。

ブログ書き下ろし小説 『オレはトムだ』  -18

2016-07-16 00:32:31 | 作品
「うちの野良猫」とよくお父さんは言った。

「うちの野良ね」とまわりの人間も笑った。

確かにオレたち一族はお父さんのうちに飼われている
野良猫であった。

もっともお父さんの家には裏もあり、小屋もあり納屋
もありオレたちが寝る場所に困らないから、オレたち
はこの家の猫として胸をはっていいわけではある。

ただ、一度だけお父さんがオレを家に入れてくれたこ
とがあった。

オレだけ家猫とやらにしてくれようとしたのか、お父
さんが寂しかったのか。

玄関の網戸の中に入れて、座敷に上げてくれたのだ。

そのとき、家にお姫様が寝ているのがわかった。

広い部屋にベッドがあり一日中寝ているひとがいた。

お父さんはそのめんどうを看ていた。

朝着替えさせ、食事を出し 風呂に入れ、夜寝かせて
いた。「母ちゃん・母ちゃん」と言ってたな。

お父さんの奥さんの、しろみさんが時々やってきては
お父さんとお姫様においしいご飯を作っていた。

もちろんオレにもめじなを煮てくれた。

オレもお父さんもしろみさんの来るのが待ち遠しくって
たまらなかった。

たまにお父さんがお姫様をどこかへ預けて、車でしろみ
さんの働いている街へ行くらしく夜が三つ終わるまで帰
って来ない。

だから、オレたちは家猫になれなかったのだ。
サバイバルで生きていけなければならない。

それだけれど、ただ一度だけオレを家に入れてくれた。

そのあとで、しろみさんの足にたくさんの虫刺されがで
きたとき、お父さんはオレに言ったのだ。

「やっぱり家に上げられないや。ごめんな」

オレが蚤をたっぷり家の中に落としたらしい。

仕方ないな。

でもあの畳の上に寝る夢のような暮らしは忘れられないな。

一度でもよかったよ。お父さんありがとう。

オレ、ファントム・ジ・オピラはご恩は忘れないのだ。