Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

辞任の美学

2005年01月08日 13時34分58秒 | クライシス
辞めるの、辞めないの海老沢会長。

1月7日の新聞各紙は一斉に会長辞任の新聞辞令を出したのに、NHKの広報はこの件について沈黙を守っているそうだ。
この経緯については、8日のサンケイ新聞朝刊が 沈黙守るNHK 会長辞任示唆 真意不明“異様な展開” という興味深い記事で次のように報じている。

「平成十七年度の事業計画と予算をきちっとしてから、私自身の判断で身の処し方を判断する」
 六日の会見での言葉は、先月十九日の特別番組「NHKに言いたい」で自らの進退に触れたものとほぼ同じだった。だが記者団との受け答えでは、「辞める気は全くない」としてきた従来の強気は海老沢会長の表情から消えていた。
 「(来年七月までの)任期途中の辞任はあるのか」との問いに、「任期ってあと一年半あるんですね。ですから、まあ、任期…。そう言うと、また記事になっちゃうから」と苦笑しながら、言葉をにごした。
 海老沢会長の口からはこの日も最後まで「辞任する」という言葉は出なかった。しかし会見後、NHKの一部幹部が「辞任示唆と受け止めざるをえない」と認めたこともあり、記者団の判断はその方向に傾いた。


同じ記事によると、追加取材に対して経営広報部はNHKが辞任示唆を報道しなかった点について、「そもそもNHKの報道スタッフは会長会見(の会場)に入っていないから」と説明。「会長の記者会見での発言に経営広報部がコメントすることはあり得ない」と言っているそうです。また、視聴者からの反響については「まとめていない」とのこと。

海老沢会長が従来どおりの発言をしたのに、それが辞任表明と報道されてしまい、肯定も否定もかなわず驚き戸惑っている経営広報部の様子が眼に浮かぶ。
まっとうな広報担当者なら、
「いままでどおりの見解を申し上げただけで、それ以上でも以下でもありません。」とか、
「突然の辞任報道に戸惑っております。具体的に辞任に言及した事実はありません。」
ぐらいのコメントを出し、ひとまずの沈静化を図るのが定石だ。
もしかすると経営広報部は、これ幸いと辞任の流れの定着化を狙っているのだろうか?
まさか海老ジョンイルが怖くて竦みあがっているなら、広報としての役割を果たしていないと思うが・・・・。

さて、特別番組「NHKに言いたい」の圧倒的な不評、紅白の視聴率の低落、磯野克巳チーフ・プロデューサーの更なる着服の発覚、止まらぬ受信料の拒否・保留の増加、加えてNHK社会部OBである柳田邦夫氏が「週刊文春」1月13日号に「NHK海老沢会長が辞めるべき10の理由」と題した辞任勧告を寄稿するなど、アゲインストの風は吹きつのり、海老沢包囲網は確実に狭まりつつある。
おそらく海老沢会長は自らの辞任と引き換えに17年度予算の成立を果たそうとしているのだろうが、到底それまで持つとは思えない。
ひとたび辞任の流れができたとなると、あらゆる抵抗を押しのけて、辞任圧力が奔流のように押し寄せるからだ。
前任のシマゲジ会長の辞任劇もそうだった。
雪印の石川哲郎社長も、辞任奔流により、それまで表明していた時期を前倒しし辞任、入院してしまった。
かつて海部首相は、解散を意味する「重大な決意」ということばを不用意に用いたばかりに、辞任奔流が生まれ、心ならずも退陣せざるを得なかった。

正月以降の動向を眺めると、7日の報道を契機に辞任奔流が発生したと判断せざるを得ない。
海老沢側近に潮目を読んで辞任を勧奨する知恵者はいないのか。
既にレームダック状態に陥ったかに見える海老沢会長の辞任が一日遅れれば、NHKの経営に1日の停滞が生まれる。
最後の期待は経営委員長の強権発動である。
シマゲジの前任である池田芳蔵会長は、老害が極まったとして、当時の経営委員長の磯田一郎により解任されたという歴史がある。
はたして、経営委員会の石原邦夫委員長はまっとうな判断ができるのだろうか。




2 コメント

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Unknown (ガ島通信)
2005-01-08 18:18:15
ガ島です。コメントありがとうございます。今年もよろしくお願いします。また飲みましょう。

新しく記者ブログ(http://newsnews.exblog.jp/)が増えました。嬉しい限りです。
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Unknown (まさくに)
2005-01-09 19:01:10
何度もTBさせて頂いてます。また宜しくお願いします。

辞職もので、結びに桜の例えを書いたら、先日の読売の編集手帳にも海老沢辞職に絡んで、桜の話が出ました。偶然とは思いますが。

早く辞めて事態収拾を付けた方がよいと思いますね。
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