Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

シンドラーのリフト

2006年06月10日 09時19分34秒 | クライシス
エレベータのシンドラー社。
マスコミ対応を間違えているようだ。

6月3日、都立小山台高校2年市川大輔さん(16)が自宅のある港区の区民向け住宅「シティハイツ竹芝」のエレベータから降りようとしたところ、扉が開いたままエレベータのケージが急上昇し、市川さんはエレベータと天井に挟まれて死亡した。
その後明らかになったことは、これまでも同社製のエレベータでかずかずのトラブルやインシデント(軽微な事故)が起きている。
共同通信が7日に配信した記事は、見出しに「270件昇降機トラブル シ社製、17都府県で」と掲げている。

危機管理でよく取り上げられる『ハインリッヒの法則』は、ひとつの大事故の背後には29の軽微な事故があり、さらに300のトラブルが存在するというものだ。
この数字が統計的に証明されたものではないが、経験則として社会的に受け入れられている。
この経験則を実務に取り入れ大きな成果をあげたのが、ジュリアーニ前ニューヨーク市長の『破れ窓理論』壊れた窓をそのままにしておくと街の荒廃を招くとして、地下鉄の落書きをきれいにしたり、路上に置き去りにされた廃車を撤去するなどの地道な活動を積み上げ、ニューヨークの治安を回復した。

シンドラー社は自社製のエレベータの不具合を的確に把握し、その不具合の改善の努力を積み重ねていれば、今回の不幸な事件を未然に防げた可能性がある。
しかしながら、どうもシンドラー社は自社が保守点検契約を結んでいないエレベータについては、保守責任だけでなく製造責任についても回避しようとしているかに見える。
それもあるのだろうか、シンドラー社は見解をリリースで公表するのみで記者会見に応じようとしないし、住民説明会への参加も回避し、アナグマのように鳴りを潜めている。
おそらく、この事件の原因は保守のしかたに原因があると言いたいのだろう。

マスコミの前に出ようとしないシンドラー社に業をにやしたマスコミは、シンドラー社を標的に定め、国内外のエレベータのトラブルや企業概要、経営者の素顔などの取材を開始した。秋田の米田豪憲くん殺害事件が一段落した今、メディアスクラムに巻き込まれるのは疑いなくシンドラー社だろう。
シンドラー社はディシジョンを間違えている。
『法的リスク』を回避しようとするあまり、『イメージリスク』を増大させてしまったのだ。
ここから立ち直る方法はただひとつ、スイスからシンドラーホールディングスのトップが来日する機会にあわせ、その方針を転換することだ。
彼が従来のスタンスを継続するならば、今後シンドラー社に残された道は日本からの撤退以外にないはずだ。




がんばれ乙部綾子さん

2006年01月17日 07時15分27秒 | クライシス
ライブドア本社への東京地検特捜部の強制捜査は、18時半の立ち入りから早朝までかかった。
ライブドアニュースによると、堀江社長自身も「午後6時40分ごろ捜査令状を見せられ、メーンのパソコン一台と関連書類を押収された。」という。

特捜部の狙いは何なのだろう。
容疑は、ライブドアマーケティング(旧:バリュークリック)に関わる偽計取引と風説の流布だというが、強制捜査の力の入れ方から見て、敵は本能寺と見るべきだろう。
ダイナシティの買収にともなう広域暴力団とのかかわりをはじめ、黒い噂はいくつか耳にしている。

寝耳に水のクライシス勃発にあたっては、広報の役割は重要である。
対応の原則は2つ。
ひとつは「クイックリー&オネストリー」。
その点早朝7時から記者会見し、質問を打ち切らず質疑に答えた堀江社長の対応は、クイックリーの観点からは一応合格である。ただし、報道されている疑惑に対して正面から答えることを避けたことは、オネストリーの面で疑問を残した。
もうひとつは「企業内部の価値観より、社会の価値観に軸足を置くこと」。
名実とも捜査に協力することがまず求められよう。
広報を担当する乙部綾子さんの真価が問われる局面である。


JR西・南谷会長、関経連副会長を辞退へ

2005年05月07日 21時40分57秒 | クライシス
ようやく判ったか。
というのが率直な感想である。

>事故直後には、南谷氏は「(事故への対応で)関経連の活動に割く時間を減らしても
>(関経連に)迷惑にはならないと思っている」と述べ、副会長職を続投する考えを漏らしていた。

関経連については、秋山会長(関西電力)の原発事故に頬かむりしての居座りに続き、南谷副会長までもかと信じられない思いで見ていた。

「この危機を乗り切ることが私に課せられた使命」という見苦しい勘違いコメントと、「出処進退は本人が決めること」という訳の判らないフレーズで、政界でも経済界でも潔い出処進退が失われて何年になるだろう。

責任者が職を辞すからこそ、組織に緊張感が漲り、組織風土を革めるのだというあたりまえの事実を今一度再認識すべきではないだろうか。

南谷会長が見苦しいのは、関経連副会長は辞退したものの、JR西日本の会長にしがみつこうとしているところである。
この点は垣内剛社長も同じ。
サンケイ新聞の報道によると、6日未明のボーリング問題を巡る記者会見でも、

>亡くなった方へのおわびとお悔やみ、けがをした方へのお見舞いに全力を挙げて取り組んでいる。
>再発防止、安全問題を中心に生まれ変わったJR西日本を見せること、それが責任を果たすことと思っている。

と垣内社長が語っている。

南谷会長、垣内社長。
あなたがたが辞めない限り、マスコミのJR西日本批判はとまりませんよ。



嵐のときこそ、へさきを風に向けよ。

2005年01月15日 02時07分49秒 | クライシス
今日の「週刊!木村剛」のエントリーの末尾に、「トラックバック選択的削除宣言」と読み取れる表現があった。

なお、これまで「週刊!木村剛」は、あらゆるトラックバックは削除しない方針を採っておりましたが、残念ながら、世の中には基本的なマナーすら弁えずに、「検事の視点」でしかコメントできない方々がいらっしゃるということも確認できました。色々と考えましたが、今後は、歪んだ「検事の視点」からコミュニティを荒らしにこられる方々のトラックバックについては原則として削除する方針で臨んでいきたいと思っております。

ぼくの書いた「検事の視点」は、そういう意味じゃないんだけれど、まあ、それはひとまず置いておこう。

問題は、ここでの「トラックバック選択的削除宣言」が、木村さんにとって「損」か「得」かということだ。

日本振興銀行の社長に就任されて、木村さんの立場はこれまでと様変わりした。
これまでは、木村批判に対しては木村さんが立ち向かえばよかったが、これからは木村批判が日本振興銀行のビジネス上のリスクに直結しかねない。
落合氏、切込隊長と続いたアンチ木村の動きは、今後も折に触れ頭をもたげるだろう。
「トラックバック選択的削除宣言」は、一見リスク遮断のためのファイヤーウォールの役割を果たすかに見える。
しかし、どうだろうか。

アンチ木村剛を意図するブロガーが、悪意のトラックバックを送り、それを皮切りに誹謗中傷キャンペーンを展開するケースを考えてみよう。
木村さんがトラックバックを削除した後で、同時多発ゲリラ的に祭りを仕掛けたとすると、木村さんはブログという有効な反論の手段を封じられることにならないだろうか。

自ら削除したトラックバックに対する反論を、自らのブログで展開したら、口さがない善意の第三者ブロガーは、
「トラックバック選択的削除宣言」を、
「トラックバック恣意的削除宣言」として受け止めるだろうと思う。
一旦その認識が広がった途端、木村さんの反論にいかに説得力があろうと、中身に耳を貸さない批判の怒涛が襲い掛かる懸念がある。
結論として、いかに悪意に満ちたトラックバックであろうと、それをそのまま置いておくことが、反論の権利を留保することにつながるはずだ。
「トラックバック選択的削除宣言」は木村さんにとって「損」だとぼくは思う。

日本振興銀行を軌道にのせるため、この半年ぐらいは勝負の時期だろう。
悪意の誹謗中傷も、無責任な揣摩憶測も、嵐となって襲いかかるかもしれない。
嵐の中で、風に横腹を見せてはいけない。風にへさきを向けてこそ嵐を乗り切ることができるのだ。






在外公館は変わったか?

2005年01月10日 11時45分33秒 | クライシス
団藤保晴氏のブログ時評で知ったスリランカ津波被害者の手記

「私は自分のバンガローのベッドサイドにおいてあった、カシオの完全防水の時計をしっかり握り締めたままだった。この時計と上下別々の水着以外はすべて流されてしまった。」

ウナワトゥナのビーチ(コロンボから約120キロ離れたスリランカ南西部のリゾート)で津波の直撃を受け、パスポートや現金・カードを含め持ち物の一切を失ったこの女性は、被災直後は怪我人の救急措置に挺身した後、2日かけて首都コロンボにたどり着き、日本大使館でパスポートの再発行を申請する。

「するとパスポートの再発行には10250ルピー(約1万円)が必要でお金は貸せませんというではないか。愕然とする。津波より怖い日本大使館!
とにかく私は何もなくなってしまって、この洋服ももらいもので、お金もぎりぎりバス代があるだけなんだということを伝えるしかない。
私はインドに住んでいるから、インドに帰ればすぐにお金も返すことができる。どうか貸して下さいと何度も頭を下げてお願いする。」

(中略)

「ロビーに誰もいなくなって一人で待っている間も涙がぽろぽろ出てきて困った。セキュリティのスリランカ人がどうしたのか?と小さな声で聞いてきたので、津波で全部なくなってしまった。2日かけてウナワトナからキャンディ、コロンボにたどり着いたけど、お金を貸してくれないといっている。お金がないとパスポートも再発行できないし、お腹も減っていて疲れていると答えた。悲しいというよりも惨めだった。」


日本の在外公館の相変わらずの対応に暗澹としてしまう・・・・。
救いは、大使館ロビーで一夜を明かした翌日、須田明夫大使と思われる人物が現れるに及び、待遇が漸く好転したということだ。
須田大使をググルと、JICAの総務部長務めた方のようだ。

「大使館を出るとテレビ東京のインタビューがあった。
私はそのスタッフの方々に助けられた。エアラインのオフィスやインド大使館に車で送ってくれたり、彼らのホテルで休憩もさせてくれた。この場を借りてもう1度お礼を言いたい。本当にありがとうございました。
そして、そのおかげで使わなかった200ルピーはホテルにあった災害救助の寄付金箱に入れた。」


ふーん、ご本人の直後の映像が残っているようですね。>テレビ東京さん。


さて、私が悲しく思うのは、まったく改善しない在外公館の対応のまずさだ。

・未曾有の災害の中、被災地には助け合いの精神が生まれている。この被害女性も自らの被災にかかわらず、現地で救急措置活動に粉骨砕身している。なんで日本大使館の対応にはやさしさのかけらも感じられないのだろう。

・眼の前に、水着にわずかな衣料を羽織っただけ(?)の着の身着のままの女性が立っているのだ、当人の状況を思いやろうとの発想はないのだろうか。

・在外公館の重要な任務のひとつが邦人保護であることをどのように受け止めているんだろう。まさか、津波被害にあったのは被害者の「自己責任」と考えているのではないでしょうね。

・そもそも大惨事の2日後だというのに、邦人保護のための対応が出来ていないかに見えるのはなぜなんだろう。正月休みで人員が少なかったとしてもそれは理由にならないだろう。


瀋陽のハンミちゃん事件や北朝鮮の拉致問題で露呈したのは、外務官僚の人権意識の希薄さだった。
公金詐欺事件で明らかになったのは、予算を湯水のように私的に流用して恥じない、外務省高官のさもしい体質だった。
そして、海外の日本大使館の一般邦人に対する冷たさは、かねてから耳にしていることだ。
例えば、傷ましいことに毎年何人かの留学生や旅行者、駐在員などがアメリカで銃の犠牲になっている。94年に最愛の子息をニューヨークで失われ、それ以来銃廃絶のため「ストップガン運動」の先頭に立っている砂田向壱氏によると、銃で撃たれたとの領事館から家族への第一報は、コレクトコールでくるという。受信を拒否したら連絡しないということなのかしら。
国際電話代ぐらい、大使や総領事のシャンパン1本倹約すれば、年間費用が出そうなものなのに。

そんな外務省の体質改善を図るために、川口前外相は「変える会」なる、名前からは目的意識のうかがえない第三者の組織をつくったのではなかっただろうか。
参考のため、平成14年7月22日に出された、「外務省改革に関する“変える会”― 最終報告書 ―」を見ると、

XI.危機管理体制の整備

1.領事業務

(1) 政策優先順位の飛躍的向上【平成14年12月までに結論】

 外交政策と外務省の外交執行体制における領事業務と危機管理の政策優先順位を飛躍的に高める。その際、もっとも重要な任務が海外における邦人保護であることは言うまでもない。



お題目だけはちゃんと掲げられているじゃないの。
これが実効性を持つに至っていないということは、
やはり「ポン子」だったのだろうか、あの人は・・・・。

コロンボ大使館の対応に問題があったとして、他の大使館はどうだったのだろう。
バンコクの大使館からは、不幸にして吉野貞行一等書記官親子という犠牲者を出している。
ニューデリーやジャカルタは迅速な初期対応が出来ていたのだろうか。
情報があればお教えいただきたい。
私たちはせっかくブログという道具を手に入れたのだ。
ガ島通信さんが中越地震の際に、マスコミの取材活動の実態を地道に検証をされたように、
国民の立場から在外公館の活動を検証していく必要があるのではないだろうか。


辞任の美学

2005年01月08日 13時34分58秒 | クライシス
辞めるの、辞めないの海老沢会長。

1月7日の新聞各紙は一斉に会長辞任の新聞辞令を出したのに、NHKの広報はこの件について沈黙を守っているそうだ。
この経緯については、8日のサンケイ新聞朝刊が 沈黙守るNHK 会長辞任示唆 真意不明“異様な展開” という興味深い記事で次のように報じている。

「平成十七年度の事業計画と予算をきちっとしてから、私自身の判断で身の処し方を判断する」
 六日の会見での言葉は、先月十九日の特別番組「NHKに言いたい」で自らの進退に触れたものとほぼ同じだった。だが記者団との受け答えでは、「辞める気は全くない」としてきた従来の強気は海老沢会長の表情から消えていた。
 「(来年七月までの)任期途中の辞任はあるのか」との問いに、「任期ってあと一年半あるんですね。ですから、まあ、任期…。そう言うと、また記事になっちゃうから」と苦笑しながら、言葉をにごした。
 海老沢会長の口からはこの日も最後まで「辞任する」という言葉は出なかった。しかし会見後、NHKの一部幹部が「辞任示唆と受け止めざるをえない」と認めたこともあり、記者団の判断はその方向に傾いた。


同じ記事によると、追加取材に対して経営広報部はNHKが辞任示唆を報道しなかった点について、「そもそもNHKの報道スタッフは会長会見(の会場)に入っていないから」と説明。「会長の記者会見での発言に経営広報部がコメントすることはあり得ない」と言っているそうです。また、視聴者からの反響については「まとめていない」とのこと。

海老沢会長が従来どおりの発言をしたのに、それが辞任表明と報道されてしまい、肯定も否定もかなわず驚き戸惑っている経営広報部の様子が眼に浮かぶ。
まっとうな広報担当者なら、
「いままでどおりの見解を申し上げただけで、それ以上でも以下でもありません。」とか、
「突然の辞任報道に戸惑っております。具体的に辞任に言及した事実はありません。」
ぐらいのコメントを出し、ひとまずの沈静化を図るのが定石だ。
もしかすると経営広報部は、これ幸いと辞任の流れの定着化を狙っているのだろうか?
まさか海老ジョンイルが怖くて竦みあがっているなら、広報としての役割を果たしていないと思うが・・・・。

さて、特別番組「NHKに言いたい」の圧倒的な不評、紅白の視聴率の低落、磯野克巳チーフ・プロデューサーの更なる着服の発覚、止まらぬ受信料の拒否・保留の増加、加えてNHK社会部OBである柳田邦夫氏が「週刊文春」1月13日号に「NHK海老沢会長が辞めるべき10の理由」と題した辞任勧告を寄稿するなど、アゲインストの風は吹きつのり、海老沢包囲網は確実に狭まりつつある。
おそらく海老沢会長は自らの辞任と引き換えに17年度予算の成立を果たそうとしているのだろうが、到底それまで持つとは思えない。
ひとたび辞任の流れができたとなると、あらゆる抵抗を押しのけて、辞任圧力が奔流のように押し寄せるからだ。
前任のシマゲジ会長の辞任劇もそうだった。
雪印の石川哲郎社長も、辞任奔流により、それまで表明していた時期を前倒しし辞任、入院してしまった。
かつて海部首相は、解散を意味する「重大な決意」ということばを不用意に用いたばかりに、辞任奔流が生まれ、心ならずも退陣せざるを得なかった。

正月以降の動向を眺めると、7日の報道を契機に辞任奔流が発生したと判断せざるを得ない。
海老沢側近に潮目を読んで辞任を勧奨する知恵者はいないのか。
既にレームダック状態に陥ったかに見える海老沢会長の辞任が一日遅れれば、NHKの経営に1日の停滞が生まれる。
最後の期待は経営委員長の強権発動である。
シマゲジの前任である池田芳蔵会長は、老害が極まったとして、当時の経営委員長の磯田一郎により解任されたという歴史がある。
はたして、経営委員会の石原邦夫委員長はまっとうな判断ができるのだろうか。




失墜し始めたワンマンボスの権威

2004年12月24日 16時46分33秒 | クライシス
海老沢@NHK、中内@ダイエー、堤@コクド、ナベツネ@読売・・・・・・。
いずれも一時代を築いたトップの権威が、今年、たてつづけに失墜していった。
これらの集中は、単なる偶然なのだろうか?
私は偶然ではすまされない大きな時代のうねりを、その背後に感じている。

これらのトップのいずれとも面識がないため、一般の報道や噂に基づく論評で恐縮なのだが、いずれも、人の話を聞くのが下手な共通点を持っているように見受けられる。
特に、社内においてその印象が強い。
NHKに対しては国会や総務庁、経営委員会がチェック機能を果たすべきだが、それが形骸化していることは先日の生番組「NHKにいいたい」で明らかになった。
ダイエーに対しては、株主も銀行も暴走を止められなかった。
コクドや読売に至っては、そもそも外部のチェック機能があるかどうかすら疑わしい。
どうも、外部の掣肘を受けることのないワンマンボスの経営する企業は、これからますます凋落の勢いを増すのではないだろうか。

終戦後間もない1946年の暮、傾斜生産方式を導入したことを手始めに、日本経済はその牽引力を企業に委ねてきた。
その結果、日本は世界史にも稀な短期間での経済復興、経済成長を成し遂げた。
高度成長を含め、戦後日本の発展は企業のがんばりの成果だといっていいだろう。
これを「企業イニシアティブによる社会の発展」と呼びたいと思う。

しかし、1989年の東京証券取引所での大納会で日経平均株価38,915円87銭をつけたのをピークに日本経済は長いバブル崩壊後のトンネルに入る。
それからちょうど15年。国内消費は冷え切ったまま推移し、企業はかつての牽引力を取り戻せないままでいる。
代わって主役として登場したのが生活者(消費者)だ。
サラリーマンは社畜のくびきを脱し、地域社会やNPOに参加しはじめ、
独身OLは独自の消費文化を謳歌し、
専業主婦も社会参加を始めた。
いまや、社会発展の原動力は生活者に移った感がある。
つまり「生活者イニシアティブ時代」の到来である。

「企業イニシアティブの時代」にあって、ワンマンボスの経営スタイルは決して珍しくなかったし、右肩上がりの経済成長の時代にはそれなりの効果を発揮した。
しかし、時代は「生活者イニシアティブ」に移り、生活者とのインタラクティブな対話を通じ、鋭敏なアンテナを伸ばすことこそが必要な時代に、ワンマンボスの経営スタイルでは、社会から取り残されることに他ならないのだろう。
社会の変化に対応できないばかりでなく、対話を拒むその閉鎖的経営が社会的批判を受けることにも直結することになってしまった。

「生活者イニシアティブ時代」の到来を理解しない経営者は、彼らばかりではない。
特に歴史の古い大企業に多く見られる類型である。
ワンマンボスの凋落が今年批判の洗礼を受けた彼らだけで終わるとは到底思えない。
「企業イニシアティブ型経営スタイル」への弔鐘が鳴り始めたと理解すべきと思うが、どうだろう。



受信料制度の限界

2004年12月22日 16時47分12秒 | クライシス
しぶといなぁ、海老ジョンイル会長。
番組中で辞任表明とのガセ情報が流れていたので、幾分は期待したのですけれど。
爽やかな出処進退を期待するほうが間違えだっていうことですね。
そもそも、政治家が「出処進退は本人が決めること」との逃げ口上を、ここ数十年使い続けてきたツケでしょうか。進退に関する美風がこの国では壊滅したとの感を抱く昨今です。
新しく経営委員長も決まったようで、経営委員会を実質的に機能させての自浄作用を期待したいところですが、おそらく、むなしい望みでしょう。

ぼくも会長は辞任したほうが溜飲はさがると思うけど、今のNHKが抱える問題は少しも片付かないんじゃないのかなぁ。
今、NHKが何種類の放送を行っているか知ってます?
なんと国内だけで10種類ですよ。

地上放送では、 
【総合テレビジョン】
【デジタル総合テレビジョン】
【教育テレビジョン】
【デジタル教育テレビジョン】
【ラジオ第1放送】
【ラジオ第2放送】
【FM放送】

さらに衛星放送では、
【BSデジタル衛星ハイビジョン】
【BS-1衛星第1テレビジョン/デジタル衛星第1テレビジョン】
【BS-2衛星第2テレビジョン/デジタル衛星第2テレビジョン】

このほかに国際放送では
【NHKワールドTV(テレビ国際放送)】
【NHKワールド・プレミアム(テレビ番組配信)】
【NHKワールド・ラジオ日本(短波によるラジオ国際放送)】
【NHKワールドのインターネット・サービス】

たしかに地上派デジタルへの移行期に当たりますので、総合テレビと教育テレビの波がダブっているのはやむを得ないと思いますが、これだけの波が、まともなチェックのないまま流されているのです。

「受信料ペイヤー」はどのようにして、【NHKワールドTV(テレビ国際放送)】をチェックすればいいのでしょうか。
そもそも、国内の契約者の受信料で国際放送を制作しオンエアすることはアリなんでしょうか。
際限なく膨張する費用をどこまでも受信料収入で支えられるのでしょうか。

災害時にはNHKの放送が有益だとか、NHK特集は内容が優れているとか、国民的行事である紅白歌合戦にペ・ヨンジュンが出演するか否かなど、総合テレビの番組内容を中心にNHKの必要性が語られがちですが、巨象の鼻の周辺だけでNHKを語っていいのかなぁと思います。

国民から受信料を集めて、会長以下の経営陣で極めて恣意的に予算が決められ、国会審議も経営委員会も十全にはチェックできていないというのが実態ではありませんか?
どうも、この経営形態は会長の首のすげ替えでは解決できないガバナンスの欠陥を抱えているように思えてなりません。

このままいけば、受信料制度が破綻することは眼に見えているように思うのですが、どうでしょう。


【追記12.23】

猫並さんからコメントをいただいた。
国際放送には受信料は使われていないとのご指摘。
不明を恥じますとともに猫並さんに感謝します。

とはいえ、受信料制度がサステイナブルでないシステムだとの思いは変わりませんけど・・・。

堤義明さん。ディスクローズのチャンスです。

2004年10月27日 16時35分37秒 | クライシス
台風23号、中越大地震と天災による大きな被害が重なる中、今また香田証生さんが誘拐されたニュースが飛び込んできました。
国会は相変わらず南野法相いじめが続いています。

堤さん、今こそ西武鉄道株の関連情報を根こそぎ公開し、再度陳謝するチャンスです。
いずれこのインサイダー疑惑は上場廃止や刑事事件に発展するでしょう。
堤さん自身も縄付きになる可能性が大きいです。
堤流経営はこれまで秘密のベールに隠されていましたが、今後ディテールにいたるまであからさまに報道されるはずです。
であるなら、報道の暴露競争の餌食になるより、自らディスクローズするほうが遥かにダメージが少ないことはいうまでもないでしょう。

マスコミ報道が天災とイラクに集中した今こそ、メディアスクラムの被害を最小にするタイミングです。
さあ、勇気をもってすべてを明らかにしましょう。


ライブドアの視点で野球協約を読むと

2004年09月19日 09時18分58秒 | クライシス
大西宏さんが、プロ野球経営者は、選手批判でなく、ファンが納得し共感する解決策を示すべきだと指摘するように、いまや対立の構図は、経営者対選手会から、経営者対ファン及び一般社会に移行した感がある。
今後、経営者は一般社会に対するアカウンタビリティ(説明責任)を問われ続けるだろう。
現在の焦点は次の2点だと思う。
1)パ5チームで来期ちゃんと運営できるのか。
2)新規参入の審査になんでそんなに時間がかかるのだ。

最初の疑問は、選手会の疑問でもあり、だからこそ来期のシミュレーションを要求したわけだが、経営者側は近鉄とオリックスの財務状況の開示でお茶を濁してしまい、説明責任を果たしえていない。
ファンは古田会長の「セ6チーム、パ5チームという状況はいびつだ」発言に共感している。

2番目の新規参入の審査については、ライブドアの立場で野球協約を眺めて見よう。

第31条 (新たな参加資格の取得、または譲渡、球団保有者の変更)
 新たにこの組織の参加資格を取得しようとする球団は、その球団が参加しようとする年度連盟選手権試合の行なわれる年の前年の11月30日までに実行委員会およびオーナー会議の承認を得なければならない。
 すでにこの組織に参加している球団が左記の各号のいずれかに該当するときも同様とする。
 ただし特別の事情がある場合は、実行委員会はこの期限を延長することができる。


第35条 (審査の手続き)
 実行委員会およびオーナー会議は、球団から第31条による承認の申請のあった事項にかんし、申請を受理した日から30日以内に申請事項にたいする決定を球団に通達しなければならない


素直に野球協約を読めば、9月末に申請すれば10月末までに実行委員会およびオーナー会議で結論を出さなければならないということだ。
もし、NOの結論が出た場合どうなるだろう。

第36条の3 (資格喪失の異議)
 実行委員会から参加資格喪失の決定を通告された球団は、この決定を送達された日から15日以内にコミッショナーへこの決定にたいする異議の申し立てを行なうことができる。


この異議申し立て条項は、「参加資格喪失球団」に関する条項で、「新参加球団」については該当条項がない。これが適用できるかどうかは微妙なところだが、門前払いを食ったなら、10月末日までに、即日異議申し立てと再申請を行い、拒否されたら仮処分申請を申し立てることで、世論の後押しを期待すべきだろう。
このあたりになってくると、世論の風向きを読んで政治家が介入してくることが考えられる。
サプライズ純ちゃんも何か発言しそうだし、浅野宮城県知事も黙ってはいまい。
人気取りの陣笠先生も動き出しそうだ。


ライブドアの申請上の瑕疵は球場問題。

第29条 (専用球場)
 この組織に参加する球団は、年度連盟選手権試合、日本選手権シリーズ試合、およびオールスター試合を行なうための専用球場を保有しなければならない。

第30条 (球場使用)
 所属連盟会長は前条による球場使用につき満足が得られない場合、実行委員会へ、その球団の参加資格の喪失の決定を要求することができる。


県営宮城球場は収容人員、28,600人。他球団と比較すると圧倒的に少なく、現状では日本シリーズやオールスター戦開催の要件を満たしているとは思えない。これを理由に拒否される可能性がある。


今回の問題の解決のためのボールは経営者サイドにあるといっていいだろう。
経営者サイドは、いままで述べてきたような状況を読み込みつつ、社会に対しアカウンタビリティを発揮することが求められているということだ。当面、以下の諸点に対する見解を明確に示さなければならない。

・本当に5チームで満足のいくカードが組めるのか。
・協約で30日と定められているのに、なぜそんな時間がかかるのか。
・新参加球団の審査基準は何か。

問題は、12球団でのリーダーシップ。
オーナー会議の権力者であるナベツネ氏は前面から退き、
傀儡とはいえ、形式的権威を備えた根来コミッショナーも責任を投げ出してしまうようだ。
権威も権力も空白になり、コンセンサス形成のリーダーを失った状況だ。

第7条 (職務の代行)
 コミッショナーが、病気その他の事故により、職務を行ない得ないとき、あるいは死亡または退任し、その後任者が決定されないときは、実行委員会が代行機関を設置する。


第13条 (構成)
 実行委員会はこの組織に属する連盟会長各1名と、それぞれの連盟を構成する球団を代表する球団役員各1名を委員として構成する。
[実行委員会の構成に関する実行委議決事項] 実行委員会に球団を代表して出席する者は、球団役員に限り、委員を含め1球団2名以内とする。委員以外の出席者は、意見を述べることはできるが、議決権を有しないこととする。


野球協約の定めに従い、セパ両リーグ会長と球団代表による実行委員会でコミッショナー代行を定めることは必要だが、これが決まったとしても、リーダーシップを発揮できるとは思えない。
ちなみに、コミッショナー代行候補は、建設事務次官や住宅・都市整備公団総裁を歴任した豊蔵一セリーグ会長と、毎日新聞の社長会長を務めた小池唯夫パリーグ会長。

おそらく、オーナーの誰かが汗をかかないと、解決に向けてボールを投げ返すことはできそうもない。
では、誰が「時の氏神」になりうるのか。
財界的格付けから言えば、堤オーナー、宮内オーナーにリーダーシップをとって欲しいところだが、堤オーナーについては、その節税戦略や長野オリンピックでの行動から判断する限り、自分の利益が最優先の判断基準であり、火中の栗を拾いたがらない性格だと思われる。
それに、その権力志向はナベツネといい勝負のような気がする。
「たかが選手」どころか、「たかがファン」といいかねない。
宮内オーナーについては、オリックスは規制緩和の旗手のはず・・・ のエントリーで触れたが、既得権益の保持に懸命であり、構造改革を断行する気概はうかがえない。
残念ながら、ナベツネ氏の傀儡で、「読売グループ内の人事異動」で就任した巨人の滝鼻オーナーに期待するしかないのではないか。
となると、読売の社論の動向が、問題解決のスピードや方向を判断する指標になるはずである。

昨日今日の読売の社説を読んだ。
あれは、読者に向って書いているのではなく、ナベツネ氏に読んでもらいたくて論説委員が書いたのだろう。
社会の公器たる新聞紙面を個人的な猟官運動に使った醜悪なるナベツネあてラブレターだ。
読売の社説が読者に向けて書かれ始めたら、解決に向けて動き出すサインになるかもしれない。
ひところネットの中で繰り広げられていた読売不買運動が読売の論調を変える可能性がある。
しばらくは読売の紙面に注目だ。