Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

ネット内の評判作りをより健全に

2009年03月30日 16時17分56秒 | PR戦略
評判づくりにとってインターネットの存在は、いまや無視できない。
ダイエット情報はユーザーの体験ブログのほうが雑誌の広告より信用できそうな気がするはずだ。
「アマゾン」のユーザー書評、「価格COM」や、化粧品の情報交換サイト「@コスメ」の書き込み、「MIXI」での何気ないつぶやきが、確実に消費行動に影響を与えている。
ブログや掲示板、SNSなど一般の人たちが書き込むことで成立しているサイトは、CGM(コンシューマジェネレーテッドメディア)とかソーシャルメディアと呼ばれているが、 “デジタルクチコミ”媒体として、迅速且つ広範に評判を伝播させる力を備えた。
しかしながら、これらの情報は、時として匿名の陰に隠れ、その信頼度は必ずしも高くない。ライバル企業が意図的に特定ブランドの誹謗中傷を流すとか、金銭の授受を伴い実態とかけはなれた提灯記事をブログにアップするような情報操作も存在している。
テレビ番組で“やらせ”が許されないのと同様に、ネットでも素人を隠れ蓑とした不純な動機の情報は排除されてしかるべきである。
とはいえ、発信元が特定できるマスメディアと違い、不特定多数から発信されるネット情報をチェックすることは物理的に困難だ。他方、ブロガーに試供品を提供しそれぞれのブログへの記事掲載を依頼し、投稿された場合に何らかの対価を支払う「ペイパーポスト(Pay Per Post)」と呼ばれるサービスは既にビジネスとして成立している。
さてこのような状況下で、どうすればネット上の評判の健全性・有用性を担保できるのだろう。

アメリカにWOMMA=ウォンマと呼ばれるNPOがある。Word Of Mouth Marketing Associationの頭文字で、クチコミマーケティング協会と訳せよう。このWOMMAは、クチコミを広めるに当たっての倫理基準を定め、その基準の採用を企業やブロガーに呼びかけることを通じで健全化に寄与しようとしている。
たとえば、その倫理基準の中の特徴的なものとして「Honesty ROI」がある。
ROIは投資収益率にあらずして、Relationship、Opinion、Identityのそれぞれの頭文字。
ブログの筆者ととりあげる題材との関係、つまり、商品の提供や報酬があるなら正直にその事実を明示すべき(Relationship)、自分の意見をはっきりと述べるべき(Opinion)、自分の正体を偽ってはならない(Identity)。以上3つの正直を守る原則を意味している。
それぞれのブログが「Honesty ROI」を宣言し表示することを推奨し、信頼度の高いサイトを増やして行こうとの取り組みである。
確かにこの原則を守れば「Pay Per Post」の投稿も消費者にとって有益な情報となり、信頼性も増すはずだ。新聞雑誌の記事体広告のノンブルに【PRのページ】と表示されているのを目にすることは多いが、これをネットに適用したものといえるかもしれない。
このWOMMAの取り組みを参考に、日本の風土にマッチした倫理基準の検討を進めようとの動きが、昨08年暮れから浮上してきた。(http://womj.jp/)
面白いのはいかにもネットらしく、この問題に関心を持つ有志が個人の立場で集まり、横に広がりつつあることだ。今年前半には日本版のたたき台をまとめようとしている。
この動き自体がどれだけの広がりを持ちうるかは未知数だが、ネット評判の健全な発展のためにはこのような努力が地道に重ねられることが必要だろう。