Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

ブッシュは広報を理解していない?

2004年05月31日 16時13分26秒 | プロパガンダ
911直後に、ブッシュ政権は中近東への本格介入を決断したのかもしれません。
グラウンド・ゼロの余燼もおさまらない01年10月2日、国務省は「パブリックディプロマシーおよび広報担当」の次官としてシャーロット・ビアーズ女史を任命しました。
パウエル国務長官が911直後に直接就任を要請したとのこと。
女史は、WPPグループの2つの大手広告代理店、J・ウォルター・トンプソン、オグルビー&メーザーの会長を歴任し、「マディソン街の女王」とまで呼ばれた広告業界のスター経営者からの転身でした。
しかし、03年3月。成果があがらない責任を問われ、米軍のイラク侵攻を前に、解任されることになります。

彼女の失敗の原因は、本来広報的アプローチをすべきところに、広告的アプローチをしてしまったことにあるでしょう。
彼女はどんな作戦を取ったのか。
・アメリカに住むイスラム教徒の生活をレポートしたVTRを制作。イスラム各国のテレビ枠を買って放映しようとし、各地で放映拒否に遭った。
・ボイス・オブ・アメリカの後身である「ラジオ・サワ」を通じ、親しみのあるアメリカを売りこもうとした。
・アメリカ政府の見解やメッセージを直ちに30ヶ国語に訳せる「グローバル通信」というシステムを開発した。
・フセインがクルド族に化学兵器を使用したことを非難する政府広報誌を広汎に配布した。
・時差の空白を埋めるため、ワシントン・ロンドン・イスラマバードに「情報センター」を設置した。
・MTVやアルジャジーラにアラビア語が堪能な元シリア駐在大使を出演させた。
最後の項目のみは合格点が与えられるものの、それ以外はアメリカからのメッセージの一方的押し付けであり、広聴の視点が欠落していることを指摘できるでしょう。
さらに、イスラム聖職者など第三者のインフルエンサーによってアメリカに好意的なレピュテーションを形成させようとする、インダイレクトな戦略も見当たりません。
力ずくの広告流で、アメリカへの好意をインプリントしようとする作戦は、はじめから失敗への道を突き進んだかのようです。



【参考サイト】
里見脩氏論文
マンスリー広告批評

ファイアーサイド・チャットについて

2004年05月30日 18時00分42秒 | Weblog
「Fireside chats」というのは、フランクリン・D・ルーズベルト大統領が行ったラジオ番組のタイトルで、「炉辺談話」と訳されています。
1933年3月12日。大統領に就任した直後のルーズベルトが、当時の最新メディアであるラジオを通じ、ちょうど暖炉の前のロッキングチェアーに座って語るように、フランクに、平易に、大恐慌から蘇らせようとする自らの政策を説いたもので、国民から厚い支持を獲得しました。

大衆民主主義国アメリカの大統領は、新しいメディアの活用に長けています。フランクリンの親戚に当たる先輩大統領セオドア・ルーズベルトは新聞を活用し、新聞を通じて政治をする大統領と言われました。
テレビの本質をいち早くつかんだのはジョン・F・ケネディでしょう。ニクソンとの大接戦を勝ち抜いた大きな要因は、テレビ・ディベートの戦略に一日の長があったからと言われています。

インターネットを本格的に活用しきった大統領はまだ生れていないように思います。クリントンはいち早くホワイトハウスのホームページをオープンしましたが、飼い犬の鳴き声をアップロードした以外にこれといった話題を残さず任期を終えました。
可能性を秘めていたのは、情報スーパーハイウェイ政策をリードした、アル・ゴアだったのでしょうが、大統領選でブッシュに敗北してしまいました。
おそらく、インターネットの活用という視点では、これからの大統領の出現を待つしかないのだろうと思います。

そんなホワイトハウスの停滞をよそに、インターネットは今年また大きな飛躍をしようとしています。
XMLの登場がそれです。湯川鶴章氏のブログによると、マイクロソフトはいよいよXMLに本腰を入れるようです。

ビル・ゲイツが講演の中でXMLというタグ付け言語を最初に評価したときも、ネット上のタグ付け言語の主流がHTMLからXMLに移行するのだと感じた。

厄介なことに、ブログの正確な理解は、実際に自分でブログを発信し使いこなさないと困難なようです。
ということで、遅ればせながらぼくも自分のブログを作ることにしました。

このサイトでは、PRの歴史的成功事例ともいえる「ファイアーサイド・チャット」の名を借りて、広報・PRの今日的問題を考えていきたいと思います。また、社会のさまざまな動きを、コミュニケーションの視点から考えてみたいと思います。