Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

ラヂオの時間

2008年10月23日 22時59分58秒 | Weblog
今から70年前の1938年10月30日。ちょうどハロウィーンの前夜のことです。CBSラジオから流れていたラ・クンパラシータの音楽が突如中断し、臨時ニュースに切り替わりました。
ニューヨークから程近いニュージャージー州に巨大な隕石が落ち、中から火星人が現れ、地球の侵略を始めたというのです。
これを聞いた多くのアメリカ人がパニックに陥りました。
隕石が落ちたと報じられた町では直ちに自警団が結成され、火星人と間違えて風車に発砲する始末です。森に逃げ込む人、毒ガスマスクを買い求めようと店を駆けずり回る人、ヒステリーを起こして失神し病院に担ぎ込まれる人・・・・。騒ぎは全米に広がりました。
この放送は、後に『市民ケーン』や『第三の男』などの映画で知られるようになる若き日のオーソン・ウェルズが、『宇宙戦争』(H.G.ウェルズ作)の火星人襲来シーンをラジオドラマに仕立てたものだったのです。
その手の込んだ演出手腕が迫真のリアリティを生み出したのはもちろんですが、ラジオという、聴取者のイマジネーションを掻き立てるメディア特性が、このような大きな反響につながったといえるでしょう。

ラジオの楽しさがここにあります。
音声だけという限界が、聴取者の『想像の翼』を大きく広げてくれるのです。
テレビと異なり、たった一人でも作れる手軽さが、個人の『創造の魂』を形にしてくれるのです。
加えて、最近はポッドキャスティングなどで自由に情報発信できるようになりました。
テレビに比べ地味に見えるラジオですが、表現メディアとしてむしろ多様な可能性を秘めているのかもしれません。
私も高校時代放送研究会に属し、ラジオ番組を制作していました。
最近こそ制作する機会に恵まれませんが、いつか『一人放送局』を作って、ラジオ放送を流してやろうと、密かにたくらんでいます。

「電凸(電話突撃)」が企業を襲う

2008年10月01日 14時08分34秒 | PR戦略
ユーザーや株主を名乗り、企業に問い合わせや見解の開示を求める電話が増加している。これらの中にはインターネットの掲示板や専門ユーザーサイトが組織的に架電を煽り、企業の対応結果を公表する活動が含まれている。
これは電話突撃、略して「電凸」とよばれる。日本広報学会は9月19日に、この問題に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚氏、ブロガー藤代裕之氏を講師に迎え、この問題を巡り広報塾を開催した。
今回、電凸が注目されたきっかけは、毎日新聞の問題。毎日新聞の英語版サイト「Mainichi Daily News」のコーナー「WaiWai」に、公序良俗に反するわいせつ記事が、アクセス稼ぎのために数年間にわたりチェックないまま掲載され続けていた事件である。
今年6月にJ-CASTニュースが『毎日新聞英語版サイト「変態ニュース」を世界発信』と題する記事を配信。これがヤフーのトピックスにも紹介されたことで、一挙に注目を集めた。
2ちゃんねるなどの掲示板にスレッドが立ち、その書き込み内容を整理した「まとめサイト」も現れた。グーグルやヤフーで「毎日新聞」と打ち込むと、同時に検索されることの多いキーワードとして「まとめ」が提示される始末だ。
毎日新聞は、当該サイトを閉鎖し、関係者の処分、検証記事の掲載、謝罪などを行ったものの、対応が手ぬるいとしてネットの批判をいっそう煽ることとなった。
藤代氏によると6月30日には2ちゃんねるにアクセスが集中し、一時サーバがダウンする騒ぎだったという。この炎上のエネルギーはそのまま電話突撃に向かう。広告主に電話で問い合わせを行い、広告掲載の中止を暗に勧奨する運動が展開されたのだ。
「まとめサイト」には、事件の経過や、問題記事の再録と並び、毎日新聞のサイトや本紙に出稿しているスポンサーのリスト、電凸のマニュアルなどが掲出された。「事前に質問項目メモをまとめろ」「カスタマーセンターではなく広報につないでもらえ」「抗議ではなく、質問を重ねろ」など懇切丁寧な内容である。
こうして毎日新聞のサイト「毎日.jp」への出稿スポンサーが狙い打ちにされ、7月半ばには「毎日.jp」への広告出稿が途絶え、自社広告で埋め尽くされる異常事態に追い込まれた。
佐々木氏によると、この間240社の広告主が電凸の対象となったという。
企業の広報担当から見れば嵐に巻き込まれたようなものである。突然の電話への応対は、直ちに掲示板に書き込まれ、それが「まとめサイト」に転載される。応対の巧拙によっては第2第3の電凸を招くことになるのだ。
時あたかも6月には、隣国の韓国でも李明博大統領に好意的との烙印を押された中央日報・東亜日報・朝鮮日報に対し広告出稿妨害のための電凸が展開されていた。
こうしてみると、ネット内のサイトで同調し、電話で企業に「質問という形式での異議申し立て」を行い、その成果をサイトでシェアする電凸は、いまや日韓を通じて日常的な手段となろうとしているのかもしれない。
今後、様々な局面で企業広報は電凸への対応を迫られることになるだろう。ソーシャルメディアの発達は、企業と社会や顧客との間に、新たな緊張感を生み出しつつある。