Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

失墜し始めたワンマンボスの権威

2004年12月24日 16時46分33秒 | クライシス
海老沢@NHK、中内@ダイエー、堤@コクド、ナベツネ@読売・・・・・・。
いずれも一時代を築いたトップの権威が、今年、たてつづけに失墜していった。
これらの集中は、単なる偶然なのだろうか?
私は偶然ではすまされない大きな時代のうねりを、その背後に感じている。

これらのトップのいずれとも面識がないため、一般の報道や噂に基づく論評で恐縮なのだが、いずれも、人の話を聞くのが下手な共通点を持っているように見受けられる。
特に、社内においてその印象が強い。
NHKに対しては国会や総務庁、経営委員会がチェック機能を果たすべきだが、それが形骸化していることは先日の生番組「NHKにいいたい」で明らかになった。
ダイエーに対しては、株主も銀行も暴走を止められなかった。
コクドや読売に至っては、そもそも外部のチェック機能があるかどうかすら疑わしい。
どうも、外部の掣肘を受けることのないワンマンボスの経営する企業は、これからますます凋落の勢いを増すのではないだろうか。

終戦後間もない1946年の暮、傾斜生産方式を導入したことを手始めに、日本経済はその牽引力を企業に委ねてきた。
その結果、日本は世界史にも稀な短期間での経済復興、経済成長を成し遂げた。
高度成長を含め、戦後日本の発展は企業のがんばりの成果だといっていいだろう。
これを「企業イニシアティブによる社会の発展」と呼びたいと思う。

しかし、1989年の東京証券取引所での大納会で日経平均株価38,915円87銭をつけたのをピークに日本経済は長いバブル崩壊後のトンネルに入る。
それからちょうど15年。国内消費は冷え切ったまま推移し、企業はかつての牽引力を取り戻せないままでいる。
代わって主役として登場したのが生活者(消費者)だ。
サラリーマンは社畜のくびきを脱し、地域社会やNPOに参加しはじめ、
独身OLは独自の消費文化を謳歌し、
専業主婦も社会参加を始めた。
いまや、社会発展の原動力は生活者に移った感がある。
つまり「生活者イニシアティブ時代」の到来である。

「企業イニシアティブの時代」にあって、ワンマンボスの経営スタイルは決して珍しくなかったし、右肩上がりの経済成長の時代にはそれなりの効果を発揮した。
しかし、時代は「生活者イニシアティブ」に移り、生活者とのインタラクティブな対話を通じ、鋭敏なアンテナを伸ばすことこそが必要な時代に、ワンマンボスの経営スタイルでは、社会から取り残されることに他ならないのだろう。
社会の変化に対応できないばかりでなく、対話を拒むその閉鎖的経営が社会的批判を受けることにも直結することになってしまった。

「生活者イニシアティブ時代」の到来を理解しない経営者は、彼らばかりではない。
特に歴史の古い大企業に多く見られる類型である。
ワンマンボスの凋落が今年批判の洗礼を受けた彼らだけで終わるとは到底思えない。
「企業イニシアティブ型経営スタイル」への弔鐘が鳴り始めたと理解すべきと思うが、どうだろう。