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2014-02-10 | 町田康


町田康
『餓鬼道巡業』★★★

「予約でいっぱい、なんじゃなくて、予約でいっぱいいっぱい、なんじゃねぇの?」

おまえにようなバコ、というのはバカとタコのもっとも悪質で愚劣な部分をふたつながら受け継いだ最悪の痴れ者という意味だが、

情報化社会というのはまるでつくねの中に天現寺交差点が丸ごと入ってしまったような社会だ。もっというと、広尾そのものが巨大な温野菜になってしまったようなものか。

コロッケ定食、ってのがある。これはあんた、ずたずたに引き裂いた牛の筋肉と完膚なきまでに押し潰した草の肥大した根っこと切り刻んだ臭い草の球根をぐしゃぐしゃに混ぜ合わせ、すりつぶした草の実と破壊した鳥の卵とボロボロのパンをべちゃべちゃになすりつけ、多量のオイルで燃やしたものである。

例えば、すりつぶした草の種と水を手で揉んだものを平板な感じにしたもののうえに、ずたずたに引き裂いた豚の筋肉、切り刻んだ臭い草の茎、同じく切り刻んだ草の葉などを乗せ、これを折り曲げ、冊端部に微細な波状の文様を拵え、それをオイルを流し込んだ鉄のうえで抑圧しながら燃やした料理がある。なみき、ではこれを餃子とよんでいる。
これを定食屋にしつらえた、餃子定食、というのが、もう人間としての終末を迎えるみたいな、六百五十円、という値段で提供されている。
ここまでいったらもう価格の終着駅、としかいいようがなく、私は寡黙になってしまう。軽く鬱になる感じすらある。

キャベツ=雪、ならば、ブラウンの焼肉=土砂ではないか。
つまりこれは、雪の日の土砂災害の様子を絶妙に表現したアートなのである。

雪というものは、いったん降れば、どんどんどんどん降り積もり、地上世界の醜いものすべーて覆い隠し、一面を美しい銀世界にしてしまう。
その雪を土砂の脇に配置する。そのことによって半分は美しい世界、半分は悲惨な土砂災害、という形をつくり、とどのつまりは人間の心の中にある、天国と地獄、その遷移ではない、世界をたかだか径八寸の皿のなかに現出せしめるということの凄さ、っていうか、凄み、をモロに発揮しているのである。


なみきネタがおもしろ過ぎて笑いっぱなし。最高

それと溜池山王のポエム(笑)

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