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📚読書備忘録📚
(自己評価★★★★★)+泣ける物語
たまに山ブログ
         

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2025-09-04 | 三島由紀夫





三島由紀夫
沈める滝

昭和38年12月5日 発行


--------(抜粋)


天性の美貌と豊かな財力にめぐまれた貴公子城所昇は、愛を信じない青年である。彼は子供のころ、鉄や石ばかりを相手にしてすごし、漁色も即物的関心からで、愛情のためではない。最後の女顕子に惹かれたのも、この人妻が石のように不感症だったからなのだ。──既成の愛を信じないという立場に立って、その荒廃の上にあらためて人工の愛の創造を試みた、三島文学の重要な作品


---------

城所昇の祖父が電力界の実力者であり、恵まれた環境で生まれた。
顕子と出逢い愛すことの出来ない者同士、二人して人工的な愛を作り出そうと試みる。
それは昇が奥野川ダム建設現場で越冬の間、文通により育まれる。
昇はある日川の上流を散歩している顕子に似た小滝を見つける。
昔祖父の書生として住み込んでいた七つ年長の瀬山
この物語は瀬山が存在して動きがある(以前の鼠的人物)


---


『孤独というやつがいけない。空間的に結びつきのない人間が、時間的に持続するわけがない。俺は何に結びつくことができるだろう』


---

---


『俺は生きてゆく必要上、何かを信じなければならないのだろうか』


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顕子からの手紙を読み苦悩する昇

越冬での食料トラブルは瀬山が原因

越冬後に昇と顕子との間に愛が生まれたことを知る。
昇が恋していたのは感動しない顕子であった。

---


「『あの人は感動しないから、好きなんだ』って」


---

瀬山の余計な一言に顕子は・・

五年後ダムが完成
例の顕子に見立てた小滝はダムの水底に沈んでいる。

---


「丁度俺の立っているこの下のところに小さな滝があったんだ」


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2025-08-22 | 三島由紀夫




三島由紀夫
女神

昭和36年6月 文藝春秋新社より刊行
他10編

--------(抜粋)


さながら女神のように美しく仕立て上げた妻が、顔に醜い火傷を負った時……
女性美を追う男の執念を描く表題作等、11編を収録


--------


・女神

父周伍の美の追求
朝子が事故で救った画家斑鳩に付きまとわれる。
銀行の頭取の息子俊二と出逢う。
空襲の際に顔に火傷を負った母依子の夫への復習
その橋渡しをする画家斑鳩と母依子とがデキている。
悲劇的な部分は銀行の頭取の息子俊二が喰えないヤツだった。
上流階級 三島さんの住んでいた優雅な世界

---


老年という敵は、妻自身よりも良人にとって、さほど気になってはいなかった。一緒に暮らしていれば、衰えに慣れ、それにおどろくこともなくすんだ。天人にさえ五衰があるという。すなわち、天人も臨終が近づくと、身光は現れず、華鬘はなえやつれ、両腋には汗が流れ、身体は身穢になり、居ずまいも崩れてしまう。・・・・・・ところが無残な火は、周伍にどんな幻想をも抱かせないような恐ろしい五衰を、一夜のうちに天人の顔に与えたのであった。


---

---


「やっと二人きりになれたね」

「ええ、やっと二人きりになれたんだわ」


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新しい女神の誕生!



・接吻

・伝説

・白鳥

・哲学

・蝶々 難解で三度読み返す。

・恋重荷

・侍童

・鴛鴦 ★★★★ 印象深し

・雛の宿

・朝の純愛



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2025-08-21 | 三島由紀夫

 



三島由紀夫
潮騒』★★★★


--------(抜粋)


文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、著者を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。


--------

なんて爽やかな純愛物語
私的にはありだと思うし、こういう物語は必要
久々に三島さんの筆致が復活した古典から引き継がれえた物語(解説で知る)
こういう描き方も出来るんだとホッとしてのは言うまでもない。

★★★★付けました(^▽^)/

 

試し読みいかがです?

試し読み | 『潮騒』三島由紀夫 | 新潮社

 

試し読み | 『潮騒』三島由紀夫 | 新潮社

古代の伝説が息づく伊勢湾の小島で、逞しく日焼けした海の若者新治は、目もとの涼しげな少女初江に出会う。にわかに騒ぎだす新治の心。星明りの浜、匂う潮の香、触れ合う唇...

 

 


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2025-08-20 | 三島由紀夫




三島由紀夫
恋の都


2008年4月10日 第一刷発行
あの凛々しき写真が旧いver.で使用されている。

--------(抜粋)


26歳、才色兼備の朝日奈まゆみはジャズバンドのマネージャーだが、根っからのアメリカ嫌い。彼女の恋人五郎は過激な右翼団体の塾生だったが、敗戦と共に切腹したという。ジャズバンドに打ち込むことで辛さをまぎらわそうとしていたまゆみの下へ届けられた、一本の白檀の扇が運命を変える。
敗戦後の復興著しい東京を舞台に、戦争に翻弄される男女の運命を描く。


--------


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「大丈夫よ。私、アメリカ人なんかに、決して、してやられないから」


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テンポよく軽やかに進む物語
もちろん苦労話やちょっとしたハプニングも有

そしてメインと言える恋人五郎との再会
五郎の変貌にドキハラだったけど・・
まゆみの元へかかってきた電話の返事「イエスですわ」よかった~!!
何だかんだ言ってハッピーエンドがホッとさせられます。

 


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2025-07-31 | 三島由紀夫

 

三島由紀夫
にっぽん製

本書は『決定版 三島由紀夫全集』(新潮社)を底本として、
現代仮名遣いに改めました。
1953年初刊

平成22年6月25日 初版発行


--------(抜粋)


三島由紀夫没後40年を記念し、初文庫化!

ファッションデザイナーとしての成功を夢見る春原美子は、洋行の帰途、柔道選手の栗原正から熱烈なアプローチを受ける。が、美子にはパトロンがいた。
古い日本と新しい日本のせめぎあいを描く初文庫化

2人の日本人を乗せたパリからの飛行機が羽田に降り立った。わがままなフランスの老婦人の隣に座ったばかりに、機中その面倒をみることになったファッションデザイナーの春原美子と、そんな美子に一目惚れした若き柔道家、栗原正。しかし美子には、金杉というパトロンがいて…。戦後間もない日本が直面した、伝統と新たな価値観のせめぎ合いを背景に、28歳の三島が描き出す2人の恋の行方
1953年初刊


--------

パトロン・・ちょうど大江健三郎の『宙返り』を同時進行中
どうしてもそっちの「師匠(パトロン)」の方が印象深し。

三島さん28歳時の作品
その当時はセンセーショナルを起こした作品に違いない。
あえて題名をひらがなにしたところが憎めない?

鼠チューチュー
どんな物語にも引き立て役は必要で、憎めないヤツが多かったりする。

古き良き時代の銀座の風景
思えば私が上京した時はファストファッションは存在しなかった。
雰囲気ある街並みがなつかしい。

柔道家が今身近にいるからか、ついなぞってしまう。
真っ直ぐな性質が似ていると思う。
でも緩めの柔軟さを持つ甘い雰囲気に惹かれてしまう性

 


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2025-07-12 | 三島由紀夫




三島由紀夫
夏子の冒険

昭和35年4月10日 初版発行
本書は『決定版 三島由紀夫全集』(新潮社)を底本

今回の夏子は角川文庫 新装版
装丁デザインがよい感じです。

--------(抜粋)


裕福な家で奔放に育った夏子は、自分に群がる男たちに興味が持てず、神に仕えた方がいい、と函館の修道院入りを決める。ところが函館へ向かう車中、瞳に情熱的な輝きを宿す一人の青年と巡り会う。
傑作長編ロマンス!


--------


冒頭

第一章 情熱家はどこにいるか?

或る朝、夏子が朝食の食卓で、
「あたくし修道院に入る」
といい出した時には一家は呆気にとられてしばらく箸を休め、味噌汁の椀から立つ湯気ばかりが静寂のなかを香炉のように歩みのぼった。





サクッと読める物語
どうしちゃったの三島さん?

千野帽子の解説 熊を巡る冒険 ん?羊を巡る冒険

「彼の長編小説のなかでももっともガーリックな魅力に溢れているもの」
上手いこと言うわね。
『金閣寺』から入った者としてはあまりにも軽過ぎて驚きである。

---


冒頭で「わけのわからないことをする女」として紹介された夏子は、恋をすることによって「わけのわかることをする女」になったあと、小説の最後のどんでん返しで、「納得できる『わけのわからないこと』をする女」になる。なんという「正→反→合」


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不二子の登場により夏子の強気な恋心に変化があったのには意外性
そこに人間味を感じた。
夏子の祖母と母と伯母がコミカルな色を添えている。

『あの熊をきっと殺してやる!』











大江健三郎は三島さんを「禍をもたらす雲」と呼んだ。
この小説からはあまりにもかけ離れている。



こちら図書館で借りたんだけど、うちの区は15冊まで。
この夏子含め16冊借りてたようで・・(^▽^;)
3冊返却して2冊借りたのはどう考えてもおかしい。


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2025-07-11 | 三島由紀夫

 



三島由紀夫
『禁色』

昭和39年4月30日 発行

この作品の第一部は昭和26年11月
第二部は昭和28年9月新潮社より刊行された。


巻末に「おねがいだ。女を愛さぬことで、私の仇を討ってくれ。」
!!!おいおい『禁色』って・・

--------(抜粋)


【新装版、新・三島由紀夫】
おねがいだ。女を愛さぬことで、私の仇を討ってくれ――。
「廿代の総決算」として挑んだ、野心作にして衝撃醒めぬ金字塔
〔新解説〕森井良


「僕は女を愛せないんです」──。完璧な美貌の青年・南悠一がそう告げたとき、老作家・檜俊輔の復讐遊戯が幕を上げた。「悠一の美を使って自分を裏切った女たちを手酷く堕落させるのだ」。一方で悠一はゲイバー「ルドン」の淫靡を身に纏いはじめ、俊輔はとある「愛」の誤算によって次第に人生をも狂わされていく……。
『仮面の告白』と並ぶ同性愛小説の極致
解説・野口武彦/森井良


【本文冒頭より】
康子は遊びに来るたびに馴れ、庭さきの籐椅子に休んでいた俊輔の膝の上へ、平気で腰を下ろすようなことをするまでになった。このことは俊輔を欣ばせた。
恰(あた)かも夏である。午前中俊輔は訪客を断っていた。気が向けばその時間に仕事をする。仕事をする興の動かないときは、手紙を書いたり、庭の木蔭に籐の寝椅子を出させて、これに横たわって書物を読んだり、読みさしの書物を膝に伏せて無為にすごしたり、鈴を鳴らして婢(はしため)を呼んで茶を運ばせたり、何かの加減で前夜の睡眠が足りないときは、膝かけの毛布を胸まで引き上げて、しばらくのあいだまどろんだりした。……(第一章「発端」)


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三島由紀夫5番目の長編小説
P687 大容量です!
ゲイの話延々。。

ところが途中から目線が変化してきて、読書会でももう一度読みたい名作とも意見有



森井良 解説 気絶するほど悩ましい、小説

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「感動」の小説というものがある。「感」を「動」かされる。という意味である。


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2025-05-14 | 三島由紀夫

 



三島由紀夫
青の時代』★★


昭和46年7月23日 発行
平成23年8月5日 改版
令和5年9月25日 

昭和25年12月新潮社より刊行された。


--------(抜粋)


地方の名家に生れた川崎誠は、父への反感を胸に徹底した合理主義者として一高、東大へと進むが、ある日大金を詐欺で失った事から今度は自分で金融会社を設立する。それはうまく行くかに思われたが……。
戦後世間を賑わした光クラブ社長の自殺に至る波瀾にみちた短い生涯を素材にして、激しい自己反省癖と自意識過剰の異様で孤独な青春を描いて作者独自のシニシズムに溢れる長編


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装丁が統一されてるver.
前作『愛の渇き』で少々うんざり気味でこの「光クラブ」を題材にした『青の時代』へ。
冒頭は「序」

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「ところで今度の新作の主人公にはモデルがあるのかい」
「あるともさ、例の光クラブの山崎晃嗣さ」

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そして子供時代からの回想が始まる。
(途中時間が経過して読み直し。。)
印象深かったのは、父が買い取ってくれた広告の鉛筆を海に捨てられた場面

しかしこの物語は途中すっぽり抜けている。
いきなり戦後へ飛んでいて一体何があったのか!?(何もないけど)
その辺りから何だかよく読み取れなくなった。
戦中を描きたくなかったのか?

愛宕(おたぎ)

女が精神的に自分を愛したときにその女を棄てると言っていたのにも関わらず、
矛盾が見られた。

高利金融会社のリアルな破綻も描かれることはなく終了
ラストに死人も出ない。



今まで★評価をつけていなかった三島作品
私的に再読に値しない作品に「★★」を付けることにした。

 


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2025-04-29 | 三島由紀夫

 



三島由紀夫
愛の渇き


昭和27年3月31日 初版発行
令和2年11月1日 新版発行

昭和25年6月新潮社より刊行された。


--------(抜粋)


【新装版、新・三島由紀夫】
沼のような情念。罪は誰にあるのか――。
〔新解説〕石井遊佳


杉本悦子は、度重なる不倫で彼女を苦しめ続けた夫を突如亡くし、舅の弥吉や夫の兄弟家族が住む別荘兼農園に身を寄せた。やがて舅との肉体関係に陥った悦子は、その骸骨のごとき手で体をまさぐられながらも、雇われ庭師、三郎の若い肉体と質朴な心に惹かれていく。だが三郎には女中の美代という恋人がいた。嫉妬と歪んだ幸福が荒々しい結末を呼ぶ野心的長編


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装丁が統一されてるver.
前作『純白の夜』
そこからの今作『愛の渇き』の解説を読んでうんざり・・はは(^▽^;)
「嫉妬と歪んだ幸福が荒々しい結末」

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三島由紀夫『純白の夜』昭和31年7月30日初版発行昭和25年「婦人公論」に連載後、中央公論社から刊行された。--------(抜粋)昭和23年。村松恒彦は、勤務先の岸田銀行の創立...

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当初のタイトルは『緋色の獣』
冒頭に記されている
かくてわれ‥‥‥緋色の獣に乗れる女を見たり(黙示録 第十七章)

---


人生が生きるに値しないと考えることは容易いが、それだけにまた、生きるに値しないということを考えないでいることは、多少とも鋭敏な感受性をもった人には困難であり、他ならぬこの困難が悦子の幸福の根拠であったが、彼女にとっては世間で「生甲斐」と呼ばれるようなもの、——つまり、われわれは生きる意味を模索し、なおそれをも索め得ないでいるあいだも、とにかく生きているのであり、この生の二重性を、求め得られた生の意味の遡及によって、統一しようとする欲望がわれわれの生の本体だとすると、生甲斐とはたえず現前するこの統一の幻覚、また遡及すべからざる生の意味を仮に遡及してみるところから生ずる生の統一の幻覚に他ならないのであるが――、そういう意味の「生甲斐」と呼ばれるようなものは、悦子には縁もゆかりもない代物だった。


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悦子の思考がナゾ・・
三島さんの文字の羅列が悦子の言葉に思えない違和感

どの登場人物も食えない人達・・
私的には三郎がどうしようもない。

「愛する」「愛さない」問題


---(吉田健一の解説より抜粋)


三島氏はこの作品で、その余裕の世界を何に用いているかと言えば、そこで氏は一人の女が幸福を求めて、その実感を自分の心で確かめるためには如何なる苦痛も避けずに、遂にこの探究を完成する過程を描いている。


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知らなかったけど吉田健一の父は吉田茂
そして麻生太郎の母は妹と知る。
そういう情報は毎回読書会で知ることが多い。


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2025-03-26 | 三島由紀夫





三島由紀夫
純白の夜


昭和31年7月30日 初版発行

昭和25年「婦人公論」に連載後、中央公論社から刊行された。


--------(抜粋)


昭和23年。村松恒彦は、勤務先の岸田銀行の創立者の娘である13歳年下の妻・郁子と不自由なく暮らしている。最近、恒彦は学習院時代の同級生、楠と取引が生じ、郁子もまじえての付き合いが始まった。楠は一目見たときから、郁子の美しさに心を奪われる。郁子もまた、楠に惹かれていき、接吻を許す。が、エゴチスト同士の恋は、思いも寄らぬ結末を迎えることに…。
著者はじめての長期連載小説


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驚くのはこの作品を書いた当時三島由紀夫は25歳
スゴイ才筆である。

バルザックの作品をこよなく愛好していた。
「最も卑俗なものを最も悲劇的なものに高めねばならぬ」
うう・・バルザックは未読である。

解説にあるように、ひとたび三島由紀夫という作家の中をくぐり抜けたとたん、
壮大な美しい悲劇に変貌する。


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不在というものは、存在よりももっと精妙な原料から、もっと精選された素材から成立っているように思われる。


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「僕は何も知らない。僕は何も知らないよ」


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『そろそろ俺も人を退屈させてはならぬという義務を人生に対して負わねばならないのだ。これは俺が若さを卒業したからだ』


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秘密は人を多忙にする。怠け者は秘密を持つこともできず、秘密と附合うこともできない。郁子の精神の或る懶惰が、秘密に対して払うべき敬意を要求する生活をもてあまさせた。


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彼女の体は小きざみに慄え、自分のものではないようなその胴が、西洋人形の藁を詰めた胴体同然に思われた。そして郁子の心を占めている言あった。
『私は楠さんを愛している!私は楠さんを愛している!』


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「私に罪はない。私に罪はない。私に罪はない。私に罪はない」


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