三島由紀夫
『沈める滝 』
昭和38年12月5日 発行
--------(抜粋)
天性の美貌と豊かな財力にめぐまれた貴公子城所昇は、愛を信じない青年である。彼は子供のころ、鉄や石ばかりを相手にしてすごし、漁色も即物的関心からで、愛情のためではない。最後の女顕子に惹かれたのも、この人妻が石のように不感症だったからなのだ。──既成の愛を信じないという立場に立って、その荒廃の上にあらためて人工の愛の創造を試みた、三島文学の重要な作品
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城所昇の祖父が電力界の実力者であり、恵まれた環境で生まれた。
顕子と出逢い愛すことの出来ない者同士、二人して人工的な愛を作り出そうと試みる。
それは昇が奥野川ダム建設現場で越冬の間、文通により育まれる。
昇はある日川の上流を散歩している顕子に似た小滝を見つける。
昔祖父の書生として住み込んでいた七つ年長の瀬山
この物語は瀬山が存在して動きがある(以前の鼠的人物)
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『孤独というやつがいけない。空間的に結びつきのない人間が、時間的に持続するわけがない。俺は何に結びつくことができるだろう』
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『俺は生きてゆく必要上、何かを信じなければならないのだろうか』
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顕子からの手紙を読み苦悩する昇
越冬での食料トラブルは瀬山が原因
越冬後に昇と顕子との間に愛が生まれたことを知る。
昇が恋していたのは感動しない顕子であった。
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「『あの人は感動しないから、好きなんだ』って」
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瀬山の余計な一言に顕子は・・
五年後ダムが完成
例の顕子に見立てた小滝はダムの水底に沈んでいる。
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「丁度俺の立っているこの下のところに小さな滝があったんだ」
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