建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

会話シリーズ 《喜》

2009-04-12 09:45:12 | Weblog
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     会話シリーズ 喜 の編
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 建築屋としては苦労して創った建物が竣工した時、なによりの喜びを感じるのである。
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★竣工式の前日
「最初から突貫だったけど、よく間に合ったねえ」
「皆のチームワークで頑張れたよ、ありがとう」
「明日の竣工式の後、打ち上げ会はどこでするのですか?」
「金一封が、貰えるから全部飲もうか」
「金一封は経理部が没収です」
「見つかる前に内緒で抜いて来い」
 感謝状よりも《金一封》が気にかかる時期である。
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★工期も予算も足らなかったまま、竣工間近な頃、
「さすがに突貫の福さんですね…」
「工期の無い仕事はもう取らないでくださいよ」
「福さんをアテにして営業してるから…」
「もうイヤだよ、下請けさんも大変じゃん」
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★自分の現場から職人を連れて行った応援先で、
「福さんの応援部隊が来てくれて助かったよ」
「私達のやりたい放題でごめんね」
「もう1ヶ月ここにいてくれたら、良かったけどね」
「明日帰ったら、もう私の現場に火が点いてるかもよ~」
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★マンションのオーナーの奥様から、
「引越しで傷を付けたくないから、手伝って頂けない?」
「《新築に傷》の言葉に弱いのよ…誰から聞いたの?」
「これからここに住めるなんて夢のようですわ」
「システムキッチンは私の大サービスをお忘れなく」
「今度、ご馳走しますから来てください」
「はい、新築パーティには酒樽持って伺いますね」
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★1号店の落成式の後、
「これで2号店3号店が出来るようになったよ」
「私の1号店が標準共通仕上げになったのですね?」
「オープン記念セールまで付き合ってください」
「それより4号店は私の担当になるのは本当?」
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★落成式のパーティ会場では、
「この旨い酒が苦労を流してくれますねえ」
「次ぎは儲かる現場だよ、付いて来る?」
「儲かるンなら、次の竣工旅行は海外に決まりだね」
「しっ…、来週の旅行もナイショだからねッ」
「所長、あの金一封いくらあったの?今夜も飲めるの?」
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 竣工した建物の中に佇むと、昨日まで流した汗と、ひたすら職人さんと励んだ思い出、
それに事故もなく出来上がった喜びをかみしめて、一筋の涙が星空を煌かせてくれる。
少し淋しいけれど嬉しい、嬉しい《ひととき》でもある。
                             ★☆★☆★

 会話シリーズ《喜・怒・哀・楽》より。 
コメント
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