建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

CADで作図(1)

2009-04-02 09:17:06 | Weblog
                ………………………(CADで作図 1)……………

 《施工図のチェック》と言う仕事口を紹介されて、何となく興味を持った。
 ここ数年来、パソコンで図面を書く『CAD作図』が一般的になって来た。
 製図版の上で定規を使って書く『手書き図面』には製図者の技量がはっきり現れて、図面そのものを拡げた瞬間にその図面の良し悪しが分かるものであった。
 現在では簡単な施工図でさえコンピューターで作図するので、
「一応きれいな図面になっているだけである」
と昔の技術者は口を揃えて言うのである。
 近年、ワープロからパソコンへと時代は急転回して、ほとんどの書類を提出するのに現場にてパソコンで作成するようになった。パソコンのソフトが急成長して操作も簡単になり文章に枠とか飾りを付けたりして、見た目の良さが優先されるようにもなった。

 最近の設計図はほとんどCADで作図されていて、設計図にデータを添えて施工業者に最初に渡して、施工図もCAD図を要求されるようになっている。
 設計事務所・ゼネコン・各現場事務所において、共通のCADソフトならばデータのやりとりが簡単で図面チェックも省力化なのだが、現実は大混乱中である。
 設計事務所はプレゼンテーション用にも対応した図面が主流だから高価なソフトを使用せざるを得ないし、毎年のようにヴァージョンアップするソフトで設計する。
 現場は『施工図』を作図するのだから複雑な機能は必要ない。
 しかし、設計事務所と同じソフトに合わせていて、宇宙ロケットも製図可能のソフトを建築業界に持ち込み、しかも職人が看る為の現場用の図面にこのソフトを使っても意味がない。
 それは現場の木屑を運ぶのに最高級乗用車を現場に購入したようなものであり、せめてライトバン程度を使えば十分である事なのに、上司がパソコン音痴ではどうにもならない。
「高いソフトの現場購入を認めたのだから、若手はしっかり利用しろ」
 この程度が建設現場のトップのIT能力なのである。

 高額なソフトが2年毎にヴァージョンアップされていて、最新版のソフトで作図したデータが一昨年買ったソフトではもう使えない事もある中で、JWWのソフトは新旧入り混ざっても全く心配がなく、建築図面をグループ毎に個別作図するのには最高である。
 建築屋の為に開発されたJWWはフリーソフト(無償)でありインターネットで取り込めるし、何より施工図を書く事に際し、全く不足がない優れものである。
 設計図としてプレゼンテーション的な《絵》の色彩感覚が必要なら少し無理があるが、建設現場で施工図を書くのに、仲間内で共有して作図出来る簡単・便利さでは一番である。
 私は商売柄AUTO・DRA・JWWの3種類のソフトを使っていて、どのソフトを導入しようかと相談を受けると、施工図を書くのにはお金のかからないソフトが一番だと薦める。
 一人で1枚だけを専用に書ける、複雑な操作をCADの初心者が使いこなせる、高額なソフトを毎年買い替えられる等、これらの内一つでもあれば「JWW以外だね」と答えている。

 話を戻して、CADで作図した《施工図》図面は設計図からデータを複写・拡大をして、あたかも自分が作図したように配置を変えて一枚の《完成施工図》としているのが現実である。
 機械が扱えない人は綺麗な図面を見て一応良く出来ていると思い、正確かどうかは後回しになってしまい、ついついそのまま現場で使う事になる。
 確かに設計図の縮尺では見えにくいし、納まりから割り出した寸法ではないから、例えば手すりの柱は書いてあっても、この間隔は何㌢なのか記入が無い施工図もある。
 壁を貼る場合CADならば仕上の品物の位置に色で区別表示出来るが、白黒印刷の現場では一本の黒線にしか見えないので、仕上げを見間違う事になる施工図もある。

 昔の図面屋さんと言う人は1本の線を引くにしても、消して再度記入するような無駄な操作はしないし、紙の上にケシゴムの後とか鉛筆の窪みによる汚れは極力避けていたから、Aから引いた線がBから引いた線と、どこで交点になるのかを理解して図面を書いていました。
 従って、自分が引いた線の行く先がどこで止まるのか分からないと言う事はあまりなくて、柱がここで壁がここ、建具はここでタイルはここ……と頭の中で完成した図面から一本の直線を理解してから《施工図》として更に詳しく書いていたものである。
 昔の人の図面の如く、あたかも出来ていて、
「CADで清書しました」
 と言うような図面が最近やたらと多くなっている。
 その原因については・・・。

                     《続く》
コメント
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