パンセ(みたいなものを目指して)

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ふたりの女王 メアリーとエリザベス

2019年03月21日 18時42分00秒 | 徒然なるままに

久しぶりに映画を見に行った
見たのは「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」
邦題はこうなっているが原題は「Mary Queen of Scots」で
映画を見た感じでは原題のほうがしっくり来る

日本人はイギリスの歴史を知らないので、よく耳にする「エリザベス」
の名の入っている方が馴染みやすいからつけたタイトルと想像したが、さて、、、

自分もイギリスの歴史を知らない
だから映画を見て想像するしかない
なんとかなるだろう、、と見ていたが困ることがもう一つあった
男優の顔が見分けがつかない 兄なのか、エリザベスの恋人なのか、家臣なのか、、
だから陰謀のところがイマイチよくわからなかった(情けない)

この映画の自分にとって一番印象的なのは風景だった
スコットランドの荒涼とした風景、、
これは以前見た「マクベス」、007の「スカイフォール」でも見かけたぞ
と勝手に決めつけたが、光の少ない寒々としたそれは通奏低音のように全編のイメージを形成していた

物語は王位継承権、権力闘争の話でスコットランドの女王メアリーとイングランドの女王エリザベス
の戦いのように見えるが、実際はその周りの人間達の都合で彼女らは運命に翻弄されていく
彼女たちは従姉妹らしいが、血統的にはメアリーのほうが正当で実質的な意味合いではエリザベスのほうが力を持っている

女優さんも男優さんも知らない人ばかりなので、その分ストーリーを追うことができた
そこで感じたことは、どの国も王という存在は「血筋」が想像以上に重要視されるということ
命令をするにも誰々の血筋であるというだけで有無を言わさず従わせることができる
(源氏物語でも天皇になるのも、その后になるにも血筋が重要視されていた)
ついでに思い出したのがマックス・ウェーバーの「権力と支配」のなかの伝統的支配という概念
血統・家系・古来からの伝習・しきたりなどに基づいて被支配者を服従させる正当性のことで
これが時を経てカリスマ的支配、合法的支配となっていく
伝統的とカリスマは順番が違うかもしれないが、いずれにせよどの時代もこのような過程を繰り返すものらしい

どうも人は(特に日本人は)信頼の拠り所を血筋にもとめてしまうようだ
現在、実力よりはその出自で評価されてしまいそうなのが政治家の世界
日本では2代、3代と政治家が当たり前のように存在する
政治の世界は確かに専門的な分野でもあるので生まれたときからその空気に触れている人間は
その分野では優れているかもしれない
だが、国会中継をみると政治家としての資質をよく感じるのは政治家の子孫よりも
官僚・弁護士・ジャーナリスト出身の人に多い
これは血筋よりも秩序・制度、地位などの合法性による支配のほうが良しと思えることだろうが
血筋信仰はなかなかしぶとくてなかなかその位置を譲ろうとしない

話は逸れてしまったが、メアリーが陰謀した計画が証拠が存在するということで
結局メアリーは死刑に処されることになった
最後のエリザベスのことば
「このメアリーの署名が偽物であっても私はイングランド女王として死刑執行にサインする」
この割り切りは、これまた勝手な想像が羽ばたいて日本の古代  持統天皇のときの大津皇子の事件を連想させる

天武天皇には鸕野讚良(うののさらら)と大田皇女(おおたのひめみこ)という天智天皇の娘が嫁いでいた
天武天皇が亡くなったあと持統天皇となった鸕野讚良は自分の息子である草壁皇子を天皇としたかったが
天武天皇と姉の大田皇女との子である大津皇子が煙たくなった(大津皇子はとても人望があったらしい)
そこでこの映画のように大津皇子に陰謀があったとの疑いで、あっという間に彼を捉え死刑に処してしまった
この陰謀は後にはでっち上げということになったらしい
このあたりの話はそれとなく万葉集にも載っていて大津皇子の歌は痛切な感じだし
大津皇子と彼のお姉さんの大伯皇女との万葉集に収録されているやり取りは、すでに自分の運命を
予感しているような感じだ

それにしても偉くなると、いろいろ悪いことも考えなきゃならないし、、夢見も良くなさそうだし
そんなことならぼーっと生きてる小市民のほうがずっと幸せかもしれない、、と思ったりする

ところでこの映画の評価は、、、まずまず、、
少なくとも膨大な火薬を使ったり車をぶっ壊すようなシーンがあるものよりは好ましい




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