ガラパゴス通信リターンズ

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思い出のアルバム3(太郎もはや中学生・声に出して読みたい傑作選96)

2009-11-23 17:00:24 | Weblog
太郎が幼稚園に通っていたころ、11月23日の勤労感謝の日は、「お父さんと遊ぶ日」だった。父と子が幼稚園から、市の境を超えて6キロの道を歩き、森のなかの大きな公園で遊ぶ。これが大変な苦行だった。
 
 幼稚園児と歩くのだ。6キロといえば2時間近くかかる。おしゃべりをしていれば別に辛くもないだろう。しかしまわりはお父さんばかり。「男はだまってサッポロビール」の人たちである。何も話題がない。ただ黙々と歩くのみだ。とても辛かった。

 それでも努力をして周りの人に話しかけてみたことはある。太郎が年少組の時、たまたま隣にはいあわせたお父さんは大企業のエンジニアで、国分隼人のテクノポリスで働いていたという人だった。よかった。ぼくも鹿児島暮らしが長かったからこれで接点ができたと思った。「どこにおすまいでしたか」。「加治木です。あなたは」。「谷山です」…。これで終わりだ。全然話がはずまない。ぼくも含めて日本の大人の男というのは社交ができない。肩書きや地位を抜きの、裸の人間同士の付きあいということができない動物なのだと思った。

 寒風吹きすさぶなかを歩き続け、ようやく公園にたどり着くと、今度は「お父さんは強い」系のゲームが待ち受けている。太郎が年少の時にはクラス対抗でお父さんが子どもをおんぶして走るリレーをやらされた。骨髄移植を受けた翌年である。まだ免疫抑制剤を飲んでいた。死ぬかと思った。これをお父さんたちは必死の形相でやるのである。「お父さんは強い」。いついかなる時でも負けてはならないのだ。

 帰りは電車で帰る。公園から駅までの道すがら、何人かのお父さんが「ああ、今日は楽しかったな」と顔面神経を引きつらせながら言うのが例年のことだった。一体どこが楽しかったのだろうか。太郎が卒園して、この行事から解放されて正直ほっとしている。近年の勤労感謝の日は、太郎と一緒にヤクルトスワローズのファン感謝デーに行く日になっている。

1 コメント

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久しぶりに (加齢御飯)
2009-11-23 17:12:32
 今日は3年ぶりにファン感謝デーに行ってきました。今年の名場面を振り返る企画がありましたが、さすがに青木選手はよく活躍していたなあと思いました。
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