ガラパゴス通信リターンズ

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無菌室のエスノグラフィー

2006-11-12 10:55:48 | Weblog
これまで何度かこのブログにコメントをいただいた方が、現在無菌室で闘病を続けておられる。その方がネット上で毎日日記を書いておられるのだが、やはり7年もたつと骨髄移植の現場も大きく様変わりするようだ。まず無菌室と書いたが、この方の場合は普通の個室に大規模な空気清浄装置をもちこんだという表現の方が正しい。機器の高度化でかつてのような大げさなインフラが必要なくなったということだろうか。

 私の時には無菌室へのワープロパソコンのもちこみはできなかったが、いまではネット上で多くの方が、闘病の模様を「実況中継」しておられる。ネットの存在は、患者さんにとって情報収集・情報発信の上での大きな武器といえる。無菌室の外側の人間にも、友人の容態がリアルタイムで分かることは非常にありがたい。しかし、過酷な治療である。また自分自身その経験がある分、読むのがつらい部分があるのも事実である。そして無菌室のなかからの発言がとぎれるとやはり心配になるものだ。

 私のネット上の友人も移植から60日ほどたった。いろいろと不調はあるものの、骨髄の生着は順調で、医者はそろそろ退院してかまわないという口ぶりであるという。私は移植後65日で退院したが、これは骨髄移植患者としては、当時の病院での記録になるのではないかというほどの短時日の入院である。当時は移植後100日が退院の目安だったのだ。

 7年前の「記録」とされたものが、いまは標準となっている。といえば言いすぎかもしれないが、明らかに入院の日数は短縮されている。これは長期の入院を認めなくなった保険医療制度の改革とも無関係ではないだろう。しかしそれだけ移植医療が進歩したということでもある。血液疾患の治療法の目覚しい進歩は、私も入院中から感じていた。一日永らえれば、医学の進歩のおかげでもう一日おまけがつくかもしれない。そんなふうに考えたことを思い出した。