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安全地帯&玉置浩二が大好き♪
ダンナと2人のムスコと過ごす、平凡だけど特別な日々を、気ままに綴ります。

武士道とは・・・(薄桜記/ネタバレあります!)

2012年09月23日 | テレビ
スタッフブログより写真お借りしました。鋭い眼光が男前っ!



BS時代劇「薄桜記」最終回、3回目を見た。
見るたび、胸が詰まる・・・


以下、ネタバレです。地上波放送を待っておられる方は、この記事は読まない方がいいと思います。






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吉良家に入ってからの典膳は、なんだか寂しそう。
上野介・富子夫妻の粋な計らいで、再び千春と夫婦となれる日が来るというのに。
浪人になって、谷中の墓地で千春と再会した時の典膳は、はっきりと気持ちを表には出さないのに、なんだか嬉しそうで。段差のある場所で、(離縁前と同じく)やさしく手を差し伸べたりする。なのに。吉良邸で、「もう、離さぬぞ」と言いながら同じく手を差し伸べた典膳。でも、表情は心なしか険しく見えてしまった・・・
10話では、「わしはここでも疎まれておる」と、はっきりと口に出す。自分の居場所、「死に場所」が見つからず、苦しんでいるのが痛々しくて・・・
9話で、茶室で上野介と二人きりで話した時。上野介に「どんな死に方をしたいか」と問われ、「皆目、見当がつきませぬ。それがしは素浪人にござりますれば、守るべき家名も、命を捧ぐべき主君もござり申さず・・・」と答える。これが、典膳の本心。今の自分は「剣一筋に生きてきた」武士として、何に命を掛けるべきなのか。どこに「死に場所」があるのか。それが見つからず、ずっと苦しんでいる。
この時、「吉良の家名を守るためなら、たとえ討たれても犬死ではない」という、上野介の覚悟を聞かされた。この時典膳は、上野介を、吉良家を守ることに命を掛けようと思っていたんだろうと思う。ところが。
一向に討ち入りが行われず、吉良邸内では緊張感が薄れていた。かつて、茶室で膝を突き合わせて上野介の覚悟を聞かされたのに、当の上野介ですら茶会のことで頭がいっぱいで、討ち入りから必死で守ろうとする典膳の助言すら聞かず、今では一人危機感を募らせる典膳を疎ましくさえ思っている様子。これじゃ、せっかく見つけた「死に場所」が、また見えなくなってしまうよ・・・

千春との、今度こそ本当に最後の別れをして、安兵衛の元へ向かう。
典膳は、安兵衛に討たれ、赤穂浪士に無事本懐を遂げさせることを自分の「死に場所」と決めた。「守るべき家名」も「命を捧ぐべき主君」もない典膳は、安兵衛からの恩義と友情に報いることを、自分の「死に場所」とした。安兵衛のために死ぬことに決めた。

安兵衛との最後の闘い。壮絶な、哀しい表情で。ここまで、見たことがなかった、あんな表情。最初に道場で安兵衛と出会った時と全く同じ形で、喉元で刀を止める典膳。本来なら安兵衛は斬られたはず。なのに・・・安兵衛への恩義に報いた。「わしにも死に場所があったな」と言った典膳は、満足そうな穏やかな表情で。さっきまでの壮絶さは影を潜めていた。
安兵衛は、辛いよね・・・最後の最後まで、典膳を斬りたくなくて。敵味方にはなりたくなくて方策を立てていた。なのに、結局は自分が手にかけてしまった。でも、安兵衛も武士。典膳の想いは痛いほどよくわかっていたはず。哀しいけど・・・それでよかったんだ。ほんのちょっとだけ映った、討ち入り場面。安兵衛に迷いはなかった。安兵衛は典膳の恩義と友情に報いるために奮戦した。

どんなに辛い境遇にあっても、決して心を乱すことがなかった典膳。愛妻の不始末を知っても、片腕を失くしても、事実を口止めされても、家名断絶を申し渡されても、浪人になって長屋住まいになっても、用心棒に身を落としても。いつでも冷静に、自分の運命を受け入れてきた。なのに。千春にだけ見せた、心の中の弱い部分。今にも泣き出しそうな口調で。「もう、そんなに頑張らなくていいのに!」って言ってあげたかった・・・

千春との、平凡ながら温かい日々が、ずっと続けばよかったのに。
長屋での、安兵衛とともに過ごした穏やかな日々が、ずっと続けばよかったのに。
紀伊国屋の誘いを受け、刀を捨てて、長崎で心機一転新しい人生を歩めばよかったのに。
転機は何度もありながら、その度に悲劇的な方向へ進んで(進まされて)しまう典膳。あまりに哀しい生き様を見せられて、胸が苦しくなる。

千春は千春で、苦しんだんだろう。
自分の不始末で、愛する夫の人生を狂わせてしまった。自分も、愛する夫と引き裂かれてしまった。
本当は、死ぬ覚悟だったと思う。でも、「死ぬるなよ、わしのためにもな」と典膳から言われ、それを忠実に守った。一途に、典膳を想い続けた。
典膳と出会ったまさにその場所で、既に冷たくなった典膳を見つけ、寄り添って、2人はようやく永遠に結ばれた。やっぱり、春は来なかったけど・・・もう、決して離れない。千春の決意を見た。

エンディングテーマのバックで、これまでの映像がフラッシュで映しだされた。安兵衛と楽しげに酒を酌み交わす場面を見て、涙が止まらなかった。

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最初から最後まで、美しい物語を見せてもらいました。ありがとう。