怪道をゆく(仮)

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怪道vol.95 三日月の円くなるまで岩手県~その伍

2008年05月18日 03時14分39秒 | 怪道
さて、カッパ淵です。
赤いお顔のカッパちゃンを求めて、行って参りましたカッパ淵へ。すごいですョ、カッパ淵はいまや「名勝」なんですって。



【名勝 めいしょう】
1.景色の良い土地のこと。名勝地ともいう。
2.日本における文化財の種類のひとつで、芸術上または観賞上価値が高い土地について、日本国および地方公共団体が指定を行ったもの。(Wikiより)

文化財保護法109条によれば「記念物のうち重要なものを史跡、名勝又は天然記念物に指定すること」ができるんですが、おそらくカッパ淵は「山岳その他の名勝地で我が国にとって芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む)」(同法第2条)が「記念物」として該当するとみなされたと。そう思うと楽しいのでそういうことにしておきましょう。

遠野でのカッパ伝説は豊富で、この地域のカッパの特徴はその顔が赤いことが挙げられますが、大塚英志の『くまはち』などでもとりあげられた松崎村のもの(「遠野物語」55話)や、小烏瀬川姥子淵のカッパ駒引き話のような全国的に分布の見られるもの(58話)を始め様々です。上記の「名勝」として指定されているカッパ淵は土淵町土淵の、常堅寺裏を流れる蓮池川にあります。

そう、「名勝 カッパ淵」は蓮池川のカッパ淵なんスよッ。このカッパ淵、ガイドブックだの旅行記事だのに決まって「遠野物語の舞台となったカッパ淵」とありますが、この蓮池川のカッパの話は遠野物語には出てきませんし、ましてや58話の小烏瀬川姥子淵でもありません・・・というのも、はずかしながらこのアテクシも、来るまではここが姥子淵なんだと思ってましたからw 小烏瀬川は猿ヶ石川の支流でこの蓮池川が流れ込む川。ここからもう少し北西を流れており、姥子淵はそのさらに上流の方にあるようで。ひどいなァと苦笑いです。ちなみに泊まってたホテルで語り部さんがカッパの話をしてくれたんですが、58話の姥子淵カッパ淵は「名勝カッパ淵」の話ということになってました。こうして昔話は書き換えられるんですナァ。

さて、この「名勝 カッパ淵」のカッパ淵は通称「阿倍屋敷のカッパ淵」とか言われているもので、その辺にいたオッチャンに聞いたところ大筋は姥子淵の話と同様なんですが、祠をたてて祀ってやるからもういたずらはするな、と約束をして放した、という終わり方なんだそうです。遠野物語には掲載がないにもかかわらずこのカッパ淵が遠野を代表するものとなったのは・・・立地の良さと、やはり、カッパじぃちゃんこと阿部与市サンの息の長い目撃話で有名になったことによるものなんでしょうか。

ちなみにカッパ淵をはさんで常堅寺の対岸に「阿部屋敷跡」と言われる場所があります。字は違えど「阿倍」とは前回にお話した安倍貞任のアベで、マァその一族が住んでたらしいッス。屋敷と名の付く家に住みかつ馬の世話をする人間を別に雇うような家ですから、土地柄そんな家が「阿部」を名乗るのはありえる話です。そしてさらにありがちにも義経が逃亡中に寄ったらしいデス←お話好きの土地がほっておくわけがないネタw カッパ淵にたたずむカッパの祠より一段高いところに稲荷社があったんですが、さしずめ阿部屋敷の屋敷神だったのかな、というところ。去年の10月頃から講談社が出してる「日本妖怪大百科」創刊号の見開き1ページ目を飾った謎のオブジェ群があるのも、この阿部屋敷の裏手デス。


「阿部屋敷のカッパ淵」とカッパ祠。中にカッパじいちゃんの写真が飾ってあった(4年前にお亡くなりになったそうで)。


「当分の間水路工事のためカッパ淵には水が少ししか流れていません」・・・カッパも大変ですナァ。

国道340号線を市街地に戻る途中、八幡山(遠野盆地の東側にぴょこんと張り出している山)の麓に「キツネの関所」なる看板を見つけ、立ち寄ることに。この「キツネの関所」は遠野では町外れによくあると言われるもので、遠野物語にもキツネにだまされた村人の微笑ましいエピソードがいくつか残っております。町はずれということはすぐ近くに集落があったと言うことデスヨネ~とウロウロしていると、国道から山の北麓に入っていく道に「倭文神社」の案内板を発見。なんでも慶長年間以降、修験道の寺院として修行道場となっていたが、明治に「倭文神社」と改めた云々とある。それはオモシロそうだワ、とフラフラと集落に入っていくと。

この集落、「五日市」だったんです。で、どうやらこの現・倭文神社、「遠野物語」110話に出てくる、「新張のゴンゲサマ」と争って耳をとった「五日市のゴンゲサマ」らしい。そしてこのゴンゲサマに負けた「新張の八幡社の神楽組のゴンゲサマ」というのが、八幡山の南麓にある遠野郷八幡宮のゴンゲサマ。つまり340号線沿いのキツネの関所は、五日市と新張のちょうど村境に位置するというわけですね。なぁるほど・・・ってなにがwな感じですが、妙に納得してしまったワタシ。

修験の道場だった頃は文殊菩薩を本尊としていたようで、拝殿には今も「文殊社」の額がかかっています・・・「堂」じゃなくて「社」なところがまたイイですね。ご一新で倭文神社に改められたのはもちろん神仏分離の嵐がここにも吹き荒れたからでしょうが、社名のチョイスはオシラサマが語られるような養蚕文化地帯ならではと思っていいのかしら。ただし倭文神社といいつつ祭神は建葉槌命ではなく天照皇大神・瀬織津姫命・下照姫命。これはググってみたところ早池峰神社系の神サンなんだとか。名前だけ持ってきたのかナァ。

というわけで、遠野1日目はこんなふうに過ごしましたとサ。



倭文神社。


倭文神社の狛犬。ラヴリー


五日市と八幡の境にあるキツネの関所。


ようやく見つけた赤い河童。郷土人形・附母牛人形のカッパチャンは赤かった。

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2 コメント

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赤河童 (つんたろう)
2008-05-18 18:08:51
実は胡瓜と色分けするために偶々赤色にされただけだったりして。
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あー (主催者)
2008-05-18 18:25:45
なるほど、ありえるかもしれないッスねw
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