一周年ヨモヤマ話は本日起き抜けの午前6時半頃に削除いたしました、スイマセン。なぜって、あまりにもイタい内容だったもんですから(汗)。この時期私が一周年、というたら遍路に決まっておりますわけで、・・・まぁ、お察しくださいw
というわけで。本日、3月より始まった埋蔵文化財発掘調査現場の整理事務所を閉鎖、本格的な整理作業のための事務所へ移転しましたことを記念しまして、発掘調査現場の裏話・・・というほどでもないですが、思いつくままにチラホラ。ちょっとおおげさなタイトルをつけてみましたが尻つぼみになるのは目に見えてますので適当に読み流してくださいねw
1.
さて。考古学というのは学問でありますが、発掘調査とは、極論でいえば考古学という学問をするための、単なる「技術」に過ぎません。そのような現場を指揮する技術を持つ人、言い換えれば、発掘調査をする資格というのは、果たして公的にどのように規定されているか、ご存じでしょうか?
実は、ありません、というのが正解。教師ならば教員免許が、医者ならば医師免許がといったふうに国家資格があったりするものですが、発掘調査員にはそういったものが存在しません。学芸員ですら「学芸員資格」なるうろんなものがあるにも関わらず、そして同じく公共財産である文化財を扱っているにも関わらず、です。
調査に参加してくる学生達は、考古学に必要とされる科目を履修してきてはおりますが、自動車免許に学科が必要であることとは違い、それはあくまで各自の志向におけるものに過ぎません。ご経験をお持ちの方はたくさんおられると思いますが、そもそも「考古学」という授業を受けたところで、発掘調査に関わる技術が学べるわけではありません。それらの技術は一般に、現場で直接たたきこまれ、かつ蓄積されてようやく得られるものなのです(技術的なことをちょっとかじれる、「考古学実習」なる教科を設けてる大学もありますが、あくまで「かじっている」程度に過ぎませんね)。
プロの調査員の資格とは、様々な現場主任のもとで調査に参加した、報告書を書くのを手伝った、という、言わば人脈等に裏打ちされた「経験」と実績に基づく信頼関係によるもの、ということができるかもしれません。もちろん歴史系や考古学系の学部・大学院を出ていることは就職において有利ではありますし、そういう方々が採用されるのが一般的ではありますが、だからといって必ずしもそうでなければならない公的な規定は何一つないんです。
ぶっちゃけ、現場で専門的な訓練をうけ実績をつめば、誰でもなれるんですよ・・・多分。現に、発掘調査をやっているのは市町村教育委員会や大学などの研究機関だけではありません。調査から報告書作成までやってくれる民間業者というのも存在します(安価でやってくれるのでそっちに委託する建設主も多いんですよ)。ですから、ワタシのように専門は文献屋であるにもかかわらず、技術さえ覚えればなんとかやっていけちゃったりするんです。
目に見えて技術がともなう職・・・であることから、かつて発掘調査員についてなんらかの国家資格を検討する本格的な動きがあったそうです。それが結果的に霧消したのは、おそらく統一的な基準が確立できなかったから、というのもあるんでしょうな。なんでも苦心して要項まで作ったものの、法制化の段階で見事に頓座した、というのがもっぱらの噂w(←詳しいことは知りませんが、法律家に要綱を提出したとたん「無理」と断られたとかなんとか)。いまやちょっとした笑い話です。
まぁ、そんな資格をつくったところで取得するための努力が面倒くさいだけですし、学芸員資格と同様、とっても結局何ということもないものになるのは目に見えているんですけどねw
2.
日本では、原則として市町村の教育委員会が作成した遺跡台帳とか遺跡地図(過去の遺跡があると推定される区域が書かれた地図)に掲載される地点に建造物をたてる時は事前の発掘調査が必要、というのが基本です。えぇ、なんでもかんでも建てる前には必要というわけではないんですよ、あくまでその区域に含まれていれば、なんです。とはいえわかっていないだけで何かが埋まっている可能性はありますから、そういった義務が当初発生していない場所であっても、途中で見つかった際には建築そっちのけで調査が始まる、というのは、皆さんもご存知の通り。
ですから、当然ながら発掘調査は開発と非常に密接な関係があります。文化財保護法では発掘調査をはじめる30日前には届出が必要ですから、遺跡台帳にかかっている部分になんらかの開発を行う際は、完成までの工期にくわえ、地中に埋まっている可能性のある遺跡に必要な調査期間をさかのぼって計算し調査開始時期を定め、さらにその一月前に文化庁に届ける、という作業が必要になる。手続きをしなければ開発そのものが始まりませんからね。というわけで、何らかの開発が行われるぞ、ということにもっとも敏感なのがこの業界、とも言えるわけです。時には、公表されていない開発の通達が事前かつ内密にやってくることもあるのですね。
ここで、現在進行形のとっておきのネタをご紹介いたしましょう。
かつて小泉政権の下で、猪瀬氏らの主導の下、一部区間を抜本的見直し区間とされ計画が凍結された「第二名神」と呼ばれる高速道路があります(現在は「新名神高速道路」なる名称がついてるようですが)。名神高速道路の渋滞緩和のために計画された三重~滋賀~京都~大阪~神戸を結ぶ新たな経路で、このうち見直し区間とされたのは大津~城陽区間と八幡~高槻区間。その理由は、2003年に開通した京滋バイパスなどと重複していたからであることは皆様もご存知の通りですね。
ところが。これについて、京都の埋蔵文化財関係機関が、今年に入った頃から動きはじめています。埋蔵文化財が動くということはすなわち、いずこかより、凍結されたはずの第二名神の開発に対するお墨付きが出た、ということです。まぁ、先だってとんでもない辞任をしたあの方の内閣の際に、進行した話なのかなぁと思うわけですが。まったく、ほんとに改革は続行していたのでしょうか、小泉路線(いいか悪いか、支持するかしないかはこの際置いておいて)は継承されていたのでしょうかねw。こういうことを見ていると、のび太くん政権で「揺り戻し」が~なんていいつつ、アベ~ル政権の頃からそれはすでに始まっていたかのようにも思うのですが。あるいは「凍結」そのものが当初からパフォーマンスだったのか?
・・・ということで、たまにマジメな話をしてみたらチエ熱が出そうになりましたので、今日はこのへんでお後がよろしいようデw。
というわけで。本日、3月より始まった埋蔵文化財発掘調査現場の整理事務所を閉鎖、本格的な整理作業のための事務所へ移転しましたことを記念しまして、発掘調査現場の裏話・・・というほどでもないですが、思いつくままにチラホラ。ちょっとおおげさなタイトルをつけてみましたが尻つぼみになるのは目に見えてますので適当に読み流してくださいねw
1.
さて。考古学というのは学問でありますが、発掘調査とは、極論でいえば考古学という学問をするための、単なる「技術」に過ぎません。そのような現場を指揮する技術を持つ人、言い換えれば、発掘調査をする資格というのは、果たして公的にどのように規定されているか、ご存じでしょうか?
実は、ありません、というのが正解。教師ならば教員免許が、医者ならば医師免許がといったふうに国家資格があったりするものですが、発掘調査員にはそういったものが存在しません。学芸員ですら「学芸員資格」なるうろんなものがあるにも関わらず、そして同じく公共財産である文化財を扱っているにも関わらず、です。
調査に参加してくる学生達は、考古学に必要とされる科目を履修してきてはおりますが、自動車免許に学科が必要であることとは違い、それはあくまで各自の志向におけるものに過ぎません。ご経験をお持ちの方はたくさんおられると思いますが、そもそも「考古学」という授業を受けたところで、発掘調査に関わる技術が学べるわけではありません。それらの技術は一般に、現場で直接たたきこまれ、かつ蓄積されてようやく得られるものなのです(技術的なことをちょっとかじれる、「考古学実習」なる教科を設けてる大学もありますが、あくまで「かじっている」程度に過ぎませんね)。
プロの調査員の資格とは、様々な現場主任のもとで調査に参加した、報告書を書くのを手伝った、という、言わば人脈等に裏打ちされた「経験」と実績に基づく信頼関係によるもの、ということができるかもしれません。もちろん歴史系や考古学系の学部・大学院を出ていることは就職において有利ではありますし、そういう方々が採用されるのが一般的ではありますが、だからといって必ずしもそうでなければならない公的な規定は何一つないんです。
ぶっちゃけ、現場で専門的な訓練をうけ実績をつめば、誰でもなれるんですよ・・・多分。現に、発掘調査をやっているのは市町村教育委員会や大学などの研究機関だけではありません。調査から報告書作成までやってくれる民間業者というのも存在します(安価でやってくれるのでそっちに委託する建設主も多いんですよ)。ですから、ワタシのように専門は文献屋であるにもかかわらず、技術さえ覚えればなんとかやっていけちゃったりするんです。
目に見えて技術がともなう職・・・であることから、かつて発掘調査員についてなんらかの国家資格を検討する本格的な動きがあったそうです。それが結果的に霧消したのは、おそらく統一的な基準が確立できなかったから、というのもあるんでしょうな。なんでも苦心して要項まで作ったものの、法制化の段階で見事に頓座した、というのがもっぱらの噂w(←詳しいことは知りませんが、法律家に要綱を提出したとたん「無理」と断られたとかなんとか)。いまやちょっとした笑い話です。
まぁ、そんな資格をつくったところで取得するための努力が面倒くさいだけですし、学芸員資格と同様、とっても結局何ということもないものになるのは目に見えているんですけどねw
2.
日本では、原則として市町村の教育委員会が作成した遺跡台帳とか遺跡地図(過去の遺跡があると推定される区域が書かれた地図)に掲載される地点に建造物をたてる時は事前の発掘調査が必要、というのが基本です。えぇ、なんでもかんでも建てる前には必要というわけではないんですよ、あくまでその区域に含まれていれば、なんです。とはいえわかっていないだけで何かが埋まっている可能性はありますから、そういった義務が当初発生していない場所であっても、途中で見つかった際には建築そっちのけで調査が始まる、というのは、皆さんもご存知の通り。
ですから、当然ながら発掘調査は開発と非常に密接な関係があります。文化財保護法では発掘調査をはじめる30日前には届出が必要ですから、遺跡台帳にかかっている部分になんらかの開発を行う際は、完成までの工期にくわえ、地中に埋まっている可能性のある遺跡に必要な調査期間をさかのぼって計算し調査開始時期を定め、さらにその一月前に文化庁に届ける、という作業が必要になる。手続きをしなければ開発そのものが始まりませんからね。というわけで、何らかの開発が行われるぞ、ということにもっとも敏感なのがこの業界、とも言えるわけです。時には、公表されていない開発の通達が事前かつ内密にやってくることもあるのですね。
ここで、現在進行形のとっておきのネタをご紹介いたしましょう。
かつて小泉政権の下で、猪瀬氏らの主導の下、一部区間を抜本的見直し区間とされ計画が凍結された「第二名神」と呼ばれる高速道路があります(現在は「新名神高速道路」なる名称がついてるようですが)。名神高速道路の渋滞緩和のために計画された三重~滋賀~京都~大阪~神戸を結ぶ新たな経路で、このうち見直し区間とされたのは大津~城陽区間と八幡~高槻区間。その理由は、2003年に開通した京滋バイパスなどと重複していたからであることは皆様もご存知の通りですね。
ところが。これについて、京都の埋蔵文化財関係機関が、今年に入った頃から動きはじめています。埋蔵文化財が動くということはすなわち、いずこかより、凍結されたはずの第二名神の開発に対するお墨付きが出た、ということです。まぁ、先だってとんでもない辞任をしたあの方の内閣の際に、進行した話なのかなぁと思うわけですが。まったく、ほんとに改革は続行していたのでしょうか、小泉路線(いいか悪いか、支持するかしないかはこの際置いておいて)は継承されていたのでしょうかねw。こういうことを見ていると、のび太くん政権で「揺り戻し」が~なんていいつつ、アベ~ル政権の頃からそれはすでに始まっていたかのようにも思うのですが。あるいは「凍結」そのものが当初からパフォーマンスだったのか?
・・・ということで、たまにマジメな話をしてみたらチエ熱が出そうになりましたので、今日はこのへんでお後がよろしいようデw。