先日京都に行った際、日本最後の煙管職人直売店という谷川清次郎商店に行ってきました*。場所は、京都は下京、御幸町通高辻上ル。
京阪四条からぶらぶらと散歩がてら下りていきますと、大きな煙管をあしらった意匠の看板とともに、濃青の暖簾がユラリと揺れる趣のある店構えが。木の引き戸は見た目そのままに重く硬く、両手を添えてようやくズズズとひらくほど。一歩中に足を踏み入れるや、古い町屋に独特の湿った臭い。ガラスケースに並べられた煙管。そして文机の上には羅宇のぎっしり差し込まれた筒が無秩序に置かれていました。
「えぇと、キセルを買いにきたのですが」
奥からフラリと出てきたご主人らしき方は、当たり前のことを言う小娘相手ににっこりと微笑んで下さいました。
煙管、あるいは喜世留。雁首と吸い口の金属部分を羅宇と呼ばれる竹管でつないだ、喫煙道具。鬼平が使ってるような、全部金属製のキセルもあります(つんさんいわく吸ってるとめちゃめちゃ熱くなるそうな)。日本へ伝来したのは慶長年間頃、語源はポルトガル語とも、カンボジア語で管を意味する「クセル」が、訛ったものともいいます。ちなみに雁首は「頭」を表すスラングだったたことから「雁首をそろえる」てな言葉も生まれました。また雁首は、煙草をつめる火皿の部分をペタンコにつぶして「雁首銭」と呼ばれた一文銭として差しに入れて使われたのはみなさまもご存知の通り。
Wikipediaをのぞいてきましたところ、煙管や煙草入れはお武家さんや大店の主人・番頭などのファッションやステータスのシンボルであったようで、贅沢の禁止と防火の意味から使用人には喫煙を禁止することもあり、誰もが使っていたわけではないんだそうです。言うてもそもそもが嗜好品なわけですからねぇ・・・確かに時代劇なんかでキセルを使っているのはちょっとステータスのありそうな感じの人が多いかもしれませんね(除く仕切人の龍之助さん)。ワタシがいた発掘現場では、雁首銭もですけど銅製の雁首、吸い口が近世の層からよく出土したものですが、やはり上京が富裕層の集住地だったからなのかなァ。
さてさて谷川清次郎商店のご主人、キセルは初めてというワタシに、懇切丁寧にキセルについてご指南くださいました。以下はその要約。
皆さんがお吸いになってるあれはね、タバコやのうてシガレットなんですよ。シガレットは紙で巻いてますやろ。せやから紙の味がする。煙草だけやったら味が落ちるもんやから、いろいろ混ぜ物をせんならん。けど、キセルで吸うんは刻みタバコです。ほんまもんの煙草。混ぜ物なし。ほんまの煙草の味がするんです。
キセルで吸うとね、2、3服でのうなってしまいます。刻みも細かいから火のまわりも早いし。でも、それでええの。タバコはね、イライラするから、しゃきっとしたいから、ゆうてスパスパやるもんとちゃいます。嗜好品や、てゆうでしょ。スッと吸うたら一瞬クラッとする浮遊感がありますな。ゆっくり、落ち着いて一服、そんでそのクラッとする感じ、それを愉しむもんなんです。
そんでね、羅宇のとこがフィルターになっている。羅宇が長いほどヤニがとれてえぇ味がします。でもあんまり長いと外には持ち歩けませんやろ?せやから、家でゆっくりしたはる時に、プカ、とやってもろたらええんですよ。
せっかくやから、吸い方練習していかはったら、ということで、一服二服やって参りました。これがまた、難しい。まず、持ち方は、雁首を先に見立てた鉛筆持ち。慣れないとこれがまたギコチなくてカッコ悪い。そんでもっていつものタバコのノリでひょいと吸うと、とたんぅあちちちち、となるわけです、火種も一緒に飛んでくるんですな。しかも100%煙草ですからキツいし辛いしゲホゲホです(このキツさ辛さがおいしいわけですけども)。もー、何度「軽ぅく吸うたらよろしぃのんや」と言われたことか(笑)。
ひとまずスタンダードなキセルと、布でできた手軽なキセル入れと、刻み煙草「小粋」を購入。柴はんに「ついでにアタシのも買うてきて」と頼まれておりましたので同じくキセル、キセル入れを買うたんですが、見た目はワタシのと変わりませんが雁首に使われてる金属が実はワタシのヤツはちょっと上等だったりしますハハハ。次はひとまず煙管入れがほしいですね。煙草入れと根付でくっついてるやつ、カマスとも言うそうですが。カマスを買えば次は根付に懲りたくなるんでしょうねぇ。煙草盆もあったらいいなぁと思います。灰皿と煙草入れが一緒になった、取っ手があるハコ状のやつ。
いまだ5回に1回はぅあちちちちとゆうてしまうほど不器用な吸い方しかでけませんが、いつかかっくいく吸えるようになったら、真っ赤な羅宇の花魁煙管がほしいです。

下から刻み煙草「小粋」、キセル、キセル入れ。キセル入れは見づらいですが紫です。
*・・・つんさん情報によりますと、東北の方にも職人さんで直売してらっしゃる方がいるそうです。
京阪四条からぶらぶらと散歩がてら下りていきますと、大きな煙管をあしらった意匠の看板とともに、濃青の暖簾がユラリと揺れる趣のある店構えが。木の引き戸は見た目そのままに重く硬く、両手を添えてようやくズズズとひらくほど。一歩中に足を踏み入れるや、古い町屋に独特の湿った臭い。ガラスケースに並べられた煙管。そして文机の上には羅宇のぎっしり差し込まれた筒が無秩序に置かれていました。
「えぇと、キセルを買いにきたのですが」
奥からフラリと出てきたご主人らしき方は、当たり前のことを言う小娘相手ににっこりと微笑んで下さいました。
煙管、あるいは喜世留。雁首と吸い口の金属部分を羅宇と呼ばれる竹管でつないだ、喫煙道具。鬼平が使ってるような、全部金属製のキセルもあります(つんさんいわく吸ってるとめちゃめちゃ熱くなるそうな)。日本へ伝来したのは慶長年間頃、語源はポルトガル語とも、カンボジア語で管を意味する「クセル」が、訛ったものともいいます。ちなみに雁首は「頭」を表すスラングだったたことから「雁首をそろえる」てな言葉も生まれました。また雁首は、煙草をつめる火皿の部分をペタンコにつぶして「雁首銭」と呼ばれた一文銭として差しに入れて使われたのはみなさまもご存知の通り。
Wikipediaをのぞいてきましたところ、煙管や煙草入れはお武家さんや大店の主人・番頭などのファッションやステータスのシンボルであったようで、贅沢の禁止と防火の意味から使用人には喫煙を禁止することもあり、誰もが使っていたわけではないんだそうです。言うてもそもそもが嗜好品なわけですからねぇ・・・確かに時代劇なんかでキセルを使っているのはちょっとステータスのありそうな感じの人が多いかもしれませんね(除く仕切人の龍之助さん)。ワタシがいた発掘現場では、雁首銭もですけど銅製の雁首、吸い口が近世の層からよく出土したものですが、やはり上京が富裕層の集住地だったからなのかなァ。
さてさて谷川清次郎商店のご主人、キセルは初めてというワタシに、懇切丁寧にキセルについてご指南くださいました。以下はその要約。
皆さんがお吸いになってるあれはね、タバコやのうてシガレットなんですよ。シガレットは紙で巻いてますやろ。せやから紙の味がする。煙草だけやったら味が落ちるもんやから、いろいろ混ぜ物をせんならん。けど、キセルで吸うんは刻みタバコです。ほんまもんの煙草。混ぜ物なし。ほんまの煙草の味がするんです。
キセルで吸うとね、2、3服でのうなってしまいます。刻みも細かいから火のまわりも早いし。でも、それでええの。タバコはね、イライラするから、しゃきっとしたいから、ゆうてスパスパやるもんとちゃいます。嗜好品や、てゆうでしょ。スッと吸うたら一瞬クラッとする浮遊感がありますな。ゆっくり、落ち着いて一服、そんでそのクラッとする感じ、それを愉しむもんなんです。
そんでね、羅宇のとこがフィルターになっている。羅宇が長いほどヤニがとれてえぇ味がします。でもあんまり長いと外には持ち歩けませんやろ?せやから、家でゆっくりしたはる時に、プカ、とやってもろたらええんですよ。
せっかくやから、吸い方練習していかはったら、ということで、一服二服やって参りました。これがまた、難しい。まず、持ち方は、雁首を先に見立てた鉛筆持ち。慣れないとこれがまたギコチなくてカッコ悪い。そんでもっていつものタバコのノリでひょいと吸うと、とたんぅあちちちち、となるわけです、火種も一緒に飛んでくるんですな。しかも100%煙草ですからキツいし辛いしゲホゲホです(このキツさ辛さがおいしいわけですけども)。もー、何度「軽ぅく吸うたらよろしぃのんや」と言われたことか(笑)。
ひとまずスタンダードなキセルと、布でできた手軽なキセル入れと、刻み煙草「小粋」を購入。柴はんに「ついでにアタシのも買うてきて」と頼まれておりましたので同じくキセル、キセル入れを買うたんですが、見た目はワタシのと変わりませんが雁首に使われてる金属が実はワタシのヤツはちょっと上等だったりしますハハハ。次はひとまず煙管入れがほしいですね。煙草入れと根付でくっついてるやつ、カマスとも言うそうですが。カマスを買えば次は根付に懲りたくなるんでしょうねぇ。煙草盆もあったらいいなぁと思います。灰皿と煙草入れが一緒になった、取っ手があるハコ状のやつ。
いまだ5回に1回はぅあちちちちとゆうてしまうほど不器用な吸い方しかでけませんが、いつかかっくいく吸えるようになったら、真っ赤な羅宇の花魁煙管がほしいです。

下から刻み煙草「小粋」、キセル、キセル入れ。キセル入れは見づらいですが紫です。
*・・・つんさん情報によりますと、東北の方にも職人さんで直売してらっしゃる方がいるそうです。
なんか市でやってる産業みたいです。
あと、桜の皮で煙草入と煙管入を作る職人さんが秋田にいるようです。
ちなみに煙草は「吸う」じゃなくて「喫(の)む」が正しいそうですよ。