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8mile ★エミネムとヒップホップ★ 共演:キム・ベイシンガー

2012年03月20日 | キム・ベイシンガー
  映画『8 mile』です。エミネムの実体験をベースにした物語といわれています。ただしフィクションです。Tasteととしてはプリンスの『パープルレイン』と似てる気がする。『パープル』も脚色されたプリンスの物語。しかし、彼らの物語なのにはちがいない。
 監督は、カーティス・ハンソン。代表作はアカデミー賞でも9部門でノミネートされた傑作『LAコンフィデンシャル』でしょう。元々、エミネムありきの作品ではなく、原案があってキャスティングでエミネムの名前があがったという事だそうです。元のタイトルは『ザ・デトロイト・プロジェクト』。デトロイトを舞台にしているとこもこの映画のkey。ハンソン監督もデトロイトに長期滞在して撮影したそうですが、街の空気がうまく画面に出てる。

 

 エミネム自身も、特別、自分の物語ではない、あの街(デトロイト)で自分と同じような環境の中で、現状を打破すべくもがいている奴の姿を代表して自分が演じたと。インタビューで、撮影自体は拘束されている感じで刑務所にいるようで二度としたくないというような事を述べていますが、“リアル”さにこだわったと。そしてその“リアルさ”が十分伝わってくる作品だと思います。
 
Maximum D12
クリエーター情報なし
Chrome Dreams

 一方で、映画でもエミネムが演じたラビットとつるむ仲間たちは、アルバムチャートで1位も獲得するD12をイメージしていると思われますが、そのメンバー達は、この作品はエミネムの成功をそのまま表現した映画だとも述べています。映画でやってきた事をエミネムはしていたと。みんなにリスペクトされるだけの事をあいつはしてきたと。
 ヒップホップは一種のUSAのカルチャー。なかなか一言で語るのも難しいように思うし、おれみたいにあまり知識のない者が調子のって語れるほど浅くもない。ヒップホップは元はニューヨーク発祥の黒人のカルチャーだったと思う。そしてヒップホップの根底にあるのは“怒り”だとも感じる。満たされた緊張感のない生活の中では生まれなかったスタイルのようにも思う。
 USAにおいて、やはり白人の優位性はあるわけで、貧困層の黒人は多かった。そうした中で、貧困への怒り、差別への怒り、“人間平等”なんてきれい事、理不尽なことだらけの世の中への怒り。生きるために物を盗み、ドラッグに手をだし、密売人にもなりバイオレンスの世界に生きるものもいる。そんなギリギリの中での思いをリズムとビートの上に言葉をのせる手法がラップ。
 ヒップホップミュージックの元祖と言われているのが、79年のシュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」。ヒップホップミュージックにおいて、リリックは重要だけど、そのリリックをのせるトラックがある意味さらに重要。リリックが薄っぺらでもビートとトラックがいかしていたらヒットする。「ラッパーズ・ディライト」はもちろんリアルタイムには知りませんが、そのトラックはナイル・ロジャース率いるCHICの「Good Time」のベーストラックが核となっている。ナイルもこのパクリには驚いたと述べていますが、静観したそう。チャート的には36位ですが、12週にも渡ってこのようなアンダーグランド的な曲がチャートインしたのは当時の人気を物語っている。
 一大ブームを巻き起こしたMCハマーもヒップホップになると思う。今となっては過去の人で、ハマー=ダサい、イメージもあるのも事実だけど、そうはいっても当時は、相当多くの人が彼のSOUNDとDANCEにはまったわけで(スキルも相当なもの)。実際、90年代のR&Bアルバムチャートの総合1位は、MJの『Dangerous』ではなく、MCハマーの『Please Hammer Don't Hurt 'Em』。80年代から活躍するLLクールJの甘いバラードラップなのもあるわけだし。80年代だとRUNDMCもパイオニアだった。結局、Hot100でそれなりに売れないとシーンで認知されないわけです。
 正直なとこエミネムはあまり好きなアーティストではないです。MJに対しても相当ふざけたPV作ってたし。敵を作るのは明らかなのに、納得いかない奴を批判する譲らないその姿勢はある意味すごいけど。エミネム云々よりも、もともとボーカルものが好きだし。ただヒップホップのかっこよさ、Coolさは理解できる。Producerで聞くスタンスが強いおれなので、ヒップホップ系も、80年代後半はTeddy Rileyが絡んだクール・モーディー、へヴィーD等を聞いていた。本格的にヒップホップ自体がシーンを席巻しだしたのは90年代に入ってだと思う。そんな感じでヒップホップのCDも数十枚は持っていますが、ライナーノーツを見ながらリリックはかみしめて聞くような感じは少ない。SOUNDとかっこよさを楽しむって感じ。パフィー・コムズが手がけたDance系ヒップホップというか、エンターテイメント系ヒップホップが好き。本格的に聞いたアーティストはNotorious B.I.Gかなぁ。かなり大雑把なくくりだと東海岸系(NY)になるんですかね。KaygeeのNaughty By Natureは好きだった。2Pacはほとんど聞いていない。
 ただヒップホップアーティストは、自身の生き様が曲となりアルバムとなる。薄っぺらな生き様だとすぐに見破られる。ヒップホップをファッション的に表現するアーティストもいるし、まぁそれもありだけど、コアなファンからは偽物と叩かれる。ただ自由さもヒップホップ。こうあるべきという形はないと思うし、時代時代、その時その時で変遷していくのも当然だと思う。
 そんな中、エミネムの登場はシーンに衝撃を与えた。やはり白人だったというのもその要因のひとつでしょう。白人のヒップホッパーといえば、ヴァニラ・アイスが浮かぶけど、「Ice Ice Basby」はめちゃ売れましたが、虚偽プロフィールで偽物ってのがばれて一発屋になってしまう。今や痛い白人ヒップホッパーの代名詞。でも彼のラップは普通にうまいし、実際あのTrackのセンスもいいと思うけど。(このIce Babyの版権をヴァニラ・アイスから脅し取ったのがシュグ・ナイトといわれており、Ice Babyで儲けた金がレーベル設立の資金の一部となり、ドレーやスヌープの傑作アルバム誕生につながったというのはおもしろい)
 SOUND的には、Dr.Dreの後ろ盾も大きかったでしょうね。ただエミネムの凄さは、この映画のようにデトロイトの貧困層から、自身の才能を信じ努力し這い上がっていったバックボーンをベースにしたその明確なメッセージとスキルの高さなんだと思う。サウンドのエンターテイメント性みたいなものはP.diddyのような感じはない。おれ、いわゆるドレーが手がける西海岸のギャングスタラップ系はスルーしていました。ヒップホップSOUND的にはDr.ドレーを抜きにしては語れないと思う。同業者にも一目置かれている存在ですよね。
 Jay-Zなんかエンターテイメント性とメッセージ性のバランスがいいのかも。ニューヨーカーの彼がストリートで育ってきた誇りみたいなものも感じる。
 前述の通りエミネムは好きではないけど、この映画の彼は嫌いではない。意外と小柄なんですね。この作品で描かれる彼の弱さは、それまでもっていた彼のイメージを変えさせた。
 そして、おれのFav女優のキム・ベイシンガーです。ハンソン監督が起用した『LAコンフィデンシャル』でついに助演女優賞を獲得しオスカー女優になります。



 そのハンセン監督と再び組みますが、この作品では、これまでにない汚れ役というか、新境地のキム・ベイシンガーがみれます。息子の学校の上級生とトレイラーハウスに同棲し、働きもせずその男とのセックスにおぼれている自立できない母親を演じる。セックスの相談を息子にまでしてしまう。しかし、時折母親としての顔も見せる。
 そんなキムとエミネム、実生活でも噂になります。当時、エミネムは29歳、キムは47歳。
 キムってどうも才能ある奴に惹かれてしまうのか、89年の『バットマン』の時もプリンスと噂になる。で実際短期間であったでしょうが、付き合ったんだと思う。その中で、プリンスはキムをキャスティングしてプリンスが生み出したバンド・The Timeの物語を制作しようとするのだけど、原案を見てキムが出演を拒否し、そこから二人の仲も終わったみたい。別の女優を起用して『グラフィティー・ブリッジ』というかなり痛い作品ができるわけですが。キムは出演しなくて正解だったと思う。その辺のネタはまた次回。
 とにかくこんなキム・ベイシンガーを見るのは初めてです。でもオスカー女優の貫録も感じます。
 エミネムにしろジェイZにしろ、相当頭はいいんだと思う。だいたい頭の回転が速くないと高速でしゃべれない。正直、しゃべりがとろい人ってあんまかしこい人ってみかけない。っていうか微妙なテンポの遅さは相手をいらつかせる。ジェイZなんてリリックを紙に書くのではなく、頭の中で構成を練り即興でラップできるのもすごい。そして言葉の力の凄さを感じる。単に言葉を並べるなら朗読になる。それにビートとテンポを加えるとさらにあらたな魅力が生まれる。
 映画の中でも、ラッパー同士の“バトル”も見どころです。肉体を使ってのバトルではない、言葉での戦い。言葉の暴力ってあるけど、激しいやりとり。相手を汚い言葉でディスればいいって話ではない。そこには知性もなくてはならない。もちろん韻を踏んだり、言葉をリンクさせたり、起承転結みたいなリリック構成もある。ある意味ラップって言葉遊びでもあるわけで。この辺を見ると、やっぱこの役はエミネムにしかできないよな等とも思ってしまう。こんなスキルとセンスあるラッピンできる白人のアーティストはいない。でエミネムの自然体の演技もいいし、リリックも映画にあわせてエミネムのアイデアも反映されているだろうし。
 こういう音楽的青春映画はプリンスの『パープルレイン』ともダブるとこもある。
 ヒップホップに否定的な人や、逆になじみのない人にもおすすめできる作品です。エッセンスとしてヒップホップはあるけど、青春映画だと思う。才能ある若者の苦悩、愛、友情を熱く描いた作品。
 


8Mile DVD プレミアムBOX
クリエーター情報なし
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

☆主題歌「Lose Yourself」は全米No1、アカデミー賞の最優秀楽曲賞も獲得。
More Music From 8 Mile
Proof
Interscope Records

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