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until You Come To Me を考察する Youは誰を指すのか? そして物語は最終章へ

2021年03月07日 | 映画・ドラマ
 『until You come to me.』という約5分の短編映像があります。「日本アニメーター見本市」(→正しい標記は日本アニメ(ーター)見本市)というサイトで2014年にUpされた作品。エヴァンゲリオンの制作会社カラーが運営しているサイトで、アニメーションの啓蒙活動も一環のよう。
 監督は、新劇場版エヴァで原画も担当している平松禎史氏。美術は、エヴァでも美術監督を担当している串田達也氏(ただしQでは監督のクレジットはない)。原作はもちろん庵野秀明。音楽は鷺巣詩郎氏。セリフはなく鷺巣詩郎氏のアレンジによるアイルランド民謡の「ロンドンテリーの歌」(別称「Danny Boy」)をBGMに静止画と動画がミックスされた郷愁感漂う空気感のある映像が展開される。たった5分の映像ですが、とても引き込まれる。
 そして、多くのモヤモヤ感を人々に与えたエヴァンゲリオンQの謎の解明にも通じる作品のようにも思うのです。


 この上記、エヴァンゲリオンのアウトテイク集は2016年7月に発売されたものですが、この鷺巣詩郎氏自身によって書かれたライナーノーツの「ダニーボーイ」の解説に「実は、この曲はQで使われるはずだった」と記載されているのです。さらに「すなわち『until You come to me 』とはQ内に連なるべき内容だったとあるのです。そして、これ以上書くとファンを困惑させるのでやめるという事で結んでいる。けっこう衝撃です。
 そもそもエヴァンゲリオン新劇場版の3作品目にあたるQの上映時間には不満がありました。あらためて公開済みの3作品の上演時間です。

 ◆ ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 2007年9月公開 上演時間:101分
 ◆ ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 2009年6月公開 上映時間:108分
 ◆ ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 2012年11月公開 上映時間:95分

 実際、完全新作的なQは引き込まれ度がすさまじいものがあってか、95分という時間にも短さを感じました。そしてアウトテイク集での鷺巣氏のコメントで「やっぱり!」という事になりました。Qにはまだ推測するに10分~15分位の内容があったのではないかと思うのです。で、なぜカットされたのか?
エヴァンゲリオンは文学品のように各自が行間を読みとく作品です。監督は、あえてここを削ってそういう含みをもたしたのか!?
 いやちがう、私はこう思います。ただ締め切りに間に合わなかったと(爆)。最終章となる4作品目も、公開されないのではないのかと思うくらい、延長の延長。最終的に公開が確定したのは2020年。当初の公開予定から大幅にずれ込んでいます。(今回、コロナ禍による再延期は英断だと思います。)
 庵野氏も言っているように、自身が鬱になる位、自身の魂をすり減らしてみなで作っている作品。とてつもないエネルギーと精神力が必要とされる作品なのだと思います。そして、結局、Qも最終的な部分で庵野監督が納得できず、中途半端なものを公開するくらいならカットしようとなったのではないかと思うのです。
 さらに、Qの最後に流れる映像がエヴァンゲリオン最終章のネタバレ的な要素も含んでいたのでとも考えます。そうなるとFINALのインパクトがうすれてしまう。その点もカットした要因としてあったとも思います。結果的に、それが大きな謎と波紋を呼び、またこのQと新劇場版の価値が高まったと思うのです。以上は、私の勝手な想像です。

 結局、Qでカットされた映像と内容が「until You come to me」ではないかと思います。

until You come to me [1080p]

 
 最初「until You come to me」って『破』の後のサードインパクトの後の映像かとも思ったのですが、『破』の後、シンジくんはエヴァ初号機に取り込まれた状態でしたので、外に出て歩いているのはおかしい。
 そうなるとやはりフォースインパクトの後のイメージのように思います。Qでシンジ君は、カヲルに14年たった世界を見せられます。そこは人が住む世界ではなくなっています。大地は赤くなり(コア化)、不完全な形で巨人化(エヴァ化?)した人たちの死骸が散乱しています。この有様を作ったきっかけが自分自身と知ることになるのです。しかし、カヲルにエヴァに乗れば元の世界に戻せると言われ、ダブルエントリーのエヴァに乗り込み事を起こそうとしますが、またまたカヲルの読み違いで、フォースインパクトを起こしてしまい、世界はさらにひどい有様になります。ミサトらヴィレの活躍によりフォースは止められますが、絶望の淵のシンジくんはエントリープラグから出てきません。
 Qの最後は、アスカが無理矢理シンジをプラグから外に出します。そして立つことも歩く事もままならないシンジくんを支えて前に歩き出す所でQはエンディングを迎えます。

 この『until』は、もう一つのエンディングパターン、それも最終章につながるシーンがあったのではないかと推測します。
 本来バージョンとは違い、シンジはしばらくエントリープラグの中にいて、ここに居続けても仕方ないと思い、シンジくんは外界に出て歩き出す。誰もいない世界、その中をあてどもなく歩き続けるシンジ。それが『Until You ---』での彷徨うシーン。あらためて自分が引き金となっておきたインパクトの惨状を目の当たりにする。そして、その彷徨の中、最後に何かに出会い彷徨は終わり、ファイナルに向かう、的な。
 
 ここでタイトルの「Until You Come To Me」が浮かんできます。アイルランド民謡の「ロンドンテリーの歌」に歌詞をつけたのが「ダニー・ボーイ」。両親や祖父母が戦地に赴く息子や孫を送り出す思いを綴っていると解釈されている。そして、最後のリリックが

  And I shall sleep in peace until you come to me. で結ばれている。  あなたが私の所に戻ってくるまで私は天国で安らかに眠り続けるわ と。

 待ち人が帰ってくるときには、自分はすでにいないという設定でもある感じで切ない。でもきっと別の世界で会えるという思いを切々と綴っている。そして、これは、碇シンジくんの母、碇ユイの思いではないのかと感じるのです。ですのでここでいうYouはシンジくんという事になります。そしてユイは、エヴァンゲリオンの実験で、肉体を消失し自らエヴァの中に取り込まれている状態。そして、ユイの夫、碇ゲンドウはユイに会うことを最大の思いとして命を削って行動している。ただ、リリン(人間)の王と言われているゲンドウが、妻一人のために行動しているとも思えない。ある意味、ユイもふくめ魂を肉体に戻すため(人類の救済?)にゼーレに背き行動をおこしている気がする。それが人類の起源と行く末という大きなテーマも包括しながら描かれる気がする。
 そして、Qで冬月司令官からユイのクローンが綾波レイという事が伝えられます。しかし、外見のみのコピーであってそこにユイの魂はありません。



 『Until You Come To Me』で、最後、シンジが見たのは、綾波レイ(=ユイ)でした。それは、エヴァンゲリオンの最初のシーンを思い起こさせる。そして、シンジは一歩を踏み出し彼女に向かって歩き出すのです。これは、やはり物語がループしているように思います。しかし、ループも無限にように思えません。『破』で月面で棺から出てくるカヲル。棺は9個並んでいて、カヲルは5個目の棺から出てくる。



 そして、「さあ約束の時だ、碇シンジ君。今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」と言うのです。そして、ゼーレの月基地を視察に来ていた碇ゲンドウに向かって「はじめまして、お父さん」と言うのです。カヲルはゲンドウんの事を知ってはいるけど、実際に会うのは初めてという感じ。一方のゲンドウはカヲルの事を”ゼーレの少年”という言い方をしている。この辺はいまだに解決していない謎ではあるけど、何かしらの因縁は続いているというのを感じる。

 そして、エヴァンゲリオンQで、最終的にフォース・インパクトは発動してしまう。インパクトは、1 → 2 → 3 → 4 → 5と段階を踏んで進んでいる。そして5のフィフスがファイナルインパクトになり、何か(人類補完なのか?)が完遂されるという感じ。フォースインパクトで、大型キノコのような生命の源とされている”黒き月”が姿を表わします。この謎も最終章で明かされるはず。

 どちらにしろ、エヴァンゲリオン新劇場版の最終章が、このコロナ災禍の中、ついに2021年3月8日から公開されます。2時間35分の上映時間。これまでの謎は、スッキリとした形で、驚愕と感嘆の思いをもって幕を閉じるのか!?それともまたモヤッとした余韻を残した形で終わるのか??どちらにしても、楽しみでしかない。


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