バンビの独り言

バンビことけーちんの、あくまでも「独り言」デス☆

「山間地の農家」の嫁からのお願い

2018-10-06 11:33:47 | いなか暮らし・ちんちゃん亭

うちは米農家です。
正式には「農家民宿ちんちゃん亭」という民宿を経営しているので、兼業農家です。

まず最初に謝罪させて下さい。


【謝罪1…無知ゆえの理想論】

私は子どもたちが小さい頃、月に2回ほど、子育て仲間たちと山に通っていました。
そこで、田んぼの体験をさせてくれることになり、世話人のおじちゃんが田植えの時に除草剤を撒きました。
うちの子もアトピーだったし「水に足を入れるとピリピリする」と言う子が他にもいたので「除草剤を撒かないで欲しい」とお願いしました。
そこで返った来た答えは 
「じゃぁ、毎週ここに通って田んぼの草取りしてくれ。俺たちだって本当は除草剤なんて撒きたくない。草の管理までできるのか?農業は草との戦いだぞ。田植えと稲刈りだけじゃほんとの米づくりは分からん」

ハッとしました。

また別の機会に、子どもには安全なものを食べさせたいと思うがあまり、減農薬の米を売ってる方に「減農薬ではなくてオーガニックのものを探しているので」と言ってしまったこともあります。

後に、グリーンママンで田んぼをはじめて、1日おきくらいに交代で草取りにいきました。
子どもが学校に行くのを見送ってから田んぼに向かうけれど、午前11時になるともう暑くて草取りができない…。
9時から炎天下で3時間草取りをしたら、午後から何もする気が起きないくらい疲労困憊してしまう。 

除草剤を撒かないとどれだけ大変か(熱中症との戦いである)ことを身を持って体験しました。
自分の家で食べる分だけつくるならまだいいかもしれない。
「農業をやっていない方の分の食料を賄う」としたら、それを手除草なんて有り得ないという現実。

私が今まで言ってきた「除草剤は撒かないで欲しい」「オーガニックを探しているので」の言葉でいろんな方のモチベーションを下げてしまっていたとしたら本当に申し訳ないと思ってます。


【謝罪2…身勝手な食へのこだわり】 

「牛乳は悪」だと信じていて、牛乳を子どもに飲ませていない時期がありました。
今でも積極的に「飲んだ方が良い」とは思っていないし、給食で強制的に牛乳を飲ませるのは時代遅れとも思っていますが、その時の私の発言や投稿で、酪農家の方たちに辛く悲しい思いをさせたかもしれない。 

玄米菜食こそがカラダに良いと思っていた時代は、一時ですが「肉=悪」と思っていたこともありました。
「玄米菜食」から「糖質制限(米食べない)」「肉中心の食生活」に大きく舵切りした人もいます。

日々、情報は変わっていくし、その人の思考も変わるものだけど、ブームに振り回される生産者がたくさんいることも、今、身を持って感じています。

というように、わたしも散々でした。 

なので私は偉そうなことは言えません。
「おめーに言われたくねーよ!」とディスられるの覚悟で今の現状をお伝えしたいと思ってます。 


「山間地の農家は大変です」
けーすけはお世話になったふるさとを守るために脱サラし、集落営農を引き受けることに決めました。

山間部は高齢化がすすみ、自分で田んぼを管理することが大変なので耕作放棄地がどんどん増えていきます。
でも「もし田んぼの管理や田植えや稲刈りを代わりにしてくれる人がいるなら、先祖代々の土地を守りたい」と思っている人は大勢います。

私たちの住む押井町では「押井営農組合」をつくり、田植え機やトラクター、コンバインなどを補助金などを利用して購入し、利用量や農地の面積などで金額を出して、みんなでペイしていくというしくみになってます。
なんと!コンバインの金額は約800万円。
だいたいフルで使うのは1年のうちで1ヶ月ちょいくらいで、大切に使って10年間持つとして、1ヶ月で約66万円となります。
この高価な農業機械を自前で持てるのはほんっっとに大きな農地を持つ農家さんくらいです。
(※実際に2世などで、獣害のないまちなかで大きな農地を持っているところなどは、かなり儲かっているところもあるそうです)

けーすけは田植えの時期と稲刈りの時期、合計3ヶ月(1年のうち)くらいは、押井営農組合で時給1,000〜1,500円くらいで働いています。
「みんなでワークシェア・助け合い」の観点なので、重労働の割にはそんなに給料は良くないけれど、里を守るために頑張って働いています。


78歳のたけおさん。奥さまと一緒に稲刈りを手伝ってくれてます。

山間部の農地はとても小さいです。
そのため大きな機械を入れると、機械の向きを変えるだけでも大変!
無駄に時間も手間もかかります。

山の湧き水で育つ米は、めちゃくちゃ美味しい!けれど、農業用の水道をひねるのとは違って水の管理が大変です。
山が荒廃すると水にも影響するので、山の管理も必須です。
モグラが穴を掘ったり、イノシシがぐちゃぐちゃにするたびに、水が抜けたりして補修工事も大変です。 
自分でできても労力を使うし、業者に頼めばお金もかかります。 

それでも「ミネアサヒは美味しい!」「水がキレイだとこんなにも美味しいのか」と言ってくれるお客さまの声が嬉しくて、農家は頑張って作っています。

しかし、JAの米の買い取り価格は激安です(そもそも消費者の「コメの価値」が低いので)。
都会の大規模農家でしたらそれでも利益が出るかもしれないけれど、田舎の農家は、サラリーマンで稼いだお金で米を作ってる状況。
「JAに売ったら赤字になるなら知り合い(など)に販売すれば良いのに」と思いますが、ご高齢の方はSNSもやっていないし、販路を作れません。
今まで買ってくれていたお客さんも高齢化でだんだん少なくなっていってしまう。
結果、「損してまで米を作らなんでええ!米づくりは俺らの代で終わりだ。お前らはサラリーマンになって米は買えばいい」と息子や孫に言い伝えられているのです。
※その状況を少しでも改善するために、けーすけが農家から高く購入し、それにプラス電気代(24時間冷蔵保存している)や保管料、手間賃を上乗せして「旭のおじちゃんのお米」 を販売しています。

 

更に年々、獣害被害がヒドくなっています。

うちの田んぼの一部。
前夜まではイノシシにやられてませんでした(1日早く稲刈りできていたら無事だったらしい。涙)

まぁ、これ↑は今に始まったこっちゃないですが…。 
毎年こんな田んぼはいくつかあります。 

さらに、一昨年くらいから鹿が急に増えました。
イノシシと違って農地をぐちゃぐちゃにしないので修正はそう大変ではないけれど、電柵もワイヤーメッシュも優に飛び越え、一族で畑に入って、稲の穂先をむしゃむしゃ食べていきます。 
(※猟期は11月からなので、私たちは鹿たちに「出てってくれ〜」と追い払うしかないのです。鹿も殺されないのは分かっているので完全に人間をなめています) 

鹿が入ったあとはよく見ると穂先に米がなくなってます☟

私が稲刈りのお手伝いをしていたとき、ライスセンター(稲刈りした稲を乾燥し籾摺りして玄米30キロの状態にするところ)に米を取りにきた方が
「なんでこんなに少ないかねぇ」
と困惑していました。
去年は40袋(30キロ×40袋=1,200
キロ) 収穫できていたものが今年は18袋でした。
計算上660キロ、鹿に食べられたことになります。

本来なら「実りの秋・収穫の秋」はどの人も笑顔が輝いてるはず!
新米が食べられる、遠方に住む家族に送ってやれる…
が、ガックリ肩を落として帰っていきました。
これ以上獣害が増えたらきっと農地は手放すでしょうね。
だって赤字だから。

かつて、うちでつくった自然薯は400本全てイノシシに食べられ、損害は20万円以上(人件費は無視)でした。
さつまいもも今年は全滅。
そんなに栄養満点な食料をたらふく食べているイノシシは、昔に比べて「繁殖は5倍」になったとも言われています。 

「動物が住んでいた住処を人間が侵しているから、食べ物がなくて里に降りてくるようになった」のでも「『獣害』といって山の動物たちを殺すのは人間の身勝手」なのではなく、
「木の実をちびちび食べているよりも里の方が美味しい食料にありつけるから」
「繁殖が5倍になったから」
こんなに獣が増えたという方が正しいようです。 
この「無理解」が、山間地の農家や猟師たちのやる気を削いでいます。 


私は検証してませんがこんな考察も☟ご参考に
「山にドングリの木を植えたら、獣害はなくなる?」
https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20150810-00048357/


「イヌを田んぼの回りで放し飼いにするといいよ」「オオカミの糞やおしっこを撒くといいよ」「猪が嫌がる機械があるよ」などいっぱい情報をいただいています(ありがとう♡)
が、試してみるにはお金がかかります。泣
(ロケット花火はやってるけど、大した効果は分からない)
うちみたいに「耕作放棄地を守るために点々と田んぼをやっている」ところには非現実的なことが多いです。


だったらジビエを普及せんといかん!
そのためには猟師を増やさないといかん!
ジビエを普及するためには、行政ぐるみで出口を保証しないといかん! 
と思います。


そこで、 

 

私が行政の方に提案するのは3つ

①鹿が入れないような大きなワイヤーメッシュを農地に設置
(設置費用は全て国が払う)
※山間部の農家はあれこれ試すお金も余裕もありません

②JAのコメ買い取り価格を営農持続可能な適正金額にする
(農薬だらけの米もオーガニックも一律、大規模農場のお米も山間地の旨い米も一律、では厳しい)

③地元のジビエ肉を、学校給食や市役所の社食などに積極的に使う
(ジビエは人件費がかかりどうしても高額になってしまうのでその部分は税金で賄う

オリンピックに湯水のようにお金を使うよりもずっと賢いお金の使い道だと思うのですが、いかがでしょう? 

 

消費者の方には、日本の農業を守るために「適正価格でコメを買う」ことをお願いしたいです。

私の過去ブログ「保存★毎日食べているお米の値段
https://blog.goo.ne.jp/banbiblog/e/b2f36b1f9af901776e945692c75bb128

 

今は、糖質制限・糖質ダイエットが流行っています。
それで病気が治るなら、体調が良くなるなら、それも良いことと思います。

が、先日、新幹線で隣の席に座ったかっぷくの良い男性は、デラックスハンバーグ弁当を食べていたのですが、コメを一粒も食べずに「ゴミ」として捨てました。
いつもはおかずだけ買っている人かもしれない、今回はたまたまかもしれない。
でも、JAに安く買い叩かれ、安く出回っているコメが、こうして安易に捨てられていく。
それを目の当たりにすると米農家は辛いです。
それが単に一過性のブームであるとしたら更に辛いです。

(お米を食べない選択をしている方は、注文時にコメが不要なことを伝えて欲しいなぁ) 

そして、動物愛護の観点で無知による正論を振りかざさないで欲しい(モチベショーンがダダ下がりなのです)。
農業者を守ろうとしてくれている猟師もバッシングを受けているのが現状です。
狩猟批判をする方には「(オートメーション式に殺されていく)家畜の肉はOKですか?」 
猪や鹿を守りたい方には「米を買わずに作って食べて下さいね」
って正直思ったりもします。

なぜなら、山間部の農家は瀕死だからです。

 

追記(10/16)………

Facebookにこのブログを投稿したら、友人で治療家のやまむらひろのさんがシェアして下さいました。
その時の投稿文を紹介させて下さい。
https://www.facebook.com/hirono.yamamura/posts/10204669412491637
(コメント欄もあわせて読んでね)

耕作放棄地がなぜ多いのか、食糧自給率がなぜ低いのか、行政も消費者も、農業はじめ第一次産業という衣食住を賄うための根幹を担う産業を、大切にしてこなかったからです。長期的なビジョンで営んでこなかったからです。
その結果を引き受けるのが山間部の農家(日本の農家の多くが中山間地の小規模農家でした)って悲しすぎる。

獣害が深刻になった原因はひとつに特定できません。
いくつもが複雑に絡みあっています。
でも、特に猪と鹿に関して言えば、「里山」が失われたことが最も大きく影響していると思います。

知人の古民家から40年ほど前のその家の写真が出てきました。
今、家のそばまでうっそうと迫っている薮と森は当時は無く、明るい陽射しに照らされた裏山の斜面は一見ハゲ山のように見えます。
何故か。
燃料の薪や焚き付け用の柴、暮らしの道具の材料になる蔓や竹を日々利用していたからです。
こうした見通しのよい緩衝地帯があると、獣たちは里へは簡単に出没しません。
見つかったら逃げる途中で撃ち殺されるからです。
家の周りも、田畑の周りも、日本の里山はこういう一見ハゲ山に見える緩衝地帯があったと言います。それが燃料は化石燃料に、暮らしの道具はプラスチック製に代わり、竹藪も、雑木林も、人工林も手入れされなくなり、葛が生い茂る恰好の隠れ場になりました。いわば、招き入れているようなものでもあるのです。

狼の絶滅も影響しているでしょう。
山間部の農家に食害をもたらす獣を捕食する狼は信仰の対象になっていたほど、生態系にとって大切な存在でした。
捕食者の存在という緊張感と実際に捕食され間引かれることで、数が増えすぎないようにバランスが保たれていたのです。

更に猪は豚との交配で年にいちどの繁殖が2度になり、猪も鹿も凍結防止に撒かれる塩化カルシウムが溜まるところを塩場にするようになり、流産が減り、子どもの生存率が高まりました。

わたしが見聞きしただけでも、これだけの反省点があります。

そしてわたしが経験したのは、生肉を食べる犬の糞尿には実際に獣避けの効果があるということです。
へなちょこなニコラの糞尿でさえ、です。

東北には狼犬の糞尿を販売するなどの事業としても取り組みがはじまっています。

猟で間引く、
本来の里山の風景を取り戻す、
犬たちにはドッグフードではなくできれば獲った獣の肉を生で与えて田畑の周りを散歩させる、
特にお米の適正価格を守る

すぐに取り組めることもあります。
すぐには変化を感じられないかもしれませんが、行動しないよりマシです。

農家がやる気を失うと言うことは国が滅びるということです。

知らないことの影響力って甚大です。
知って選ぶ、行動する影響力がこれから大きな変化を産みますように。


「日本の山の木は切られ続けた 特に江戸時代〜明治時代は、はげ山だらけ」
https://matome.naver.jp/odai/2141821702648546201

 


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