履 歴 稿 紫 影子
香川県編 転 居
私は、4歳の春に父母と共に丸亀市へ転居をした者ではあるが、父はこの転居について、その履歴稿に、
1、明治39年5月27日、香川県丸亀市土居町へ転居す。
と、記録をして居る。
当時4歳であった私には、何故転居をしなければならなかったのか、と言う詳しい事情は知るよしも無かったが、成年後の私が、父母から聞かされた内容によると、私の祖母が他界をした以後に、家庭内の複雑な事情や災厄が累積したので家運が大きく傾いて、”嫁に行くなら豊穣の加茂へ、加茂は上水米所”と、郷土の人々が歌った上水地域の地主であった私の家も、遂に倒産をすると言う逆境に転落をしたので、祖先伝来の田地田畑と、300年来の由緒を誇った三町屋敷をも人手に渡して、悄然と丸亀市に転居をしたと言うことであった。