古新聞

 何年か前の新聞記事 070110

080811 ネット社会と凶悪事件 人と触れ合う子育て急務

2017-11-24 19:46:45 | 社会
IMGM0193-22

’08/08/11の朝刊記事から

ネット社会と凶悪事件
人と触れ合う子育て急務

ノンフィクション作家 柳田邦夫     




「人を殺したかった」
「誰でもよかった」−−−−

最近殺傷事件を起こした若者や少年が言う言葉だ。

なぜ、かくも安易に無差別に人を殺すのか。

この10年ほどの間に起きたわたものや少年による凶悪事件を分析すると、次のような共通項がある。

① 自己中心的で、他者に対し「かわいそう」とおもいやる感情が育っていない
② 不満や怒りを抑制する自制心が育っていない
③ ゲーム感覚で殺人を実行する
④ 社会から注目される(あっと驚かす)形態を選ぶ
⑤ 思うようにならないのはすべて他者(社会)のせいにしている
⑥ インターネットによるコミュニケーションがさまざまな形でからんでいることが多い。


IMGM0193-23

これらの問題の根底にあるのは、一つは、幼少期からの人格形成のゆがみであり、もう一つは、ゲームやネットなどの情報環境の問題だ。

この2点について私が真剣に考えるようになったのは、1990年代の終わりごろ、親しい小児科医から「最近日本の子どもたちの表情が輝きを失っている。テレビもない途上国の子供たちは顔が輝きに満ちているのに。子どもにもっと生身の人間同士の接触をさせなければ」と言われたのがきっかけだった。



IMGM0193-24

予言的な警鐘

子供の顔には時代の変化が投影されている。

ちなみに東京・秋葉原の無差別殺傷事件を起こした加藤智大容疑者は25歳。

その成育の時代は80年代前半に生まれ、80年代後半に幼年期、90年代に少年期だ。



IMGM0193-25

親の教育熱心が「いい学校・いい会社」という価値観によって過剰・過干渉になる一方で、家庭崩壊で子どもを放任する家が増え始めた時代た。

同時にゲームやビデオの急速な普及で、子どもたちがバーチャル(仮想現実)な世界に入りこみ、生身の人間同士の接触が希薄になり、命の感覚や他者の心を理解する感性が育ちにくくなり始めた。

97年の神戸連続児童殺傷事件の少年Aや2000年に各地で相次いだ凶悪事件の17歳少年たち、そして加藤容疑者は、まさにこの世代だ。

次の90年代前半から半ばに生まれた世代はどうか。



IMGM0194-10

90年代後半の保育園児たちの傾向に関する調査報告は
① 夜ふかしなど親のしつけの欠落
② すぐ暴力をふるう
③ すぐパニックになる
④ 自己中心的で自己抑制力が育っていない、などが顕著になっていることを明らかにしていた。

これは予言的な警鐘だった。

2004年に長崎県佐世保市の小学校6年の同級生を殺害した女児は、まさにこの世代だった。

成育歴のゆがみが深いがゆえに、早い時期にゆがみが表面化したといえるだろう。



IMGM0194-11

最後の居場所

80年代生まれにしても、90年代生まれにしても、2000年代になると、人格形成が未熟なまま、ケータイ・ネットやゲーム・ビデオという機械を介しての情報との接触やコミュニケーションが生活時間の大半を占めるようになった。

その結果、人格形成は自己中心的な傾向を強め、命の感覚、他者の悲しみを思いやる感性はますます育ちにくくなってきた。



IMGM0193-26

しかもネット上の個人による情報発信「ブログ」の世界一の普及、匿名発信による掲示板や学校裏サイト上への書き込みの広がりは、集団ネットいじめや、集中個人攻撃で快感を楽しむ「祭り」などのトラブルを数えきれないほど起こしている。

ネットを誰かに理解される最後の居場所と思い込んでいた若者が逆に中傷・攻撃されて、感情を爆発させ、劇場型犯罪に走る。

この実態は、ネット社会が負の側面で新しい危機的な段階に入ったことを示している。



IMGM0193-27

今、すべきことは、子育ての原点から立て直すことだ。

授乳中にケータイに熱中しているのはネグレクト(育児放棄)に等しいことに親が気づかない時代だ。

もちろんしっかりと子育てをしている親もいる。

子育てまで二極化している。



IMGM0194-08

一部の小中学校で、ノーテレビ・デーやノー携帯ネット・デーを行なって、家族や友達との生身の接触の大切さを気づかせることに成果をあげている。

乳幼児を持つ親に助言している小児科医もいる。

親が乳幼児期にたっぷりと「抱きしめる」関係を持てるようにする社会的な取り組みを急がねばならない。






080811 竹島の領有権 交流継続が解決の道

2017-11-21 20:24:22 | 政治
IMGM0193-13

’08/08/11の朝刊記事から


《 記者の視点 》

編集委員 近藤 浩


竹島の領有権 交流継続が解決の道
対話を重ね「紛争」回避



文部科学省が中学校社会科の新学習指導要領解説書に竹島(韓国名・独島)を明記したことに、竹島を実効支配している韓国が反発、道内でも”草の根交流”が中断される事態に発展していることを残念に思う。

交流を続けることこそが、領土問題を解決する素地になるはず。
韓国側は冷静に対応し、日本側も復活・継続を働きかけたい。



IMGM0193-14

昨年まで3年間、ソウルに駐在したが、竹島問題は苦い思い出だ。

2005年、島根県の「竹島の日」制定をきっかけに反日世論は沸騰、日本大使館へのデモ、流れる「独島は我が領土」という歌・・・。

危険を感じることはなかったが、こちらが日本人とわかると「独島はどの国の領土だ?」と議論を吹っかけられた。

そうした中、旭川市と姉妹関係にある水原市の市長の言葉が印象的だった。

「政治は政治。私たちの交流になんら影響しない」。

竹島問題が旭川市との交流に影響しないかと聞いた筆者に、そう答えた。

多くの日韓交流が中断されるなかで、心強かった。



IMGM0193-16

ところがこの夏。

旭川市が受け入れるはずだった水原市の高校生10人の派遣は、直前に取り消された。

水原市に聞くと、担当者は「今の雰囲気では仕方ない」と言葉少な。

費用が日本政府の予算だったことも影響したという。

北海道行きを楽しみにしていた子供たちを思うと残念だ。



IMGM0193-17

竹島問題による道内での交流中断は、旭川のほか、札幌の高校のアイスホッケー交流などが道に報告されている。

共同通信のまとめでは全国で104件の交流行事が中止など影響を受けている。

「交流中断は望まないが、それだけ怒っていると知らせる意味はある」と、ある韓国外交関係者は言うが、多くの日本人は当惑するばかりだし、韓国の主張を理解してもらおうとするなら逆効果だ。



IMGM0193-18

02年のサッカーW杯共催や韓流ブームなどで、日韓関係は成熟しつつある。

韓国の若者はマンガやアニメなど日本文化を愛し、北海道への旅行客も昨年度約17万人と2年前の倍以上だ。

ただ、相互理解はまだまだ足りない。



IMGM0193-19

竹島問題は典型だ。

韓国にとって、島根県が竹島を編入した1905年は日本が韓国を保護国に置いた第二次日韓協約締結の年で、植民地支配の始まりだった。

だから日本が領有権を主張すれば、過去の反省は口ばかりとなり、「再侵略の予兆」とさえ映る。

単なる領土問題ではない。



IMGM0193-20

溝を埋めるには、対話を重ねることだ。

韓国はその主張を伝えればいい。

わたしたちは不戦を誓った戦後日本の姿を知らせる。

その上で、領土紛争に発展しないよう双方が慎重に取り扱い、長期的に解決の道を探るしかない。

だからこそ「未来」の日韓を担う青少年交流に力を入れたい。



IMGM0193-21

実は、韓国の中学生の男の子を14日まで11日間、わが家で受け入れている。

民間団体の相互交流で北海道に来た8人のうちの1人だ。

「難しいときだからこそ、互いに交流を活発にし、理解を深めることがいいと思う」と、韓国の派遣団体役員は言った。

子供たちがさわやかな北海道で夏休みを過ごし、たくさんの日本の友人と、思い出をつくって帰ることを願う。





080811 小さくとも怒りの声を 〜 風 論説委員室から

2017-11-09 14:38:44 | 社会
IMGM0192-21

’08/08/11の朝刊記事から


小さくとも怒りの声を〜風 論説委員室から 加藤利器

東京都内で作家辺見庸さん(63)の講演を聴いた。

4年前に脳出血で倒れ生死の境をさまよった。

後遺症がなお残る。

「ぶざまな姿をさらしても最後まで書きつづりたい」。

権力と向き合う姿勢は揺るぎない。



IMGM0192-22

以前、道内で辺見さんに会った時、日本人の沈黙が気になるといっていた。

「人間は(怒らないという現状に)慣れていく。
どんどん慣れていく。
違和感もさっぱり感じなくなるんです。
小声でもいいから口に出してみる。
怒りの声を発していかなければ」

最近の日本の現状をみていて、その言葉がよみがえってきた。



IMGM0192-23

原油価格の高騰が世界経済を揺さぶる中、各国のテレビニュースが連日、国民の怒りを伝えている。
欧州ではトラックやタクシーの運転手が製油所を襲撃したかと思えば、漁民が港湾を占拠して流通が大混乱に陥っている。

決して許される行為ではないが、その迫力あふれる表情に圧倒される。

原油高がいかに深刻なのか。

むしろ海外メディアを通じて思い知らされる。



IMGM0192-24

日本では何も起きないのかと思っていたら、漁業者や酪農家が東京の都心部で抗議行動に出た。

普段は寡黙な漁民や農民が、控えめながらもこぶしを振り上げている。

これはよほどのことだ。

生産者だけではない。

われわれ消費者の暮らしも異常事態といっていい。

食料品や生活用品の値上げに次ぐ値上げ。

こんなことが近年あっただろうか。

それでも国民の怒りは極めて抑制的だ。



IMGM0192-31

かつて暮らしたフランスでは、国民の抗議行動が日常の光景の中にあった。

世の中がおかしい。

そう思うと迷わず街頭に出る。

警察官まで待遇改善を求めてデモを行っていた。

抗議行動は、市民の共感を呼び、連帯の輪が広がる。

デモの参加者がどんどん膨れ上がっていくのには驚かされた。



IMGM0193-04

日本でこうした現象に遭遇したことがない。

社会を根底から変革する市民革命はもちろん、本格的な政権交代も経験していない。
(注 '09/09/16民主党政権発足 ブログ管理者追記)

これが沈黙の背景にあると指摘する人がいる。

あながち誤りではないかもしれない。



IMGM0193-07

辺見さんは、最近の言論を取り巻く環境も視野に入れながら、「沈黙を保つ若い世代の存在が最も気になる」と話していた。

日常の中で自然な形で発散されるべき怒りのエネルギーが、思わぬ方向に向かっていることへの強い危惧があるからだ。

国内で相次ぐ、残虐な無差別殺傷事件を目の当たりにして、同じ思いを抱かざるを得ない。

格差に悩み、苦しみ、社会に憤る若者たち。

その怒りは本来、過酷な現状をもたらしている政治や企業に向けられてしかるべきだ。

ところが、激しい怒りは同じ側にいる市民に向けられ、命まで奪っていく。



IMGM0193-10

「若者たちは、自分の境遇を他者と連帯して変えようとするすべを知らない。
そこにあるのは若者の無力感であり、脱力感であり、極めて孤独な姿だ」


精神科医の香山リカさんがこう分析していた。


IMGM0193-11

こんな現状を放置していいはずがない。

より良い社会に変えていかなければ。

そのためには、小さくてもいい。

一人一人が怒りの声を発することだ。

正当な怒りを失った社会は衰退する。

辺見さんはこうも言っていた。



IMGM0193-12


その通りだと思う。

いつまでも「沈黙は金」ではいられない。





080811 グルジア 「軍事行動を停止」

2017-11-03 20:27:20 | 海外
IMGM0192-17

’08/08/11の朝刊記事から


グルジア 「軍事行動を停止」
  ロシアに文書で通告


【モスクワ10日共同】ロシアが軍事介入したグルジア・南オセチア自治州情勢で、グルジア外務省は10日、サーカシビリ大統領の決定に基づき同日から自治州での軍事行動を停止すると在グルジアのロシア大使館に文書で通告した。

インタファクス通信が報じた。

同外務省はグルジア軍は「戦闘地域」から撤退したとしている。



IMGM0192-18

ロシア外務省はグルジア側は停戦していないとしながらも、通告があったことを確認。

ロシア軍幹部も自治州の州都ツヒンバリの大部分をロシア側が支配したことを明らかにした。

ロシアのメドベージェフ大統領はグルジア軍が自治州から撤退するまでは軍事介入を継続する姿勢を示しており、グルジア軍の撤退が確認されれば正式な停戦合意に向けて双方が動き出す可能性がある。

グルジアが軍事行動停止を通告したことで、欧米などによる仲介努力も本格化しそうだ。



IMGM0192-19

ロシア軍は10日早朝、グルジアの首都トビリシ郊外の空軍飛行場を空爆。

ロシアが自治州を越えたグルジア領内で空爆を続けていることに欧米の懸念が強まった。

ロイター通信などによると、この空軍飛行場は戦闘機製造工場に所属。

3日連続の空爆でロシア側は制空権を確保する狙いとみられる。



IMGM0192-20

グルジア内務省当局者によると、ロシアは新たに6千人の部隊を南オセチアなどに投入したほか、同様にグルジアからの分離独立を主張するアプハジア自治共和国に黒海経由で4千人規模の部隊を投入し圧力を強めた。

アプハジアのバガプシュ大統領は10日、自治共和国の一部で11日から10日間の「戦時状態」を宣言、グルジア側が支配するコドリ渓谷に約千人規模の部隊を派遣した。

インタファクスは10日、武器流入を防ぐ海上封鎖のためロシア黒海艦隊の艦艇がグルジア沖に到着したと報じたが、その後、ロシア海軍報道官は艦艇はロシア側に帰港したと語った。