’08/09/18の朝刊記事から
PAC3 初試射 米と軍事一体化懸念
<解説>防衛省が国内で既に配備を進めている航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の発射試験を初めて独自に行ったのは「弾道ミサイルの脅威に主体的に対応できることを示す重要な意義がある」(田母神俊雄航空幕僚長)というように、日本のミサイル防衛(MD)の”主体的運用”を内外にアピールする狙いがある。
だが日本のMDシステムは、弾道ミサイル発射の兆候をつかむには米国の偵察衛星や早期警戒衛星の情報に依存せざるを得ないのが実情で、日本側が強調する主体性とは裏腹に、日米の軍事的一体化を加速させる懸念がある。
政府は、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威や中国の軍事的台頭などを背景にMDのハード面の整備を推し進めてきた。
一方で①MDをめぐる日米の情報共有の在り方②米国に向かうミサイルを日本が迎撃するのかどうか-など、憲法解釈で禁じてきた集団的自衛権の行使に踏み出す懸念については「第三国の防衛に用いることはない」とするだけで、本格的な議論を棚上げにしてきた。
PAC3の全国配備や海上配備型迎撃ミサイル(SM3)のイージス艦搭載などで、2010年度には日本のMD体制はほぼ整う。
日米同盟強化を優先させれば、MDの運用がなし崩し的に拡大する懸念はぬぐえない。
憲法との整合性と、米国の言いなりにならない主体性をいかに担保するのか、政府の十分な説明と国民的な議論が求められている。