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高まる円高ドル安リスク

2007-07-28 22:55:24 | 評論
‘06/09/17の朝刊記事から


高まる円高ドル安リスク
購買力の格差 拡大進行


          国際基督教大学教授 八代尚宏   

日銀のゼロ金利政策は解除されたものの、まだ銀行預金の金利はすずめの涙ほどである。

そこで金融機関は、ドルをはじめ金利の高い外貨預金を勧めることが多い。
だが普通の預金と違い、為替変動のリスクがある。
満期の時に、円と比べたドルの価値が上がれば得になるが、逆に下がれば損をする。
こうした一般的な説明はどこでもしてもらえる。

問題はどちらのリスクが大きいかということだ。
経済学の教科書では為替レートの水準は、円とドルとの購買力の違いで説明される。
例えば世界共通の商品である「ビッグマック」の値段が、仮に日本で300円、米国で3ドルとすれば、1ドルの価値は100円になる。

これを数多くの商品やサービスについて比較すると、円と比べたドルの平均的な価値は傾向的に下がっている。
なぜなら日本は、過去10年近く物価が停滞ないし下落してきた半面、米国では2-3%の物価上昇が続いてきたからである。

米に流れ込む資金

他方で、現在の為替レートの水準は、上下の変動幅はあるものの、1993年ごろとほぼ同じである。
為替の長期安定は、一見すれば望ましいと考えられるが、その背景にある円とドルとの購買力の格差が持続的に拡大していることは、それに見合った円高のリスクも高まっていることを意味する。

それではなぜこれまでに円高にならなかったかといえば、それは日本がゼロ金利政策を維持してきた半面、米国の金利が持続的に引き上げられたためだ。
日本から米国に資金が流れ込み、それが高いドルの価値を支えてきたからである。

これを日米間で全体的に考えれば、日本が米国に安い商品を輸出してもうけたお金を、高金利の米国に預金してさらにもうけるという行動を、過去10数年以上も続けてきたことになる。
しかし、こうした日本から米国に向けて商品とお金が一方的に流れる取引を、いつまでも続けられるのだろうか。

あり得ぬ安全・有利

85年には、日欧と米国との貿易収支不均衡の拡大から、大幅なドル安円高が生じた。
現在の不均衡の大きさは、その時の比ではないが、世界の金融市場も発展しており、そうした調整の時期がいつ来るのかは誰にも分からない。

もっとも、海外旅行で使う費用の範囲内でドル預金をするなら、大きな問題はない。円に監禁さえしなければ為替リスクは生じないからである。

金融自由化の時代には「安全で有利な資産運用」というものはあり得ない。
高い利回りの金融商品には、必ずそれに見合った損失リスクがあることを承知で契約する必要がある。



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