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英国ロイヤルは「赤の達人」! 戦略的に「赤」をまとう理由とは?


編集者・渡部かおりの「英国ロイヤルズ―生き方というドレスコード」【vol.6】

BY 渡部かおり公開日:2024/01/02


英国ロイヤルズの着こなしには常に世界中から注目が集まる。古くからのしきたりやマナーなど、たくさんの決まりごとがある「ロイヤルスタイル」だが、そのなかで最大限に自分らしさをアピールして楽しむ姿に憧れを抱く。「英国ロイヤルズ」がファッションを通じて見せる、生き方や意志、今の気分、遊び心を読み解いてみたい。



AFLO


2023-24年冬、最旬のトレンドカラーに浮上した赤は、英国ロイヤルズにとっては定番色だ。華やかに見せたいとき、強さをまといたいとき、女性ならではの美しさを強調したいとき。彼女たちは意志を持って、半ば戦略的に赤を選び、公務に臨んでいる。その一方で、オフの日のさりげない赤の効かせ方もとびきり楽しい。もしや、英国ロイヤルズはトレンドカラー、赤の達人? そんな気持ちで選びぬいた12スタイルからヒントを見つけてほしい。



ダイアナ妃は「攻めの赤」




1986年、在英国日本大使館前にて。AFLO


個人的には、ダイアナの赤い着こなしの中で1番好き。とびきり華やかなフォルムは80年代特有のものだとしても、よく見てください、小脇に抱えたクラッチバッグやパンプスはもちろん、ストッキングまで赤で統一している!! ふくらはぎ下からつま先を透け感のある赤にするところに、ダイアナのファッション感度の高さが見て取れる。ここまで徹底して赤で統一しているから、襟と袖の白がより一層映えているのもポイント。




1990年、ウィンチェスターにてAFLO


ロイヤル・ハンプシャー連隊とのディナーに、英国王室御用達のテーラー「ギーヴス&ホークス」の赤いジャケットで登場。ドレスではなく、ミリタリーのユニフォームをそのまま取り入れたようなマニッシュなスタイルを選ぶ遊び心と攻めの姿勢が、ダイアナらしい。




1993年、ザ ドーチェスター ホテル前にて。AFLO


チャンピオン・チルドレン・オブ・ザ・イヤーの授賞式に出席したダイアナ。

英国ロイヤルとしてブリティッシュチェックを身にまとうときも、赤を選ぶことが多い。

ウエストをシェイプした赤のジャケットは品の良さと力強さの両方を演出できるアイテム。それ以外のアイテムを黒でまとめて、主役の赤をぐっと目立たせているのもさすが。




1986年、マークフィールド・コミュニティセンターのオープン式典にて。AFLO


このスタイルの「攻め」ポイントは、厳密に言うと赤ではなくてピンクの使い方。赤のシングルボタンジャケットを公務で着る場合、中に着るブラウスは白が定番のはずだが、ダイアナはピンク。しかもドット柄&ボウタイ。

個性がぶつかり合うアイテムをここまでさらりと着こなせてしまうセンスに脱帽だ。




キャサリン妃は「センシュアルな赤」




2016年、ブリティッシュコロンビア州 総督官邸にてAFLO


カナダ訪問中、歓迎会に現れたキャサリン。胸元のカッティングやウエストからの切り替えが美しい、「プリーン バイ ソーントン ブレガッジー」のドレスで勝負! ビジューブローチとイヤリングできらめきをプラスする装いもキャサリンらしさが出ている。ダイアナと違い、さすがにストッキングはベージュでおとなしめ。




2020年12月AFLO


コロナ禍で働く医療従事者らへ感謝を伝える“サンキューツアー” 中の1枚。

コートは「アレキサンダー・マックイーン」、スカートとマフラーは「エミリア ウィックステッド」、ロンドンブランド尽くしで、さすがの優等生っぷり。

無地の赤と黒だけならパワフルになりすぎるが、チェック柄を差し込むことで少し柔らかく優しく仕上げている。マフラーとスカートをセットアップにしているのも面白い。




2023年2月、プリンシパリティ・スタジアムにて。AFLO



アウター、そして柄モノで赤を取り入れることが多いから、この「キャサリン・ウォーカー」の千鳥格子柄の膝丈コートはお気に入りのアイテムだと推測される。

この日はラグビーの試合観戦だから、自然光の入るスタジアムで映える赤、そして、親しみやすい赤を狙ったはず。




2016年、エリザベス女王の90歳祝賀会にて。AFLO


これぞ、正しい赤の使い方! というのが伝わる写真。

周りはほぼ黒のダークトーンの装いの中、キャサリンは真っ赤でシンプルなコートを着用。しかも、ジャケットは「ザラ」ではないかと推測されている。

ちょっと意地悪な言い方をするなら「あざとい」が、何が悪いの? ということで、目立ち方も美しさもピカイチ。




エリザベス女王は「チャーミングな赤」





2015年12月、セント・メアリー・マグダラ教会にてAFLO


王室一家でのクリスマス礼拝では、この日のイベントに最適な赤のコートをチョイス。コートのボタンも赤、ちらりと見えるスカートも赤、そして、「フルトン」の傘まで赤! ちなみに、洋服と傘の色を合わせることはエリザベス女王の十八番とも呼べるスタイリングだ。




1998年、ハイドパークにて。AFLO


えんじ色に近い落ち着きのある赤のケープは、身頃にたっぷりとボリュームを持たせたフォルムが愛らしい。ちょこんと小さく出された手や足元の抜け感も、エリザベス女王のかわいらしさを引き立てている。




1992年、ロイヤル・ウィンザー・ホース・ショー会場にて。AFLO


少しカジュアルな場での公務や、ウィンザー城で過ごすオフの日のエリザベス女王の着こなしのファンなのだが、この日の赤のブラウス×スカーフも秀逸。さり気なく巻いた柄スカーフの色彩の方が少し濃くて、落ち着きがあるというのが品よく仕上がるポイント。イヤリングと時計、ベルトのバックルにゴールドを忍ばせているのもいい味に。




1999年、ロイヤル・ウィンザー・ホース・ショー会場にて。AFLO


この年のホース・ショーでは、差し色使いの赤を披露。“ほっかむりスカーフ”はエリザベス女王の得意分野だが、そのスカーフがまるで襟元を飾る大きな赤いリボンのように見えるし、キルティングコートの袖元からほんの少しだけ見えるニットの赤も絶妙! もちろん、赤いリップも。


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     渡部かおり/編集者・ライター

編集プロダクションFW(フォワード)主宰。さまざまなファッションメディアでディレクションと執筆を担当するほか、広告のビジュアル制作、企業のブランディングも手がける。自他ともに認めるロンドン好き。近著は『英国ロイヤルスタイル』。

https://www.instagram.com/fwpress/.

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