逝きし世の面影さんのサイトより
https://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/9ad3fa5c615875a16fd8cec16a4fec51
<転載開始>
1989年の消費税導入と日本独自の引きこもり、中国の天安門事件、ソ連軍のアフガニスタン撤兵から30年が経過した世界

『[寄稿]日本社会の深い悩み』
2019-06-09 23:13 山口二郎・法政大学法学科教授//ハンギョレ新聞社

新天皇の即位の前後、国民をあげての騒ぎが続いたが、日本社会の病理は深刻である。5月28日、川崎市で51歳の男性が死者2人を含む20人の死傷者を出す犯罪を実行し、自らも自殺した。その事件の衝撃が冷めないうちに、6月1日に練馬区で76歳の父親、農林水産省の事務次官まで務めたエリートだった人物が44歳の息子を刺殺した。前者の事件に衝撃を受けた父親は、息子が近所の学校の運動会がうるさいと怒っていたので、息子がよその子供を殺す前に殺したと供述していると伝えられている。前者の事件の犯人、後者の事件の被害者はいずれもいわゆるニート(就学、就労、職業訓練のいずれも受けていない状態)であった。

連続して起こった2つの事件は、凶暴な人物による突発的な犯罪と片づけるわけにはいかない。日本社会の統合の危機の兆候として、深刻に受け止めなければならない。
 今回の事件の犯人・被害者は1970年前後に生まれた。彼らが大学を卒業して社会に出たのは1990年代と思われる。この時代は、バブル経済が崩壊し、日本経済は長期的な停滞に陥った。とりわけ90年代後半は、アジア通貨危機や日本の金融危機の影響もあって、就職氷河期と言われた。さらに、この時代は雇用の規制緩和が始まり、伝統的な終身雇用の崩壊が始まった。それゆえ、低賃金、不安定な仕事に就くことを余儀なくされた人々が増加した。

雇用の劣化と社会の衰弱は、合成の誤謬の典型例である。
個々の企業は、生き残りを図り賃金コストを削減するために非正規雇用を増やした。しかし、安定した仕事に就けなかった若者は人生設計を立てることができず、家族を持つこともできなかった。この世代は戦後初めに生まれたベビーブーマー世代の子供の第2次ベビーブームの世代である。しかし、彼ら・彼女らが結婚・出産適齢期を迎えたはずの90年代には第3次ベビーブームは起こらなかった。そのために、日本の人口減少は加速された。個々の企業の非正規雇用拡大という合理的行動が社会全体で合わさると、社会の衰弱という大きな問題が起こったのである。

合成の誤謬を是正するのは政治の役割である。しかし、過去30年間、日本政治は社会の構造的問題と向き合ってこなかった。
企業が自己防衛のために賃金コストを削ることは当然という側面もある。しかし、雇用が不安定化することによって生じる社会的なひずみを放置することはできない。2009年に当時の民主党が政権を取った時、「居場所と出番のある社会」というスローガンを掲げて、社会統合の強化を目指した。しかし、この政権は短命に終わり、課題は残されたままである。

家族のモデルは、日本の保守政治家がとりわけ敏感に反応するテーマである。正社員が減少する中、男性のみが働いて妻子を養うという「日本型」家族モデルは崩壊した。しかし、男も女も働くという現実を支える社会的基盤、保育、教育、医療、介護などの制度は整備されないままである。保守的政治家の中には、性別分業モデルという神話を維持し、女性を男性に依存する立場にとどめておきたいと願う者が少なくない。
私の友人の精神科医に訊いても、社会とのつながりが切れた人間が孤立感のあまり犯罪に走ることを直接防ぐ対策はない。教育、雇用などの政策を組み合わせ、人が社会に存在することの意味を実感できるような環境を整備することが、政治にできることである。
川崎の事件の直後、有名なタレント(★注、松本人志)がテレビで犯人について人間の「不良品」と表現し、人殺しをするなら不良品同士でやり合ってほしいと述べた。この種の優生思想は社会の分断を深刻化させるだけである。日本社会の統合が持続できるかどうか、危機的局面にある。共存、共生の日本社会を維持するための政策を論じることが急務である。
6月9日 山口二郎・法政大学法学科教授(ハンギョレ新聞)


『反緊縮』を旗印にした山本太郎の『れいわ新撰組』は野党第一党の立憲民主党を凌ぐ9%の支持率を集めている

『かくすれば かくなるものと しりながら・・・』やむにやまれぬ やまとだましい 

因果応報 (^_^;)  

30年前(1989年)の青少年の『ヒキコモリ』(ニートのパラサイト現象?それとも親子の癒着構造)が、それから30年後(2019年)の中高年の『引きこもり』(8050問題)が起きたという、原因と結果がピッタリ一致するという非常に分かり易い例。
日本語の過労死がそのまま世界でも『KAROUSI』として国際語化したように、日本語の『ヒキコモリ』がそのまま世界でも『HIKIKOMORI』として通用していた。

『消費税導入(デフレスパイラス)と密接に関連しているヒキコモリ』

今の日本で大問題となっている『8050問題』ですが、日本に消費税(緊縮財政)が導入された30年前(自民党竹下内閣)の1989年ごろに始まっていた問題である。当時は親世代が50歳前後の健康で働き盛り、日本経済も絶好調なので収入も多く余裕があったので、十代から二十歳代前後の子供が一人や二人ぐらいはパラサイトしても何ともなかった。あれから30年が経ち体力も健康状態も衰え、収入も日本経済がデフレスパイラルの真っ逆さま。縮小の一途を辿っている。
★注、
にっちもさっちもいかなくなった今の日本だが、それは30年前の最初の時点から正しく予想された『当然な結果』だった。何の不思議もない。



『天安門事件30年 中国政府「当時の行動は完全に正しかった」 』2019年6月4日 NHK

中国の北京で民主化を求める学生らの運動が武力で鎮圧され、大勢の死傷者が出た天安門事件から4日で30年。中国政府は「巨大な発展の成果が当時の行動が完全に正しかったことを示している」として、当時の対応は正しかったと改めて主張しました。
天安門事件は1989年6月4日、民主化を求めて北京の天安門広場やその周辺に集まっていた学生や市民に対し、軍が発砲するなどして鎮圧し、大勢の死傷者が出たものです。
中国政府は319人が死亡したとしていますが、犠牲者の数ははるかに多いという指摘もあり、遺族は事件の真相究明や責任の追及を求め続けています。
天安門事件に対する見解について、中国外務省の耿爽報道官は4日の記者会見で「巨大な発展の成果が当時、中国政府が取った行動が完全に正しかったことを示している。政治を安定させ、経済発展や社会の進歩を継続させることができた」と述べて、当時の対応は正しかったと改めて主張しました。
そのうえで「中国共産党と中国政府は、誰よりも国民の幸せや健康を気にかけている。われわれは中国の特色ある社会主義の道を確固不動の方針として前進していく」と述べて、共産党の一党支配の体制の正当性を強調しました。
天安門事件から30年を迎える中、中国ではインターネットの規制や言論統制が強化され、民主化を求める声や政府への批判も徹底して抑え込まれていて、習近平指導部の下で共産党の一党支配の体制を強化していく姿勢が改めて鮮明となっています。