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米、シリア攻撃:アサド政権「不当な侵略」 対IS影響も

 

 【カイロ篠田航一】米トランプ政権はシリア時間の7日未明、アサド政権が重要な軍事拠点と位置付けるシリア西部シャイラット空軍基地の攻撃に踏み切った。これに対し、化学兵器使用を否定し続けるアサド政権は国営シリア・アラブ通信を通じて「米国は実際に何が起きたか真実を知りもせず、不当な侵略を始めた」と米国を非難した。シリア内戦下で勢力を伸長した過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅についてはアサド政権も米国も思惑が一致しているため、今回の攻撃は対IS戦略に大きな影を落とし、内戦の一層の長期化も懸念される。

 

 アサド政権関係者によると、同基地はロシア製のスホイ、ミグ戦闘機などを配備する空軍の重要拠点。政権側のバラジ・ホムス県知事は毎日新聞の取材に「甚大な被害が出ている。燃料倉庫も破壊された」と話した。

 シリアの毎日新聞通信員によると、首都ダマスカスは目立った混乱はなく平穏な状況だが、アサド政権下で暮らす市民の中には、今回の攻撃に反発する声も多いという。会社員の男性(28)は「米国の悪意にはもう慣れている。だが今喜んでいるのはISだ」と話した。

 実際、米露にもアサド政権にとっても「共通の敵」となるISの攻略は進んでいた。特にISが「首都」と位置付ける北部ラッカ周辺では、3月下旬に米軍の支援を受けるクルド人主体の武装勢力がIS支配下にあった空軍基地を奪還するなど、各勢力の作戦が成果を上げつつある。そのさなかに起きたのが今回の「化学兵器使用」問題だ。米軍がアサド政権の基地攻撃を1回のみの限定作戦にとどめたのは、各勢力のIS掃討作戦を中断させたくない思惑もあるとみられる。

 だが、米露の対立が深まるのに伴って、対IS作戦に足並みの乱れが出れば、劣勢のISが息を吹き返す恐れもある。

 アサド政権は一貫して化学兵器使用を否定している。内戦ではアサド政権が昨年末に北部の要衝アレッポを制圧するなど国内主要都市をほぼ掌握し、既に軍事的に優位な状況にあることから「各地で勝利を手中に収めている時に、あえて化学兵器を使う理由がない」(シリアのムアレム外相)との論理を展開している。

 化学兵器使用の決定的な証拠がそろわない中で実施された米軍の攻撃について、反体制派からは歓迎の声が聞かれた。アレッポで活動する反体制派団体の男性幹部は毎日新聞の取材に「政権側の軍事拠点に損害を与えたことを歓迎するが、1回のみの攻撃では十分ではない。アサドを延命させれば、市民の虐殺は繰り返される」と語り、米軍の一層の軍事的関与を求めた。

   ◇

 一方、ロシア国営テレビは7日、米軍の攻撃を受けたシャイラット空軍基地の映像を報じた。黒焦げになった施設もあるが、コンクリートの地面にできた穴は深さ1メートルにも満たない小さなものだった。国営ロシア通信によると、空軍基地では八つの格納庫などが破壊されたが、戦闘機5機や複数の格納庫は無傷で、滑走路も使える状態という。シリアにはロシア軍が駐留しているため、取材のためロシアの記者が露軍の許可を得て常駐している。【モスクワ杉尾直哉】

 
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